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特別試練
八
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ところが、重なっていた声を突き抜けて、言葉が私に降り注いだ。いつの間にかつぶっていた目を開けると、人形たちの隙間から見える、ピンク色。
「まあ私たちには、自殺だの他殺だのされる命がないから分からないけどだからこそそれが、悪いこと、なのか判断出来ないじゃない」
ふん、と鼻を鳴らした。ぬいぐるみたちの声は止み、しかし不満げな声が飛んだ。
「でもチルギ様が悪いって」
「どうして悪いのかは教えられていないわ。それにあの、ヒロタだって自殺って聞くじゃない。けれどこの階を預けてる。ますます意味がわからない。……ほら、退いて、女が困ってるじゃない」
確かに、どこかのぬいぐるみが呟いたことでぞろぞろとぬいぐるみたちは私の上から、持ち場へ戻っていってしまう。上体を起こし、私は確か、ムロル、と呼ばれたくまのぬいぐるみに頭を下げた。
「ありがとう」
「別に。行くわよ」
まだぬいぐるみたちの視線を感じた私はムロルと共に部屋を後にした。
「まあ私たちには、自殺だの他殺だのされる命がないから分からないけどだからこそそれが、悪いこと、なのか判断出来ないじゃない」
ふん、と鼻を鳴らした。ぬいぐるみたちの声は止み、しかし不満げな声が飛んだ。
「でもチルギ様が悪いって」
「どうして悪いのかは教えられていないわ。それにあの、ヒロタだって自殺って聞くじゃない。けれどこの階を預けてる。ますます意味がわからない。……ほら、退いて、女が困ってるじゃない」
確かに、どこかのぬいぐるみが呟いたことでぞろぞろとぬいぐるみたちは私の上から、持ち場へ戻っていってしまう。上体を起こし、私は確か、ムロル、と呼ばれたくまのぬいぐるみに頭を下げた。
「ありがとう」
「別に。行くわよ」
まだぬいぐるみたちの視線を感じた私はムロルと共に部屋を後にした。
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