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三
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彼女は感情を出せないだけで、きっと自分を責めていたのだろうし、母に申し訳なくも思っていたのだろう。優しく、聡い母なのだから。
人の思い出に入って初めていい思い出を見た。終わりを迎え、ボクと彼女は元の魂選塔に放り出される。
メロルはボクを見て首を傾げた。
「あなた、いた?」
「下手に会わないようにしてるんだ。会った途端それは思い出ではなくなるから。さあ、次も買おう」
彼女の背中を押して促すと渋々ながらも思い出を買ってくれ、ボクも続けて買った。
しかしその思い出はさっきと同じようなもので、その次の思い出も似たようなものだった。次も、次も、彼女は同じ場所にいて、母が会いに来て思い出を終える。
何度目かの思い出を見終えたあとに彼女はようやく反論してきた。
「飽きる理由もわかるでしょ? 母は私が生まれたことを毎日感謝してくれてた。私はそんな彼女に何も返せなかった。だから死んだの」
人の思い出に入って初めていい思い出を見た。終わりを迎え、ボクと彼女は元の魂選塔に放り出される。
メロルはボクを見て首を傾げた。
「あなた、いた?」
「下手に会わないようにしてるんだ。会った途端それは思い出ではなくなるから。さあ、次も買おう」
彼女の背中を押して促すと渋々ながらも思い出を買ってくれ、ボクも続けて買った。
しかしその思い出はさっきと同じようなもので、その次の思い出も似たようなものだった。次も、次も、彼女は同じ場所にいて、母が会いに来て思い出を終える。
何度目かの思い出を見終えたあとに彼女はようやく反論してきた。
「飽きる理由もわかるでしょ? 母は私が生まれたことを毎日感謝してくれてた。私はそんな彼女に何も返せなかった。だから死んだの」
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