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第4章 魔王の影を払う少女
第107話 予期せぬ同行者
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アトの災厄を滅ぼしたレオ達は馬車に乗り、再びアルティスへと戻ってきた。
その間、アリエス達はエリシアを介抱していたが、結局彼女は目を覚ますことはなかった。
とはいえ生きているのは間違いなく、目を覚ますのも時間の問題のように思われた。
ようやく帝都に到着した馬車から降り、辺りを見回す。
アトの影響で複数の魔物が帝都の周辺を通過したために街は少しざわついていた。
しかし城壁の中に入ってくるようなことはなかったのか、魔物被害の時のように慌てている様子はない。
どちらかというと、心配で街中がそわそわしているような印象だ。
「バラン様!」
大きな声が響き、馬車を降りたバランの元にメイドが駆け寄ってくる。
まだ怪我が癒えきってはいないものの、意識を取り戻したようだ。
彼女はバランの元に一目散に駆け、そのまま勢いに任せて抱き着いた。
急な衝撃にややバランは後ろによろけたが、倒れるようなことはなくしっかりと抱き留めていた。
「目を覚ましたらお姿が見えないので……心配しました……」
やや涙声で訴えるメイドに対して、バランは背中を摩りながら慰めているようだ。
おそらく、この後彼はメイドに付きっきりになるだろう。
これまで会えなかった分、しっかりと埋め合わせをしてもらえればと思う。
「……なんか、ああいうのっていいよね」
二人の様子を見ていたリベラが呟き、それにパインが応えた。
「ならお姉ちゃんとする?」
「いや、なんであんたよ」
苦笑いしながら断るリベラに対して、パインはむむむっと顔を顰めた。
どうやら断られたことが不満なのだろうか、確かに二人は仲が良いが。
そんなことを思っていると、パインはリベラを非難するように人差し指を立てた。
「女神さまは不敬ですよ」
どうやら断られたから怒っているというわけではなさそうだ。
パインはリベラの求めている相手がアリエスの事だと思ったらしく、彼女を女神として信奉している敬虔な信徒としては一言、物申さなければならないのだろう。
「しないってば。っていうかなんでアリエ――」
ややこしくなってきた話を否定しようとリベラが口を開いたのと、バラン達が戻ってきたのは同時だった。
「レオ、俺達はこれから城に向かう。
今回の件でいくつか説明しないといけないことがあるからな。
あぁ、任せておいてくれ。お前達とエリシアの事はなるべく話さないようにするよ。
結果として俺の功績が過大になるのは申し訳ないがな」
「分かった。いや、それは全然かまわない。頼む」
レオとしても目立つのは避けたいし、エリシアも同じだろう。
「エリシアは一旦城の救護室で預かるよ。今回の騒動で負傷したとでも言っておくさ。
回復した後は……エリシア自身に任せる」
そう言ってバランはレオ達の馬車に入り、エリシアを抱えて出てくる。
メイドが手助けをしようとしたが、まだ病み上がりの彼女に無理をさせたくないのか、やんわりと断っていた。
「それじゃあレオ、また後で。明日になるかもしれないがな」
「ああ、頼んだ」
バランは頷いて、別れの挨拶として手を軽く振って城へと向かってしまった。
離れ、小さくなっていく二つの背中を見ながら、後ろのリベラが声を上げる。
「じゃあ、私達も宿に戻ろうか」
当然、その言葉に反対する者は誰も居なかった。
こうして、レオ達5人は行動は宿屋へ向かって歩き始めた。
×××
「さて、そういうわけで宿に戻ってきたわけですが」
そう言ったアリエスは部屋の中心に立ち、びしっと部屋の隅を指さした。
「なぜ当然のように居るんですか? シェイミさん」
指を指した先、テーブルに備え付けられた椅子に座っていたシェイミが無機質な瞳をアリエスに向けた。
我が物顔で椅子に腰かけていて、その様子はかつて王国で見た時と同じだった。
あまりにも溶け込んでいるものだからレオとしても気にしていなかったが、確かによくよく考えるとシェイミがこの部屋に居るはおかしい。
「……宿は?」
ふと思ったことを聞いてみれば、アリエスと見つめ合っていたシェイミはレオへと視線を移し、首を横に振った。
「今日来たばかりで、取ってない」
「なるほど」
ならば、この部屋に居ることも納得できる。
