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お値段ゲーム
三
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「……愛してるから、死んだのね。馬鹿ね、あんたは」
ムロルの声に、我に返った。私はいつの間にか伏せていた目を彼らに向け、ムロルを見つけた。どうしてか、心の奥から温かな感情が沸き起こる。
嬉しい、と思った。ムロルに呆れられたことがどうしようもなく、懐かしくて嬉しいと思った。
「やっぱりどうして自殺はだめなんだろう?」
ムロルが首をかしげたことで、どうしてだろう、と他のぬいぐるみも首をかしげた。
「彼女のしたことは悪いことなの?」
「愛することって幸せだよね、それで死んだんならいいことじゃないの?」
「おれも、もう今は死んであの世にいないけど、あいつがおれがいなくなることで楽になるならいなくなったかも」
うんうんとぬいぐるみたちが頷き始め、私はそろそろ終わりそうなこの雰囲気にひな壇から降りようと立ち上がる。ところが、女の子のぬいぐるみはやはり気に入らないらしく、でも、と声を荒らげた。
ムロルの声に、我に返った。私はいつの間にか伏せていた目を彼らに向け、ムロルを見つけた。どうしてか、心の奥から温かな感情が沸き起こる。
嬉しい、と思った。ムロルに呆れられたことがどうしようもなく、懐かしくて嬉しいと思った。
「やっぱりどうして自殺はだめなんだろう?」
ムロルが首をかしげたことで、どうしてだろう、と他のぬいぐるみも首をかしげた。
「彼女のしたことは悪いことなの?」
「愛することって幸せだよね、それで死んだんならいいことじゃないの?」
「おれも、もう今は死んであの世にいないけど、あいつがおれがいなくなることで楽になるならいなくなったかも」
うんうんとぬいぐるみたちが頷き始め、私はそろそろ終わりそうなこの雰囲気にひな壇から降りようと立ち上がる。ところが、女の子のぬいぐるみはやはり気に入らないらしく、でも、と声を荒らげた。
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