魂選塔

中釡 あゆむ

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包丁

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「お前のことは聞いている。だからこの階へ導くよう命じられた。そのために、この少年を使わせてもらった」


私から視線を逸らさないで少年を顎で指した。驚いて、彼と少年を交互に見る。


「こいつはな、元々人形だったんだ。それはそれは残酷な親の可哀想な娘の人形だった。娘はこいつだけが生き甲斐だった。学校に持って行き、親から家を追い出される日もあったが、こいつだけは手放さなかった。そして人形は娘からもらった愛で、娘と、両親を殺したんだよ。家を燃やしてな」


何が愉快なのか、口元を歪め、片手で目を覆って青年は笑った。その笑みもどこか冷酷で怖くなる。


「人形と娘は神が拾った。けれど娘は、もう人形を見ることが出来なくなっていた。魂となった人形と話し、真実を知った娘は怒りで俺様に預けたんだ。そうなればもう俺様のものだ、だからお前をおびき寄せるために使った」


青年は、人形に向けていた照明を緩め「これは人形の中にある魂を具現化にするものだ」と伝えてきた。意地悪に笑むと更に奥へ行き、カーテンを開ける。


そこには大量のぬいぐるみ、人形が棚にひな壇列に詰め込まれていた。青年はスキップして隅の人形を手に取ると私に見せてきた。黒いフードを被った人形だ。どこかで見たことがある。
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