29 / 246
自分のために
五
しおりを挟む
マサミは目を見開き、母の顔を凝視した。細かった目からはとめどなく涙が零れ、やがて、掴まれていない方の腕で自分の顔を隠した。
「どうしてそんなこと言うの? エリーは、エリーだけは、仕事が遅い私をいつも待ってくれていたのよ……いつも慰めてくれて、エリーがいてくれたから私は帰ることが出来たのに、どうして……! お母さんに私の気持ちなんか!」
彼女は母を突き飛ばし、部屋から飛び出した。
「政美!」
母がその後を追いかけるも立ち止まった音が聞こえ、窓の外を見ると走っていくマサミだけが見えた。
ボクはベランダから飛んで彼女を追いかけた。車が走り抜け、自転車が横を通っていき、恋人たちが笑いながら歩いている。ついに彼女はその人たちにぶつかり、尻餅をついてしまうがまたもや走り出す。
痛かったのか今度は大声を上げて走っていた。道行く人が彼女へ注目をしているが追いかける。
痛いだろう。悲しいだろう、悔しいだろう。その全てが彼女の思い出だ。今度はボクが人にぶつかるが彼女の思い出に入り込んだイレギュラーであるボクに痛みはなく、構わず追いかけ続けた。
「どうしてそんなこと言うの? エリーは、エリーだけは、仕事が遅い私をいつも待ってくれていたのよ……いつも慰めてくれて、エリーがいてくれたから私は帰ることが出来たのに、どうして……! お母さんに私の気持ちなんか!」
彼女は母を突き飛ばし、部屋から飛び出した。
「政美!」
母がその後を追いかけるも立ち止まった音が聞こえ、窓の外を見ると走っていくマサミだけが見えた。
ボクはベランダから飛んで彼女を追いかけた。車が走り抜け、自転車が横を通っていき、恋人たちが笑いながら歩いている。ついに彼女はその人たちにぶつかり、尻餅をついてしまうがまたもや走り出す。
痛かったのか今度は大声を上げて走っていた。道行く人が彼女へ注目をしているが追いかける。
痛いだろう。悲しいだろう、悔しいだろう。その全てが彼女の思い出だ。今度はボクが人にぶつかるが彼女の思い出に入り込んだイレギュラーであるボクに痛みはなく、構わず追いかけ続けた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
【短編集】霊感のない僕が体験した奇妙で怖い話
初めての書き出し小説風
ホラー
【短編集】話ホラー家族がおりなす、不思議で奇妙な物語です。
ーホラーゲーム、心霊写真、心霊動画、怖い話が大好きな少し変わった4人家族ー
霊感などない長男が主人公の視点で描かれる、"奇妙"で"不思議"で"怖い話"の短編集。
一部には最後に少しクスっとするオチがある話もあったりするので、怖い話が苦手な人でも読んでくださるとです。
それぞれ短くまとめているので、スキマ時間にサクッと読んでくださると嬉しいです。

地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
MARENOL(公式&考察から出来た空想の小説)
ルーンテトラ
ホラー
どうも皆さんこんにちは!
初投稿になります、ルーンテトラは。
今回は私の好きな曲、メアノールを参考に、小説を書かせていただきました(๑¯ㅁ¯๑)
メアノール、なんだろうと思って本家見ようと思ったそこの貴方!
メアノールは年齢制限が運営から付けられていませんが(今は2019/11/11)
公式さんからはRー18Gと描かれておりましたので見る際は十分御気をつけてください( ˘ω˘ )
それでは、ご自由に閲覧くださいませ。
需要があればその後のリザちゃんの行動小説描きますよ(* 'ᵕ' )
アポリアの林
千年砂漠
ホラー
中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。
しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。
晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。
羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。

麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。


人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる