魂選塔

中釡 あゆむ

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曖昧

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そのどれもに答えられたわけではなく、曖昧に答えたものもあった。彼女は聞きたそうだったが「えっと、これは嫌かな」と言うと「あ……すみません……あ、頭が、おかしい訳ではなくて」や「お、おかしくなっちゃいそう! 知りたくておかしくなっちゃう! あ……ご、ごめんなさ……頭、おかしいですよね……」など反応を示して諦めてくれた。


苦笑いをしながらも、そういえば彼がここに突っ立っている理由を考えた。思い出ショッピングでは人の思い出の中に入っていた。ところがこの葛藤ミキサーでは何もしていない。私にしたように、テレパシーを送っているのか、とも考えたがあれは包丁があってこそだった。


今、その包丁は私が持っている。返すのを忘れていたのだが、ソヨカがいる今では返せそうにない。


 「あ、行ってきます……」


やがてソヨカが控えめに手を振って、自信なさげに私の反応を窺っていた。私は彼女を元気づけるために、両手で拳を作り、ガッツポーズで力強く笑いかけた。
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