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五
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「……私は死んだ。その事実は変わらないんだ。何を言ったって私を消して」
睨みながら言う彼女にボクは微笑みかけ、後ろ姿を確認してからボクも買った。
風船に取り込まれ、開かれた視界は青空だった。どこまでも青く、風が吹き抜け、目を細める。屋上だった。フェンスの前にメロルは立っていた。今回は白い服ではなく、魂選塔にいるメロルと一緒のジャージと制服のスカートだった。
「メロル」
ボクが話しかけると彼女は振り向き、目を見開いた。誰もいないと思っていたのだろう。ボクは空間から包丁を出し、握りしめた。
「誰?」
「……天使かな、なんて」
言いながら恥ずかしくなっていると、彼女は間もなく小さながらも笑い始める。初めて見た笑顔だ。
「あなた面白いのね。羨ましいわ、私もそんなことが言えたらこんなにも罪悪感に苛まれなかったのかも」
「どうしたの?」
問いかければ彼女は目を伏せ、元の無表情に戻って背を向けた。ボクもフェンスへ近付き、彼女の横に並んだ。
睨みながら言う彼女にボクは微笑みかけ、後ろ姿を確認してからボクも買った。
風船に取り込まれ、開かれた視界は青空だった。どこまでも青く、風が吹き抜け、目を細める。屋上だった。フェンスの前にメロルは立っていた。今回は白い服ではなく、魂選塔にいるメロルと一緒のジャージと制服のスカートだった。
「メロル」
ボクが話しかけると彼女は振り向き、目を見開いた。誰もいないと思っていたのだろう。ボクは空間から包丁を出し、握りしめた。
「誰?」
「……天使かな、なんて」
言いながら恥ずかしくなっていると、彼女は間もなく小さながらも笑い始める。初めて見た笑顔だ。
「あなた面白いのね。羨ましいわ、私もそんなことが言えたらこんなにも罪悪感に苛まれなかったのかも」
「どうしたの?」
問いかければ彼女は目を伏せ、元の無表情に戻って背を向けた。ボクもフェンスへ近付き、彼女の横に並んだ。
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