と思って、あれ?と違和感に気づいたとき。
「なるほどじゃないですレオ様! というか、宿取ってないなら別の宿に行ってください!」
「お、おお……」
激しい剣幕ゆえにやや気おされながらも、レオは返事をする。
しかしシェイミはどこ吹く風で、アリエスに視線を向けることすらせずにじっとレオを見つめていた。
まるで彼女の世界にはレオと自分しかいないようで、それがさらにアリエスを刺激しているのだろうという事に気づいたのは、残念ながらリベラだけだった。
「すること、もうない。どこかに行く予定もない。だから、ここに居る」
「い、居るって……きゅ、急に……」
「自分は強い。そんな自分が一緒に居れば、あなたも楽。そうでしょ?」
アリエスの言葉を無視してシェイミはレオに問いかける。
彼女の言葉にリベラが「上手いなぁ」と呟いたが、レオは何のことか分からなかった。
(ふむ……)
少しだけ考えてみる。
シェイミとは折り合いが悪いと思っていたが、それは彼女の耳が原因ということでもあり、今の彼女ならばそこまで苦手意識があるわけでもない。
いつもの威圧感は全く感じないし、不愛想なのはお互い様だ。
一方で、その力は百人、いや千人を超えて万人力だ。
シェイミという最高の勇者を味方に迎え入れられることは最大の利点ともいえる。
というか考えれば考える程、シェイミが一緒にいてくれれば良いことしかないことにレオは気づいた。
「……俺としてはありがたいが、勇者なのに大丈夫なのか?」
王国所属のシェイミが自分達と同行するのは問題ないのかと思い尋ねてみると、彼女は一回だけ首を縦に振った。
「自由にしていいと言われているから、問題ない」
「……そうなのか」
シェイミの言葉を聞いて問題がなさそうだと判断したレオは受け入れることにした。
ならば、彼女を拒絶する理由は一つもない。
「うん、そうだな。一緒に来てくれると助かる」
シェイミはしっかりと頷き、なぜかアリエスの方を向く。
するとアリエスは急に不機嫌になり、何かを耳元で囁いたリベラを軽く叩いた。
シェイミの表情はちょうど見えなかったし、リベラが呟いたことも聞こえなかったので、レオは内心で不思議に思うしかなかった。
「初めまして信徒シェイミ。お姉ちゃんはパインと言います。よろしくお願いします」
「よろしく、パイン」
やや恐れが残っているリベラや、なぜか不機嫌なアリエスとは違い、直接シェイミに重圧を掛けられたことのないパインは彼女に思うところがないのか、真っ先に声をかけた。
その挨拶は普通とはかなり異なっていたが、シェイミは彼女を邪険にするようなことなく受け入れた。
(……初めて名前を呼んでいるのを聞いたな)
思い返してみれば、シェイミはそもそも人の事を呼びかけない。
誰かに用があるときはその人物に近づいて行って、用件だけを話していた筈だ。
自分も「あなた」としか呼ばれたことがなかったことを、レオは思い出した。
「パイン、信徒とは?」
だから今のようにシェイミがパインの名前を呼んだことは少し意外だった。
というよりもむしろ。
(俺だけあなただから、ちょっと敵視されてる?)
思えば他の人物に「あなた」と呼んでいたこともないような。
並び立てるライバルとしての呼称なのだろうか。
それはそれで嬉しいような、一方で少し寂しい気もするが、まさか今更名前で呼んで欲しいなどと言えるはずもなく、レオはもやもやした気持ちを内部に閉じ込めた。
「はい、お姉ちゃんたちは神様と女神様を崇める信徒です。
他にも信徒リベラがいます」
目線でレオとアリエスを指し示したパインに従って、シェイミは二人を順に見た。
話が明後日の方向に飛ぼうとしていると思ったであろうリベラが立ち上がり、シェイミに声をかける。
「シェイミさん、ごめんね。パインはずっとこうでさ。付き合ってくれると嬉し――」
「神様は分かった。でも女神は受け入れられない」
「ええ……」
間に入ろうとしたのにシェイミがノリノリでパインに返したために、リベラは肩透かしを食らったみたいになっていた。
レオはやや楽しそうな雰囲気を醸し出しているシェイミを見て気づいた。
(……これ、多分本心だ)
パインに合わせているというのではなく、心からそう思っている気がした。
シェイミからすれば歴代最強の勇者と言われていた自分が祀られるのは構わないが、アリエスは違うという事なのだろうか。
「むむむっ、シェイミさんは神様は一人しか認めない派閥ですか?
