141 / 246
包丁
七
しおりを挟む モンスターの亡骸の口から出て来たライさんを見て、声も出せずに固まってしまう。
だってそれもそうだろう、死んだと思っていた人がいきなり目の前に出て来て平静を装える人がいるわけない。
「ラ、ライさん……?」
「ん?あぁ……、レース君何故君がここにいるんだい?首都に行った筈じゃなかったかな」
「あ、えっと……」
「顔が真っ青だね、暫くゆっくり深呼吸して落ち着いた方がいい、落ち着くまで待ってるからね」
ライさんはそういうと中にある袋のような物を口から外すと綺麗に折りたたんでいく。
とりあえず言われたように深呼吸をして、少しずつ気持ちは落ち着いては来たけど……冷静になる程彼がどうしてあの超広範囲を灰にする攻撃の中で生き残れたのかが疑問に思ってしまう。
「さて、落ち着いたかい?」
「……はい」
「なら良かった、とりあえずレース君の事だからどうして俺が生きているのか気になっているのだろうから……先にそっちを答えるよ、さっき出て来た袋に付与された魔術と能力のおかげだよ」
手に持った袋をぼくに見せてそういうけれど、あれは多分【空間収納】の魔術が付与された魔導具だと思う。
ただ素材が布だから燃えたら意味が無いと思うし、それ以上に空間収納の中に人が入れる何て聞いた事が無い。
「……空間収納に人が入れるの?」
「勿論入れるさ、ただ本来であれば術者が中に入ったら最後……出てこれないという意味ではとても危険だね」
「そうなんだ……、なら魔導具が壊れてしまったら出てこれないんじゃ?」
「そこはトキに付与して貰った能力のおかげだね、ハスと組む事が多いから俺の着る服や道具には【不燃】という一定時間燃えないようになっているんだ」
「あぁ……ハスの戦い方はいつも周辺に炎をばらまくから、確かに必要かも」
たまたまそういう火属性や、その派生形に対して耐性がある装備をしていたから助かったという事だったみたいだ。
そのおかげで今こうして生きているのだから、本当に良かったと思う。
「ただこの能力は発動してから魔力が尽きるまでの間決して燃える事が無い変わりに、非常に燃費が悪くてね……使えても半刻が限度だよ」
「一時間も使えるなら充分な気がするけど?」
「君はまだ体験してないから分からないと思うけど、ハスの特性【陽炎】は周囲の温度を急上昇させ近づく事さえ困難な状況を作り出すからね、状況次第では半刻でも足りない位だよ」
「一緒に戦ってる時に使ってるの見なかったけど……そんなに危険なんだ」
本当にそんな能力があるなら、使われた時に耐える事が出来るだろうか……。
……ただアキラさんと一緒に行動していた際に使っていただろうし、もしかしたら何らかの方法があるのかもしれない。
例えば自身の属性を纏ってみるとかだろうか、雪の魔力で冷気を纏えば熱気に耐えられるかも、ハスと合流したら相談してみようかな。
「それにしても驚いたよ、俺がアンデッドの身体を詳しく調べていたら、ドラゴンのアンデッドが現れてね」
「周囲に人のアンデッドもいたから危なかったんじゃ?」
「人のアンデッドに関しては雷の魔術で、筋肉を収縮させて動けないようにしておいたから問題無かったけど、ドラゴンに関しては不意を突かれたから反応に遅れたよ」
「……よくその状態で生き残れたね?」
「俺もそう思うよ、あの時遠くから閃光が近づいて来るのに気づいて咄嗟にドラゴンの口に魔導具をひっかけて中に入らなかったら間違いなく死んでたよ、そういう意味ではこの個体に感謝しないとね」
そう言ってドラゴンの方を向くと深く頭を下げて動かなくなる。
「ライさん?」
「ん?あぁ、そういえばメセリーにはこの風習は無かったね、栄花では死者に向けて目を閉じてお辞儀をした後暫く心の中で感謝の気持ちを伝える風習があるんだよ、君の育った国だと死者は直ぐに火葬した後に魔術で圧縮して魔力の篭った宝石にするんだったよね」
「そうらしいけど、身近で亡くなった人を見たこと無いから……経験した事は無いかな」
