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三人の真実
六
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ムージ、というのは少年のぬいぐるみのことだろうで推測した。彼らの交換日記の中で他に出てくる名前のついた登場人物はムージだけで、時折ムージの腕がちぎれかけてたから縫った、と書いていた。
カツギの家は想像もしたことがない悲惨な家庭だった。両親は仕事をしておらず、祖母祖父の残した遺産で生活をしているようだった。
それでも彼女は勉学に励み、見事学年順位一位になっているが両親には価値のないものらしい。
マラソンをする口実に、実際ちゃんと走っていたそうだが、二人と共にいる時間を減らしたことも書いていた。そうしなければ、家にいて視界に入れば、思い出されれば、殴られ、命令され、彼らの余興として恥辱の目に遭ったそうだ。
「親だから何をしてもいいのだろうか。親だから子どもをおもちゃのように扱っていいのだろうか。ねえヒロタ、あたしはもうだめだよ。でも死んじゃだめだ、だめなんだ、だって、死んじゃったらムージが燃やされてしまう……」
読んでいて苦しくなってきていた。呼吸も、心臓もないのに、苦しいと感じ、目を逸らした。
カツギの家は想像もしたことがない悲惨な家庭だった。両親は仕事をしておらず、祖母祖父の残した遺産で生活をしているようだった。
それでも彼女は勉学に励み、見事学年順位一位になっているが両親には価値のないものらしい。
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「親だから何をしてもいいのだろうか。親だから子どもをおもちゃのように扱っていいのだろうか。ねえヒロタ、あたしはもうだめだよ。でも死んじゃだめだ、だめなんだ、だって、死んじゃったらムージが燃やされてしまう……」
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