魂選塔

中釡 あゆむ

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鬼ごっこ

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私が一番大切にしていたもの……この言い方からして、武器になるものだろうか。私はミルビーに渡しそびれた包丁をポケットに隠したまま、握りしめた。


「……あの、鬼は?」


他の魂が恐る恐る聞く。ミルビーがいなくなった今、みんなの表情はどこか暗いものに満ちていて、本来のあるべき雰囲気に戻っていた。


「鬼は、死にたくなかったのに死んでしまった者たちです。あなたたちとは相容れない存在ですよ」


あなたたち、の部分をチルギは強調して吐き捨てた。私たちに明らかな嫌悪感があるのは分かっていたが、今この状況では余計に暗くなる一方で、みんな俯いてしまう。


「チルギ様、ただいま戻りました」


カツギが階段から降りてきて、分かっていたことだがそこにミルビーがいないことに不安になってしまう。チルギは頷くと、両腕を広げた。


「さあ、始めましょう! 鬼ごっこを!」
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