魂選塔

中釡 あゆむ

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魂選塔

十二

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その先は先程撃たれた魂がいた位置だった。微かな悲鳴がどこからか聞こえる。俺もすぐに理解が出来、視線を逸らした。


生き返られなかったら消滅だ……。誰もがそう思う。恐怖し、一方で消滅した方がいいのでは、と考えてしまう。もうどうせ何もないのだ。あるのは名前だけ。それならいっそ消えたって……。


「さあ、始めましょう。思い出ショッピングを」


俺たちの意図とは反して、チルギが嬉しそうに声を張り上げた。その後にカツギが螺旋階段の前に移動し、目の前にいた魂に登るよう促す。その魂は渋っていたが銃を向けられると、渋々登り始める。


釣られて続々と登っていく中、ミルビーの方を見た。


「あれ?」


ミルビーはいなくなっていた。ほかの魂たちよりも長い身長だったのか、彼は大きいからすぐにわかった。先に行ったのかもしれない。俺は仕方なく人混みに紛れて階段の方へ向かう。


登る直前、巾着袋を渡してきたカツギと目が合ったが彼女にとっては俺は魂の中の内の一人にしか過ぎないらしい。元々みんな見分けがつかないのもあるだろうが少し悔しかった。


一つ上の階は売り場のようにひな壇陳列で先程の風船が並べられていた。その横には一つ一つレジがあり、店員のつもりなのか、鼻が見えないくらいに深い黒いフードを被った人がいた。


魂たちは恐る恐るその風船を触ったり、早くもレジに行っている人もいる。俺は巾着袋を開け、中身を確認した。通貨と言われたビー玉だ。 
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