魂選塔

中釡 あゆむ

文字の大きさ
上 下
180 / 246
怖い人だけど

しおりを挟む
メロルの走っていく背中を追いかけることも出来ずに眺めていた。見捨てるなんてできない、と彼女は言った。それはきっとあの少年に対してもなのだ。


あたしは、ユウカを見捨てた。


「リスリ、あなたって人は本当に自分のことばっかりね。だからこそ臆病で、哀れ。でも大丈夫よ、神様が助けてくれる。だから信じるのよ」


ユウカが死ぬ直前に言っていた言葉を思い出した。あたしは扉を閉め、もたれて座り込む。


あの日、私を信じなさい、とユウカは言った。その直後にあたしが如何にダメな人間か聞かせてきた。


「いいこと、リスリ。あなたは通常の人間より出来損ないに出来てしまったの。集団に馴染めなくて、孤独を怖がって、何もないから露出で自己主張をして、神に与えられた美しい髪も染めてしまった、出来損ない。それを両親はずっと見てきて、あなたを育ててきたの。さぞ大変だったでしょう、出来損ないの子を神にさずけられたんだから。でも大丈夫、これからは私が神になる」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

餅太郎の恐怖箱

坂本餅太郎
ホラー
坂本餅太郎が贈る、掌編ホラーの珠玉の詰め合わせ――。 不意に開かれた扉の向こうには、日常が反転する恐怖の世界が待っています。 見知らぬ町に迷い込んだ男が遭遇する不可解な住人たち。 古びた鏡に映る自分ではない“何か”。 誰もいないはずの家から聞こえる足音の正体……。 「餅太郎の恐怖箱」には、短いながらも心に深く爪痕を残す物語が詰め込まれています。 あなたの隣にも潜むかもしれない“日常の中の異界”を、ぜひその目で確かめてください。 一度開いたら、二度と元には戻れない――これは、あなたに向けた恐怖の招待状です。 --- 読み切りホラー掌編集です。 毎晩20:20更新!(予定)

スクリーム・ノート

藤沢凪
ホラー
少し変態の主人公猫宮イチカ。 保守的で自分の立ち位置の為なら平気で人を陥れる犬養琴子。 蛇喰商店街の主、小鳥優子。 中二病になりきれない兎咲美穂。 催眠術師の十六文字羊子。 女神と呼ばれている猫宮の憧れる三上恵理奈。 天使と呼ばれている犬養と兎咲が想いを寄せる天羽祐羽。 個性的な面々がすれ違いながら青春を台無しにしていく学園ホラー。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

君は唯一無二の愛しい子

蒼キるり
ホラー
真由の恋人の慎司が行方不明になった。誰もそれを真剣に考えてはくれないが、真由だけはおかしいと探し続ける。そして慎司が行方不明になる前、男女の双子について話していたことを思い出し──

背の高い女

ツヨシ
ホラー
怖い女に目をつけられた

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/2/23:『すれちがうひと』の章を追加。2025/3/2の朝8時頃より公開開始予定。 2025/2/22:『あめのふるひ』の章を追加。2025/3/1の朝8時頃より公開開始予定。 2025/2/21:『ばいと』の章を追加。2025/2/28の朝4時頃より公開開始予定。 2025/2/20:『ふみんしょう』の章を追加。2025/2/27の朝4時頃より公開開始予定。 2025/2/19:『ぎんこう』の章を追加。2025/2/26の朝4時頃より公開開始予定。 2025/2/18:『のびてくるて』の章を追加。2025/2/25の朝4時頃より公開開始予定。 2025/2/17:『きみょうななきごえ』の章を追加。2025/2/24の朝4時頃より公開開始予定。 2025/2/16:『め』の章を追加。2025/2/23の朝4時頃より公開開始予定。

ホラー短編集

緒方宗谷
ホラー
気付かない内に足を踏み入れてしまった怨霊の世界。

視える私と視えない君と

赤羽こうじ
ホラー
前作の海の家の事件から数週間後、叶は自室で引越しの準備を進めていた。 「そろそろ連絡ぐらいしないとな」 そう思い、仕事の依頼を受けていた陸奥方志保に連絡を入れる。 「少しは落ち着いたんで」 そう言って叶は斗弥陀《とみだ》グループが買ったいわく付きの廃病院の調査を引き受ける事となった。 しかし「俺達も同行させてもらうから」そう言って叶の調査に斗弥陀の御曹司達も加わり、廃病院の調査は肝試しのような様相を呈してくる。 廃病院の怪異を軽く考える御曹司達に頭を抱える叶だったが、廃病院の怪異は容赦なくその牙を剥く。 一方、恋人である叶から連絡が途絶えた幸太はいても立ってもいられなくなり廃病院のある京都へと向かった。 そこで幸太は陸奥方志穂と出会い、共に叶の捜索に向かう事となる。 やがて叶や幸太達は斗弥陀家で渦巻く不可解な事件へと巻き込まれていく。 前作、『夏の日の出会いと別れ』より今回は美しき霊能者、鬼龍叶を主人公に迎えた作品です。 もちろん前作未読でもお楽しみ頂けます。 ※この作品は他にエブリスタ、小説家になろう、でも公開しています。

処理中です...