あをによし ~年下宰相様は日本画家の地味系女子にご執心です~

柚木音哉

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※R18です。

「……っ、あ……ん、あつ、ぃ……レオンッ……レ、オンっっ……」

 浴槽の縁に座る彼の腰の上に跨がり、美月は彼の勃ち上がった楔を咥え込んだまま、大きく仰け反った――。





 温かい湯船に浸かって、ひと息つくと言う美月の望みは、一緒に入って来た彼の暴挙により断たれた。
 確かに、あちこち身体は筋肉痛だし、腰は痛いしで力が入らない。それを良いことに、その身体を手につけた石鹸で隅から隅まで彼の手で丁寧に直に洗われ、もう……美月は息も絶え絶えだった。
 ぬるぬるとした石鹸の泡を纏って温かく大きな手が肌を滑っていく感覚は、なんとも言えない恥ずかしさと共に、鎮まったはずの官能を呼び覚ます。
 両の手でふるふると頼りなげに揺れる豊かな白い乳房をマッサージするようにスルスルと撫で、揉み込むと途切れ途切れの泡の隙間からテラテラと濡れ光る白くて丸い乳房の上で赤く勃ち上がった乳首が主張する。括れた腰から臀部のムッチリとした肉を柔らかく揉まれ、脚の間に手を触れられ、時折不埒な動きをする手を力無くけん制しても、その手は彼女を愛でる動きを止めない。
「……美月……」
「も……無理だからぁ……っ」
 身体中泡でまみれながら、昨夜も散々繋がった場所を弄ばれて、中を洗われると、抵抗していたはずの自分から、また蜜が溢れて来るのが分かり、戸惑った。

 美月は泣きそうになっていた。

「も……やだ……」
 その言葉にレオンハルトは、初めて自分がやり過ぎたことに気付き、慌てて彼女を抱き締めた。
「……っ、美月、ごめん……調子に乗り過ぎたね。君が疲れてるの、わかっていたのに」
 レオンハルトに引き寄せられ、美月は彼の裸の胸に顔を隠し、その身体に抱き着いた。
「……レオンのこと、好きだよ。本当に大好き。だけど、私……」
 好きな人に求められれば、嬉しい。でも、自分の気持ちがついていかなければ、辛いだけだ。
 レオンのことは好きだし、彼が私を求めるなら出来る限り応えたいと思うけど、こちらの気持ちを無視して身体ばかり求められているようで悲しくなって来た。
「美月、僕は君が好きです。君が近くにいるだけで触れたくなるくらいに。君のことが好きすぎてツラいです。美月、ごめんね。君を悲しませたい訳じゃないんですよ……」
「……レオン……」
「ねぇ、美月。僕は君の隣りに一生居たいんです。君がこの世界に再び落ちて来たのは、奇跡です」

 美月を抱き締めて、彼女の身体を抱いたまま湯船に沈みながらレオンは呟いた。
「……僕は、君が居なくなって、それまで神など信じたこともなかったのに、それからずっと……願っていました」
 美月を背中からお腹へ腕を回し、抱き締めるようにして、広い浴槽の中で彼は呟く。
「美月に、また逢いたいって」
 掠れて震える声でレオンが呟き、華奢な美月の肩に顎を預ける。
「君が戻って来てくれた時、嬉しくて二度と離すものかと思いました。それなのに……今はもっと欲深くなってしまいました」
「レオン……」
「君が……僕を受け入れてくれて、本当に嬉しかった。僕はどんどん欲深くなって、君に僕を愛して欲しいと思うようになりました。君が僕から離れないように枷が欲しい、と」
「…………」
「……ねぇ、気付いてますよね。僕は何度も君を抱いたけど、一度も避妊してないんですよ。この意味がわかりますか?」
 抱き締められ、湯船の中で腹部にある手が美月の薄い腹を撫でる。
「……美月が僕の子を孕んでくれればいいと、そう願っています。僕は君との未来が欲しいから」
 肩口に唇を落とされ、熱を持ったままの耳を滑って、黒髪を掻き分けて現れた頸に鼻を埋める。金色の髪がふわふわと首筋に触れて擽ったくなり、肩を竦めると、彼は囁くように懇願した。

