203 / 246
思い出が重なる
五
しおりを挟む
「ガムも噛み続ければ味が薄くなるだろ、つまりそういうこった。……さ、カツギ、話したいことがあるんだろ、いいぜ」
ヒロタは私から手を離すとひらりと手を泳がせて元の位置に戻ってしまう。それから照明を強くして、女の子のぬいぐるみの中の悪霊を消そうとし始める。
私は、どうにも煮えきらなかった。ふとカツギを見ると、彼女もどこか呆然としたように照明の光に消えてしまいそうなぬいぐるみを見つめていた。
呻き声が聞こえる。恨み言、羨んだ言葉も聞こえる。命が欲しかった……彼女はそう言った。私はムージを手に取り、ふと思い出した。
そうだ、まだ終わりじゃない。カツギに視線を向けた。
「私が思い出させてあげる」
「えっ……?」
「あなた、ヒロタにああ言われて、このぬいぐるみを見て、まだなにかを感じているんでしょう? 心の奥底はきっと消えない、根を張ってるんだ! だから、私が聞いたことをあなたに話してあげる!」
ヒロタは私から手を離すとひらりと手を泳がせて元の位置に戻ってしまう。それから照明を強くして、女の子のぬいぐるみの中の悪霊を消そうとし始める。
私は、どうにも煮えきらなかった。ふとカツギを見ると、彼女もどこか呆然としたように照明の光に消えてしまいそうなぬいぐるみを見つめていた。
呻き声が聞こえる。恨み言、羨んだ言葉も聞こえる。命が欲しかった……彼女はそう言った。私はムージを手に取り、ふと思い出した。
そうだ、まだ終わりじゃない。カツギに視線を向けた。
「私が思い出させてあげる」
「えっ……?」
「あなた、ヒロタにああ言われて、このぬいぐるみを見て、まだなにかを感じているんでしょう? 心の奥底はきっと消えない、根を張ってるんだ! だから、私が聞いたことをあなたに話してあげる!」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
[全15話完結済]ゾクッ彼女の怪談は不思議な野花を咲かせる
野花マリオ
ホラー
※この作品は彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせるシリーズの続編にあたります。この作品は前作を読まなくても繋がりはほぼ薄いのでこちらから先に読んでいただいても大丈夫です。
あらすじ
架空上の石山県野花市の住人小石麻紀はその地に伝聞する怪談を語ると彼女が現れると聞いて実際に友人達の前に披露する。その時に彼女が現れる名はーー。
※この作品はフィクションです。実在する人物、団体、企業、名称などは一切関係ありません。
ゾクッ全15怪談。毎日午前6時1話更新です。
透影の紅 ~悪魔が愛した少女と疑惑のアルカナ~
ぽんぽこ@書籍発売中!!
ホラー
【8秒で分かるあらすじ】
鋏を持った女に影を奪われ、八日後に死ぬ運命となった少年少女たちが、解呪のキーとなる本を探す物語。✂ (º∀º) 📓
【あらすじ】
日本有数の占い師集団、カレイドスコープの代表が殺された。
容疑者は代表の妻である日々子という女。
彼女は一冊の黒い本を持ち、次なる標的を狙う。
市立河口高校に通う高校一年生、白鳥悠真(しらとりゆうま)。
彼には、とある悩みがあった。
――女心が分からない。
それが原因なのか、彼女である星奈(せいな)が最近、冷たいのだ。
苦労して付き合ったばかり。別れたくない悠真は幼馴染である紅莉(あかり)に週末、相談に乗ってもらうことにした。
しかしその日の帰り道。
悠真は恐ろしい見た目をした女に「本を寄越せ」と迫られ、ショックで気絶してしまう。
その後意識を取り戻すが、彼の隣りには何故か紅莉の姿があった。
鏡の中の彼から影が消えており、焦る悠真。
何か事情を知っている様子の紅莉は「このままだと八日後に死ぬ」と悠真に告げる。
助かるためには、タイムリミットまでに【悪魔の愛読書】と呼ばれる六冊の本を全て集めるか、元凶の女を見つけ出すしかない。
仕方なく紅莉と共に本を探すことにした悠真だったが――?
【透影】とかげ、すきかげ。物の隙間や薄い物を通して見える姿や形。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
表紙イラスト/イトノコ(@misokooekaki)様より
夜嵐
村井 彰
ホラー
修学旅行で訪れた沖縄の夜。しかし今晩は生憎の嵐だった。
吹き荒れる風に閉じ込められ、この様子では明日も到底思い出作りどころではないだろう。そんな淀んだ空気の中、不意に友人の一人が声をあげる。
「怪談話をしないか?」
唐突とも言える提案だったが、非日常の雰囲気に、あるいは退屈に後押しされて、友人達は誘われるように集まった。
そうして語られる、それぞれの奇妙な物語。それらが最後に呼び寄せるものは……
・・その狂気は伝染する・・
華岡光
ホラー
蔵の中から発見されたある古い桐の箱、しかし、その箱は江戸時代の頃のある怨念が閉じ込められた曰く付きの決して開けてはいけない秘密の箱だった・・
過去から現代へと続く呪いの自縛が今解き放たれようとしてる。
迷い家と麗しき怪画〜雨宮健の心霊事件簿〜②
蒼琉璃
ホラー
――――今度の依頼人は幽霊?
行方不明になった高校教師の有村克明を追って、健と梨子の前に現れたのは美しい女性が描かれた絵画だった。そして15年前に島で起こった残酷な未解決事件。点と線を結ぶ時、新たな恐怖の幕開けとなる。
健と梨子、そして強力な守護霊の楓ばぁちゃんと共に心霊事件に挑む!
※雨宮健の心霊事件簿第二弾!
※毎回、2000〜3000前後の文字数で更新します。
※残酷なシーンが入る場合があります。
※Illustration Suico様(@SuiCo_0)
一縷の望み
雨宮汐
ホラー
人間失格を読み、物書きを志した彼は肺がんを患い、余命幾ばくもない。
たくさんの小説を書き、ファンにも恵まれ、心残りなどないと思っていた。
意識不明に陥り、彼が見たあの世には彼の心残りになった人物がいた。
忘れもしない、最愛の――。
AI彼氏
柚木崎 史乃
ホラー
日々の疲れに癒しを求めていた七海は、ある時友人である美季から『AI彼氏』というアプリを勧められる。
美季が言うには、今流行りのAIとの疑似恋愛が体験できる女性向けのマッチングアプリらしい。
AI彼氏とは、チャットだけではなくいつでも好きな時に通話ができる。人工知能の優秀さは一線を画しており、そのうえ声まで生身の人間と変わらないため会話もごく自然だった。
七海はそのアプリでレンという名前のAI彼氏を作る。そして、次第に架空の恋人に夢中になっていった。
しかし、アプリにのめり込みすぎて生活に支障をきたしそうになったため、七海はやがてレンと距離を置くようになった。
そんなある日、ラインに『R』という人物が勝手に友達に追加されていた。その謎の人物の正体は、実は意思を持って動き出したAI彼氏・レンで──。
ヶケッ
ほづみエイサク
ホラー
ある森の深い場所に、老人介護施設がある
そこに勤める主人公は、夜間の見回り中に、猟奇的な化け物に出会ってしまった
次の日、目が覚めると、いなくなったはずの猫と寝ていて――
徐々に認識が壊れていく、サイコホラー
※カクヨムでも同時連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる