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おもちゃたちの魂
四
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「あの子は、黒くなってた。真っ黒に……悪霊退散って、ヒロタが言ってたけど、やっぱり、消滅なの?」
「消滅よ」
ようやく大きなぬいぐるみから抜け出せたムロルは汗もかいていないのに、やれやれ、と丸い腕で額を拭った。私は彼女と同じ視線になった。
「あの子は悪霊になったってこと?」
そうね、とムロルは簡単に頷いた。私は更に距離を詰めた。
「だとしたら……下の、他殺者たちも真っ黒なの。影そのもので、彼らも悪霊ってこと?」
「そうなるわね。そもそもチルギは試練には悪霊しか使わない。他殺者や事故死、自然死の人達はこの塔ではなくて別の塔に行くから」
私は彼女から離れ、聞いたことを整理してみる。死にたくなかった悪霊たち……ふと、ミルビーと、今の私の状況を思い出し、重ねてみた。
「消滅よ」
ようやく大きなぬいぐるみから抜け出せたムロルは汗もかいていないのに、やれやれ、と丸い腕で額を拭った。私は彼女と同じ視線になった。
「あの子は悪霊になったってこと?」
そうね、とムロルは簡単に頷いた。私は更に距離を詰めた。
「だとしたら……下の、他殺者たちも真っ黒なの。影そのもので、彼らも悪霊ってこと?」
「そうなるわね。そもそもチルギは試練には悪霊しか使わない。他殺者や事故死、自然死の人達はこの塔ではなくて別の塔に行くから」
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