魂選塔

中釡 あゆむ

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葛藤ミキサー

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 好青年さながらの笑顔を向けている。かっこいい、なんて声がどこからか聞こえてきてげんなりしてきた。ええ……と小さく不満が漏れてしまう。チルギは実際のところ誰でもいいのだろう、手招きしてきた。


視線を回せばみんな私を見ている。渋々行こうとすると不意に手を引っ張られ、ミルビーが耳元で囁いた。


しっかり聞いて頷き返し前へ進む。ミルビーがしたようにボタンに足を踏み入れると視界が一気に上がった。勢いがありすぎるため、やはり怖い人は怖いだろう……。チルギを見るとにこにこと笑っていた。


キャップを外して入ると吸い込まれるように中に入ってしまう。確かに痛みはなく、衝撃はあるものの冷たさや感触がよく分からない。下を向いた時だった。


稲妻のように鋭い光が内側から飛び出し、風船が胸のところから生まれてきた。何の感触もないのに目に映る光景がやけにおぞましくて、目を瞑った。
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