メセリーでは亡くなった人を宝石にする事で、その人が生前使えた魔術を込められた魔力の量に応じて使えるようになるらしい。
過去に【魔王】ソフィア・メセリーに、歴代の魔王の遺体を宝石に加工して指輪にしたものを見せて貰った時は綺麗に見えたけど、何時かはぼくも誰かを宝石にする日が来るのだろうか。
育ての親であるカルディア母さんか、又は老いて死別することになったダートかカエデのどちらかかもしれないし、無いとは思うけどルードとの戦いで死んだらぼくがそうなるかもしれない。
「まぁ、いずれ経験する事になるよ」
「ライさんは経験した事あるの?」
「勿論あるさ、栄花騎士団の任務で殉職した仲の良かった団員の葬式とかね……ってつい話が長くなって変な所に行ってしまったね」
「いえ、結構来てて楽しかったから大丈夫だよ」
「そう言って貰えると嬉しいけど、今はそれよりもどうしてここがこうなって、首都に行った筈の君が俺を探しに来たんだい?」
……ライさんの質問に答えるように、彼に会う前に【滅尽】アナイス・アナイアレイトとの間に起きた事や、その後のぼく達の行動について話すのだった。
だってそれもそうだろう、死んだと思っていた人がいきなり目の前に出て来て平静を装える人がいるわけない。
「ラ、ライさん……?」
「ん?あぁ……、レース君何故君がここにいるんだい?首都に行った筈じゃなかったかな」
「あ、えっと……」
「顔が真っ青だね、暫くゆっくり深呼吸して落ち着いた方がいい、落ち着くまで待ってるからね」
ライさんはそういうと中にある袋のような物を口から外すと綺麗に折りたたんでいく。
とりあえず言われたように深呼吸をして、少しずつ気持ちは落ち着いては来たけど……冷静になる程彼がどうしてあの超広範囲を灰にする攻撃の中で生き残れたのかが疑問に思ってしまう。
「さて、落ち着いたかい?」
「……はい」
「なら良かった、とりあえずレース君の事だからどうして俺が生きているのか気になっているのだろうから……先にそっちを答えるよ、さっき出て来た袋に付与された魔術と能力のおかげだよ」
手に持った袋をぼくに見せてそういうけれど、あれは多分【空間収納】の魔術が付与された魔導具だと思う。
ただ素材が布だから燃えたら意味が無いと思うし、それ以上に空間収納の中に人が入れる何て聞いた事が無い。
「……空間収納に人が入れるの?」
「勿論入れるさ、ただ本来であれば術者が中に入ったら最後……出てこれないという意味ではとても危険だね」
「そうなんだ……、なら魔導具が壊れてしまったら出てこれないんじゃ?」
「そこはトキに付与して貰った能力のおかげだね、ハスと組む事が多いから俺の着る服や道具には【不燃】という一定時間燃えないようになっているんだ」
「あぁ……ハスの戦い方はいつも周辺に炎をばらまくから、確かに必要かも」
たまたまそういう火属性や、その派生形に対して耐性がある装備をしていたから助かったという事だったみたいだ。
そのおかげで今こうして生きているのだから、本当に良かったと思う。
「ただこの能力は発動してから魔力が尽きるまでの間決して燃える事が無い変わりに、非常に燃費が悪くてね……使えても半刻が限度だよ」
「一時間も使えるなら充分な気がするけど?」
「君はまだ体験してないから分からないと思うけど、ハスの特性【陽炎】は周囲の温度を急上昇させ近づく事さえ困難な状況を作り出すからね、状況次第では半刻でも足りない位だよ」
「一緒に戦ってる時に使ってるの見なかったけど……そんなに危険なんだ」
本当にそんな能力があるなら、使われた時に耐える事が出来るだろうか……。
……ただアキラさんと一緒に行動していた際に使っていただろうし、もしかしたら何らかの方法があるのかもしれない。
例えば自身の属性を纏ってみるとかだろうか、雪の魔力で冷気を纏えば熱気に耐えられるかも、ハスと合流したら相談してみようかな。
「それにしても驚いたよ、俺がアンデッドの身体を詳しく調べていたら、ドラゴンのアンデッドが現れてね」
「周囲に人のアンデッドもいたから危なかったんじゃ?」
