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自分のために
九
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そのためにはチルギやカツギに見つかり、追い出されるわけにはいかないのだ。
自分の思い出なんかいらない。最初からあるから。そのために彼らの思い出に入り込むことにした。ボクが死んだときの思い出が、誰かの中に入っているかもしれない。
そしたらそいつが犯人だ。
早速またも探しに行こうとすると、お兄さん、と話しかけられる。振り向くと中学生くらいなのか、赤いジャージ姿に制服のスカートを履いた身長の低い茶髪の女の子がいた。
「巾着袋落としたよ。これがないと思い出買えないんだよ」
「ああ、ありがとう!」
差し出された巾着袋を受け取ろうとした。ところが彼女はその巾着袋を離そうとせず、ボクをジッと眺めている。ボクは首をかしげた。
「ね、お兄さん。私も、消してよ」
女の子は、口元を不器用に歪めて笑った。
見つかった。
心の中で警笛音が、鳴り響いた。
自分の思い出なんかいらない。最初からあるから。そのために彼らの思い出に入り込むことにした。ボクが死んだときの思い出が、誰かの中に入っているかもしれない。
そしたらそいつが犯人だ。
早速またも探しに行こうとすると、お兄さん、と話しかけられる。振り向くと中学生くらいなのか、赤いジャージ姿に制服のスカートを履いた身長の低い茶髪の女の子がいた。
「巾着袋落としたよ。これがないと思い出買えないんだよ」
「ああ、ありがとう!」
差し出された巾着袋を受け取ろうとした。ところが彼女はその巾着袋を離そうとせず、ボクをジッと眺めている。ボクは首をかしげた。
「ね、お兄さん。私も、消してよ」
女の子は、口元を不器用に歪めて笑った。
見つかった。
心の中で警笛音が、鳴り響いた。
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