魂選塔

中釡 あゆむ

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特別試練

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懐かしい、気がした。けれど帽子と違って見たくなかったような、手を伸ばそうとすると心の奥で、これはだめだ、と自制してしまう。結局手を引っ込め、眺めた。


目はビーズで、耳のあたりが黄ばんでシミがついてしまっている。口はなく、鼻も同じようにビーズが埋め込まれていた。


「口がないなんて、変だよね」


自分で言いながら、どこかでなぞった言葉に口を噤んだ。やっぱり私はこのぬいぐるみを知っている。これは、このぬいぐるみは、何だっけ。


「うるさい」


どこかから声が聞こえた。私は立ち上がって視線を走らせ、声の主を探ろうとする。


「ここだよ、ばーか」


振り向くが誰もいない。上を見ても、左を見ても……。


「やれやれ、わかんないのかね」
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