「人のアンデッドに関しては雷の魔術で、筋肉を収縮させて動けないようにしておいたから問題無かったけど、ドラゴンに関しては不意を突かれたから反応に遅れたよ」
「……よくその状態で生き残れたね?」
「俺もそう思うよ、あの時遠くから閃光が近づいて来るのに気づいて咄嗟にドラゴンの口に魔導具をひっかけて中に入らなかったら間違いなく死んでたよ、そういう意味ではこの個体に感謝しないとね」
そう言ってドラゴンの方を向くと深く頭を下げて動かなくなる。
「ライさん?」
「ん?あぁ、そういえばメセリーにはこの風習は無かったね、栄花では死者に向けて目を閉じてお辞儀をした後暫く心の中で感謝の気持ちを伝える風習があるんだよ、君の育った国だと死者は直ぐに火葬した後に魔術で圧縮して魔力の篭った宝石にするんだったよね」
「そうらしいけど、身近で亡くなった人を見たこと無いから……経験した事は無いかな」
メセリーでは亡くなった人を宝石にする事で、その人が生前使えた魔術を込められた魔力の量に応じて使えるようになるらしい。
過去に【魔王】ソフィア・メセリーに、歴代の魔王の遺体を宝石に加工して指輪にしたものを見せて貰った時は綺麗に見えたけど、何時かはぼくも誰かを宝石にする日が来るのだろうか。
育ての親であるカルディア母さんか、又は老いて死別することになったダートかカエデのどちらかかもしれないし、無いとは思うけどルードとの戦いで死んだらぼくがそうなるかもしれない。
「まぁ、いずれ経験する事になるよ」
「ライさんは経験した事あるの?」
「勿論あるさ、栄花騎士団の任務で殉職した仲の良かった団員の葬式とかね……ってつい話が長くなって変な所に行ってしまったね」
「いえ、結構来てて楽しかったから大丈夫だよ」
「そう言って貰えると嬉しいけど、今はそれよりもどうしてここがこうなって、首都に行った筈の君が俺を探しに来たんだい?」
……ライさんの質問に答えるように、彼に会う前に【滅尽】アナイス・アナイアレイトとの間に起きた事や、その後のぼく達の行動について話すのだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……

【完結】愛とは呼ばせない
野村にれ
恋愛
リール王太子殿下とサリー・ペルガメント侯爵令嬢は六歳の時からの婚約者である。
二人はお互いを励まし、未来に向かっていた。
しかし、王太子殿下は最近ある子爵令嬢に御執心で、サリーを蔑ろにしていた。
サリーは幾度となく、王太子殿下に問うも、答えは得られなかった。
二人は身分差はあるものの、子爵令嬢は男装をしても似合いそうな顔立ちで、長身で美しく、
まるで対の様だと言われるようになっていた。二人を見つめるファンもいるほどである。
サリーは婚約解消なのだろうと受け止め、承知するつもりであった。
しかし、そうはならなかった。
父の周りの人々が怪異に遭い過ぎてる件
帆足 じれ
ホラー
私に霊感はない。父にもない(と言いつつ、不思議な体験がないわけではない)。
だが、父の周りには怪異に遭遇した人々がそこそこいる。
父や当人、関係者達から聞いた、怪談・奇談を集めてみた。
父本人や作者の体験談もあり!
※思い出した順にゆっくり書いていきます。
※小説家になろう様にも同じものを投稿しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

黒い花
島倉大大主
ホラー
小学生の朝霧未海は自宅前の廊下で立ち尽くしていた。
とても嫌な感じがするのだ。それは二つ隣の部屋から漂ってくるようだ……。
同日、大学でオカルト研究会に所属する田沢京子の前に謎の男が現れる。
「田沢京子さん、あなたは現実に何か違和感を感じた事はありませんか?」
都市伝説の影に佇む黒い影、ネットに投稿される謎の動画、謎の焦燥感……
謎を追う京子の前で、ついに黒い花が咲く!
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる