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特別試練
六
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声が下から聞こえてきて見ると、ピンクのくまのぬいぐるみが、よいしょ、と丸い腕をついて、もぞもぞと動いていた。立とうとしているらしいが丸い手のせいで立てないらしい。
「ちょっと、あんた。私を起こしなさいよ」
呆然と眺めていると丸い手で私を指してきた。言われるがまま、くまのぬいぐるみを抱き上げてみた。ふう、とため息をついたのを見て、胸に耳を近付けてみる。
ふわふわだ……。心臓の音なんかも聞こえない。
「なによ、珍しくないでしょ。私はぬいぐるみに宿った魂よ」
なるほど、耳を離して改めてビーズの目と視線を合わせた。
「あームロルだけずるいんだあ」
また声がして下を見ると、他のぬいぐるみや人形がもぞもぞと動き出していた。驚いて一歩後ずさるが、機関車のおもちゃにぶつかってしまう。機関車は私の足をぐるぐると走り始めた。
「ちょっと、あんた。私を起こしなさいよ」
呆然と眺めていると丸い手で私を指してきた。言われるがまま、くまのぬいぐるみを抱き上げてみた。ふう、とため息をついたのを見て、胸に耳を近付けてみる。
ふわふわだ……。心臓の音なんかも聞こえない。
「なによ、珍しくないでしょ。私はぬいぐるみに宿った魂よ」
なるほど、耳を離して改めてビーズの目と視線を合わせた。
「あームロルだけずるいんだあ」
また声がして下を見ると、他のぬいぐるみや人形がもぞもぞと動き出していた。驚いて一歩後ずさるが、機関車のおもちゃにぶつかってしまう。機関車は私の足をぐるぐると走り始めた。
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