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思い出の中
五
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メロルがボクの視線に気付き、ウインクをしてみせてからヒステリック女に近付いた。メロルの視線を受けながら女の視線に合わせて屈み、心配げに顔を覗き込んだ。
「大丈夫ですか?」
「うるさい! 大丈夫なわけないでしょ!」
高い声で否定され、ボクは目を見開き、俯いた。ごめんなさい。その言葉を何度も繰り返せば喚いていた彼女の目にようやくボクが映り、耳に届いたらしい。
黙り込んだ女へ顔を上げ、今にも崩れそうな顔を見せた。
「一緒にチルギ様に訴えようよ」
「……そんなことしたら、消されてしまうわ」
ボクは頭を振った。
「消されないように、天国に送ってもらうようお願いしようよ。こんなの間違ってる。どうして、せっかく死んだのに、ようやく忘れられたのに、こうしてまた苦しめられなきゃならないの? もうボクたちはたくさん苦しんだじゃないか。生き返らせるなんて、あの人たちの勝手だよ。お姉さんもそう思うでしょ?」
「大丈夫ですか?」
「うるさい! 大丈夫なわけないでしょ!」
高い声で否定され、ボクは目を見開き、俯いた。ごめんなさい。その言葉を何度も繰り返せば喚いていた彼女の目にようやくボクが映り、耳に届いたらしい。
黙り込んだ女へ顔を上げ、今にも崩れそうな顔を見せた。
「一緒にチルギ様に訴えようよ」
「……そんなことしたら、消されてしまうわ」
ボクは頭を振った。
「消されないように、天国に送ってもらうようお願いしようよ。こんなの間違ってる。どうして、せっかく死んだのに、ようやく忘れられたのに、こうしてまた苦しめられなきゃならないの? もうボクたちはたくさん苦しんだじゃないか。生き返らせるなんて、あの人たちの勝手だよ。お姉さんもそう思うでしょ?」
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