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包丁
十
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「その上で、こいつは鬼の邪気を吸い込んでしまったんだ。触れたんだろうな、鬼に。こいつの柔らかな魂はもう悪霊になってしまっていた。だから……おっと」
慌てて人形を置いたかと思いきや、青年は周りの照明をさっきと同じくらいに明るくした。私は咄嗟に壁に寄った。あの痛みが怖かった。
ふと、少年の呻き声が聞こえた。
「悪霊退散」
もうお前の役目は終わったんだ、と青年の言葉に私は嫌な予感がした。目をこじ開けるが、青年が更に照明を明るくしたことで少年の姿が見えなくなる。
おねーちゃん。
どこからか、聞こえてくる。おねーちゃん。もう一度、それは呻き声とは違った、悲しいほど穏やかな声だった。
慌てて人形を置いたかと思いきや、青年は周りの照明をさっきと同じくらいに明るくした。私は咄嗟に壁に寄った。あの痛みが怖かった。
ふと、少年の呻き声が聞こえた。
「悪霊退散」
もうお前の役目は終わったんだ、と青年の言葉に私は嫌な予感がした。目をこじ開けるが、青年が更に照明を明るくしたことで少年の姿が見えなくなる。
おねーちゃん。
どこからか、聞こえてくる。おねーちゃん。もう一度、それは呻き声とは違った、悲しいほど穏やかな声だった。
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