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三人の真実
七
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彼女にとって少年のぬいぐるみ、ムージだけが救いだったのだ。「この子といると、ヒロタと繋がれてる気がする」と書いていたページがあったが最後以降にはヒロタとの繋がりではなく、ムージを心から大切にしているようだった。
きっと、ヒロタと話せなくなって、辛い期間が続いてしまって、それでも安らかに微笑むムージだけが心の拠り所になっていたのだ。
再び交換日記を開いた。苦しいけどここに真実が載っているなら止めるわけにはいかなかった。
「俺はもう耐えられないよ。全部父さんにぬいぐるみを燃やされた。昔からずっと大切にしてきたのに。父さんだって昔は、母さんと思って甘えなさい、とぬいぐるみを渡してくれたのに。どうして俺は男なんかに産まれたんだろう。母さんがいたら、女々しい男にならずに育ったのかな。それとも、俺が成長しないままだったら、幼い子どものままだったら気味が悪いなんて言われなかったのか。もう分からない。燃やされたものは帰ってこない。こんな窮屈な世界で生きるくらいなら、死のうと思う。でもタダでは死んでやらないんだ。このノートを、そうだな、カツギの家のポストに入れる。だから警察にでも、あいつにでも見せてくれ。今までありがとう。ヒロタより」
きっと、ヒロタと話せなくなって、辛い期間が続いてしまって、それでも安らかに微笑むムージだけが心の拠り所になっていたのだ。
再び交換日記を開いた。苦しいけどここに真実が載っているなら止めるわけにはいかなかった。
「俺はもう耐えられないよ。全部父さんにぬいぐるみを燃やされた。昔からずっと大切にしてきたのに。父さんだって昔は、母さんと思って甘えなさい、とぬいぐるみを渡してくれたのに。どうして俺は男なんかに産まれたんだろう。母さんがいたら、女々しい男にならずに育ったのかな。それとも、俺が成長しないままだったら、幼い子どものままだったら気味が悪いなんて言われなかったのか。もう分からない。燃やされたものは帰ってこない。こんな窮屈な世界で生きるくらいなら、死のうと思う。でもタダでは死んでやらないんだ。このノートを、そうだな、カツギの家のポストに入れる。だから警察にでも、あいつにでも見せてくれ。今までありがとう。ヒロタより」
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