「……美月、僕と結婚してくれませんか? 僕はきっと、君無しでは生きていけません」
「……っ、でも、私……まだ、貴方に依頼された絵も……」
「ええ。君の絵は僕も見たいです。美月に出会えたのは、美月の絵のおかげですし……君の絵には独特の世界観がある。画家としても、個人的には才能があると思っていますし、僕は君の絵をもっと見たいです」
「……私、私みたいな地味な女の駆け出しの画家がレオンみたいな人の隣りに立って、本当にいいの?」
「美月が絵を描きたいなら、描けばいいんです。絵を描いている美月はとても綺麗で、僕は好きです。……君は『客人』だ。しかも、他の誓約によってわざわざ召喚された『客人』とは違う。この世界のことわりに囚われる必要は無いんですよ」
「……それって……好きに生きていいってことよね?」
「ええ。美月の良さはその自由さがあってこそ……僕も置いて行かれそうで、時折心配になりますが」
 ちゃぷん。と、湯船のお湯が小さく音を立てた。
 置いて行かれる……そう話す彼の身体が僅かに強張ったのを、美月は彼の体温を背中に感じながら感じていた。
 美月が帰還した時のことを、彼は思い出したのだろう。

 置いて行かれた者と置いて行った者。

 あの時、二人の別離でお互いが感じたのは後味の悪さと、後悔と、理不尽な事象へのやり切れない憤り。

 では、何故、あの時……憤りを覚えたのか?

「私、きっとあの時……レオンと離れたくなかったんだよね……」
 もう、ずっと胸の奥にあったもの。
 彼が、自分に差し出した手を振り払ったことへの後悔と後ろめたさを抱えた年月。
 一度は怖くて振り払ったその手を――今度こそ、離したくない。

「美月?」

「私、レオンの隣に居る。レオンが嫌だって言っても、今度は絶対その手は離さないから……だから……」

 腹部にあるレオンハルトの手を握り、顔の横にある彼の唇に、自らの唇を押し付けた。

「……だから、隣りに居てもいい?」

 美月の唇が甘く、柔らかくレオンハルトの理性を奪う。
「……もう。どうしてそんなに……可愛いらしいんですか。そんな可愛いことを言われたら、僕は……っ折角、我慢してたのに……我慢出来なく……なりますよ……」
 レオンハルトが唸りながら、彼女を自分の腰に引き寄せる。彼女の柔らかな唇を貪りながら、ふと目が合って、互いに泣き笑いのような表情を浮かべて笑い合った。

「……我慢、しなくていい、よ?」

 レオンハルトの欲は既にいきり勃ち、自分の腰と美月の脚の間で膨らんでいる。互いに身を擦りよせ、美月の蜜口からはお湯とは違う滑りを帯びた蜜が溢れているのを潤滑剤代わりにして、彼の肉茎が熱を帯び、蜜を湛えたその場所を花芽ごと擦り上げる。
「……んンッ……ふっ……」
「君を大事にします。優しく……します、から……だから……」
「レオン……大好きだよ……」
 レオンハルトの青い目がその瞬間、揺れた。自らの欲を堪えるように、そして、涙を堪えるかのように。
「……ッ……」
 浴槽の縁に腰掛けた彼の上に跨がるように美月の身体を抱き上げて、向かい合ったまま繋がる。
 彼女臀部を鷲掴み、自らの腰に引き寄せるようにしてゆっくりと突き上げると、美月の身体が弓なりになる。
「……ッ、美月……っ」
「レオンッ……レ、オン……ッ……気……もち、い……ぁっ……い、イく……ッ……」
 互いの身体を隙間無く触れ合わせ、レオンハルトに奥まで挿入されたまま、美月の身体をゆっくりと揺さぶると、彼女はすぐに上り詰め、軽く痙攣しながら果てた。

 レオンハルトは美月を愛しげに抱き締め、力の抜けてしまった身体から自らを抜き取ると、労わるように優しく清め、寝室に運ぶ。

 無理をさせたことは自覚している。それなのに、彼女のことになると自制がきかない。

 逆上せて再び意識を手放した彼女を抱き締めて濡れた髪を乾かし、身体を拭くと、ベッドへ寝かせる。自らも横になりながら困ったように眉根を寄せ、口元を緩めた。




 
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