178 / 246
三人の真実
七
しおりを挟む
彼女にとって少年のぬいぐるみ、ムージだけが救いだったのだ。「この子といると、ヒロタと繋がれてる気がする」と書いていたページがあったが最後以降にはヒロタとの繋がりではなく、ムージを心から大切にしているようだった。
きっと、ヒロタと話せなくなって、辛い期間が続いてしまって、それでも安らかに微笑むムージだけが心の拠り所になっていたのだ。
再び交換日記を開いた。苦しいけどここに真実が載っているなら止めるわけにはいかなかった。
「俺はもう耐えられないよ。全部父さんにぬいぐるみを燃やされた。昔からずっと大切にしてきたのに。父さんだって昔は、母さんと思って甘えなさい、とぬいぐるみを渡してくれたのに。どうして俺は男なんかに産まれたんだろう。母さんがいたら、女々しい男にならずに育ったのかな。それとも、俺が成長しないままだったら、幼い子どものままだったら気味が悪いなんて言われなかったのか。もう分からない。燃やされたものは帰ってこない。こんな窮屈な世界で生きるくらいなら、死のうと思う。でもタダでは死んでやらないんだ。このノートを、そうだな、カツギの家のポストに入れる。だから警察にでも、あいつにでも見せてくれ。今までありがとう。ヒロタより」
きっと、ヒロタと話せなくなって、辛い期間が続いてしまって、それでも安らかに微笑むムージだけが心の拠り所になっていたのだ。
再び交換日記を開いた。苦しいけどここに真実が載っているなら止めるわけにはいかなかった。
「俺はもう耐えられないよ。全部父さんにぬいぐるみを燃やされた。昔からずっと大切にしてきたのに。父さんだって昔は、母さんと思って甘えなさい、とぬいぐるみを渡してくれたのに。どうして俺は男なんかに産まれたんだろう。母さんがいたら、女々しい男にならずに育ったのかな。それとも、俺が成長しないままだったら、幼い子どものままだったら気味が悪いなんて言われなかったのか。もう分からない。燃やされたものは帰ってこない。こんな窮屈な世界で生きるくらいなら、死のうと思う。でもタダでは死んでやらないんだ。このノートを、そうだな、カツギの家のポストに入れる。だから警察にでも、あいつにでも見せてくれ。今までありがとう。ヒロタより」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
怪奇蒐集帳(短編集)
naomikoryo
ホラー
【★◆毎朝6時30分更新◆★】この世には、知ってはいけない話がある。
怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——
どれもがただの作り話かもしれない。
だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。
本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。
最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。
都市伝説ガ ウマレマシタ
鞠目
ホラー
「ねえ、パトロール男って知ってる?」
夜の8時以降、スマホを見ながら歩いていると後ろから「歩きスマホは危ないよ」と声をかけられる。でも、不思議なことに振り向いても誰もいない。
声を無視してスマホを見ていると赤信号の横断歩道で後ろから誰かに突き飛ばされるという都市伝説、『パトロール男』。
どこにでもあるような都市伝説かと思われたが、その話を聞いた人の周りでは不可解な事件が後を絶たない……
これは新たな都市伝説が生まれる過程のお話。
[全221話完結済]彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる
野花マリオ
ホラー
ーー彼女が語る怪異談を聴いた者は咲かせたり聴かせる
登場する怪異談集
初ノ花怪異談
野花怪異談
野薔薇怪異談
鐘技怪異談
その他
架空上の石山県野花市に住む彼女は怪異談を語る事が趣味である。そんな彼女の語る怪異談は咲かせる。そしてもう1人の鐘技市に住む彼女の怪異談も聴かせる。
完結いたしました。
※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。
エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。
表紙イラストは生成AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる