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八
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思い出をなくしていった魂は自分の姿形も忘れて真っ白な輪郭だけになっていた。
けれど思い出を少しでも思い出した私たちは死ぬ直前の姿になっていた。確かにチルギやカツギのことは不思議ではあるが、それでも問いただそうとは思わない。ミルビーは何を考えているのだろう。
「君は……不思議な自殺者ですね。稀にいるんですよ、自己陶酔や快楽で自殺する人が。そのタイプだから思い出ショッピングにも葛藤ミキサーにも屈しない、ということですか」
蔑んだ目で言い放った。まるで価値がない、と言いたげな目。無性に私は胸中が疼き、どこか懐かしくも感じた。
「まあそんなところかな?」
「ふむ。ですが次の試練ではそうは行きませんよ。おっと、ちょうど終えたみたいですね」
ミキサーに視線を向けると赤い液体が付着していた。もう誰も悲鳴を上げない。チルギの言葉を聞いてしまったあとでは、もう、誰も悲しめない。
けれど思い出を少しでも思い出した私たちは死ぬ直前の姿になっていた。確かにチルギやカツギのことは不思議ではあるが、それでも問いただそうとは思わない。ミルビーは何を考えているのだろう。
「君は……不思議な自殺者ですね。稀にいるんですよ、自己陶酔や快楽で自殺する人が。そのタイプだから思い出ショッピングにも葛藤ミキサーにも屈しない、ということですか」
蔑んだ目で言い放った。まるで価値がない、と言いたげな目。無性に私は胸中が疼き、どこか懐かしくも感じた。
「まあそんなところかな?」
「ふむ。ですが次の試練ではそうは行きませんよ。おっと、ちょうど終えたみたいですね」
ミキサーに視線を向けると赤い液体が付着していた。もう誰も悲鳴を上げない。チルギの言葉を聞いてしまったあとでは、もう、誰も悲しめない。
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