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魂選塔
五
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「逃げよう、ミルビー。ここはやばい。俺、ここに来る前に変な女に出会ったんだ……それから闇に覆われて、扉が現れて、ここに入れられた……。一瞬だったような気がするがずっと気を失わされていた気もする。そんなのおかしいんだよ、俺は、死んでから気を失うことがなかったんだっ!」
恐怖心で声が大きくなっていた。魂たちの視線を受けながら、必死にミルビーへ呼びかける。ミルビーは俺に揺すられるがままで、返事をしない。
「ミルビー!」
叫んだ途端、 不意に、照明が暗くなった。同時に遠くの方でスポットライトが灯る。
その中心に、さっきの女と白髪の四十歳は過ぎているであろう薄目の男が立っていた。男は肉付きがよく、服の下の筋肉が抑えきれなさそうに今にもはち切れそうだ。その強そうな人に一同は騒ぎ始める。
銃声が鳴った。
もう死んでいるのに魂はざわめきを止める。死よりも恐い音だった。しん、と静まり返った空間から、嗚咽のような、小さな悲鳴が聞こえてくる。
俺はミルビーから手を離した。
ミルビーは既に俺よりも男たちに視線を向けていたのだ。俺の言葉は届いていなかった。絶望感と、悔しさで女を睨みつける。
恐怖心で声が大きくなっていた。魂たちの視線を受けながら、必死にミルビーへ呼びかける。ミルビーは俺に揺すられるがままで、返事をしない。
「ミルビー!」
叫んだ途端、 不意に、照明が暗くなった。同時に遠くの方でスポットライトが灯る。
その中心に、さっきの女と白髪の四十歳は過ぎているであろう薄目の男が立っていた。男は肉付きがよく、服の下の筋肉が抑えきれなさそうに今にもはち切れそうだ。その強そうな人に一同は騒ぎ始める。
銃声が鳴った。
もう死んでいるのに魂はざわめきを止める。死よりも恐い音だった。しん、と静まり返った空間から、嗚咽のような、小さな悲鳴が聞こえてくる。
俺はミルビーから手を離した。
ミルビーは既に俺よりも男たちに視線を向けていたのだ。俺の言葉は届いていなかった。絶望感と、悔しさで女を睨みつける。
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