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思い出が重なる
四
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思わず掴みかかって、カツギが驚いた拍子にムージが落ちた。黒焦げの彼と目が合う。今、もうここにはいない彼が聞いたらどう思うのだろう。
「仕方ないだろ」
ふと肩に手を置かれ、振り返った。ヒロタが寂しそうに眉をひそめていた。
「余計なもんを見ちまったみたいだな。俺様たちが死んだのはもう随分昔だ。ぬいぐるみたちと違って俺様たちには、生まれ変わり、という術があるから思い出は永遠ではない。忘れないようにあんな部屋も作ったが、もうだめだ。忘れて、思い出させて、忘れて、思い出させても限度があるんだよ。いつか色褪せて、完全に忘れてしまう」
「そんな……」
ヒロタは、覚えているようだった。きっと彼はおもちゃたちを遊んだ後に、もしかしたら暇さえあれば、あの部屋に足を運んでいたのかもしれない。
対してカツギは覚えていない。彼女に視線を向けると不思議そうに私たちを見つめていた。それよりも伝えたいことをさっさと話したがっているようだったが、ヒロタが話し始めたから遠慮しているらしかった。
「仕方ないだろ」
ふと肩に手を置かれ、振り返った。ヒロタが寂しそうに眉をひそめていた。
「余計なもんを見ちまったみたいだな。俺様たちが死んだのはもう随分昔だ。ぬいぐるみたちと違って俺様たちには、生まれ変わり、という術があるから思い出は永遠ではない。忘れないようにあんな部屋も作ったが、もうだめだ。忘れて、思い出させて、忘れて、思い出させても限度があるんだよ。いつか色褪せて、完全に忘れてしまう」
「そんな……」
ヒロタは、覚えているようだった。きっと彼はおもちゃたちを遊んだ後に、もしかしたら暇さえあれば、あの部屋に足を運んでいたのかもしれない。
対してカツギは覚えていない。彼女に視線を向けると不思議そうに私たちを見つめていた。それよりも伝えたいことをさっさと話したがっているようだったが、ヒロタが話し始めたから遠慮しているらしかった。
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