これは困りました。宗教最初の分裂の危機です……」
「自分は神様だけなら認めてもいい」
「そ、それは……し、しかし女神様を蔑ろにすることは……」
まっすぐにレオのみを神様としたいと伝えるシェイミと、頭を抱えて初の宗教分裂に悩むパイン。
いよいよもって場が混乱の極みに達してきて収拾がつかなくなる未来が近いことを、レオは悟ってしまった。
もうリベラは仲介することを諦めて遠くを見ている。彼女が匙を投げたのならどうしようもないだろう。
これから先、敬虔な信徒であるパインと神様しか認めないシェイミが訳の分からない論争を永遠に繰り広げそうである。
そう考えると頭が痛い。
「……女神でもいいですし信仰しなくても全然構わないですから、シェイミさんは宿の店主に一人追加の料金を払ってきてくださいね」
論争の火種になっている白銀の少女はまるで興味が無いようにそう告げて、荷物の整理に戻ってしまった。
その後も宿の店主に料金を支払ったシェイミがベッドの数ゆえにレオと一緒に寝ると言い出すという事件はあったものの、特に何事もなく夜は過ぎていった。
エリシアを救ったためか右目が悪夢を映すこともなく、レオは久しぶりの快眠で体を休めることが出来た。
また、シェイミのレオと一緒に寝たい要望に関してはアリエスが即却下したために、彼女はパインと共に同じベッドに入ったことをここに記しておく。
ちなみにアリエスは夜中にシェイミが何か悪さをしないか見張るために起きていて、翌日は眠そうにしていたが、当然レオは「寝付けなかったのかな」と思ったに過ぎなかった。
その間、アリエス達はエリシアを介抱していたが、結局彼女は目を覚ますことはなかった。
とはいえ生きているのは間違いなく、目を覚ますのも時間の問題のように思われた。
ようやく帝都に到着した馬車から降り、辺りを見回す。
アトの影響で複数の魔物が帝都の周辺を通過したために街は少しざわついていた。
しかし城壁の中に入ってくるようなことはなかったのか、魔物被害の時のように慌てている様子はない。
どちらかというと、心配で街中がそわそわしているような印象だ。
「バラン様!」
大きな声が響き、馬車を降りたバランの元にメイドが駆け寄ってくる。
まだ怪我が癒えきってはいないものの、意識を取り戻したようだ。
彼女はバランの元に一目散に駆け、そのまま勢いに任せて抱き着いた。
急な衝撃にややバランは後ろによろけたが、倒れるようなことはなくしっかりと抱き留めていた。
「目を覚ましたらお姿が見えないので……心配しました……」
やや涙声で訴えるメイドに対して、バランは背中を摩りながら慰めているようだ。
おそらく、この後彼はメイドに付きっきりになるだろう。
これまで会えなかった分、しっかりと埋め合わせをしてもらえればと思う。
「……なんか、ああいうのっていいよね」
二人の様子を見ていたリベラが呟き、それにパインが応えた。
「ならお姉ちゃんとする?」
「いや、なんであんたよ」
苦笑いしながら断るリベラに対して、パインはむむむっと顔を顰めた。
どうやら断られたことが不満なのだろうか、確かに二人は仲が良いが。
そんなことを思っていると、パインはリベラを非難するように人差し指を立てた。
「女神さまは不敬ですよ」
どうやら断られたから怒っているというわけではなさそうだ。
パインはリベラの求めている相手がアリエスの事だと思ったらしく、彼女を女神として信奉している敬虔な信徒としては一言、物申さなければならないのだろう。
「しないってば。っていうかなんでアリエ――」
ややこしくなってきた話を否定しようとリベラが口を開いたのと、バラン達が戻ってきたのは同時だった。
「レオ、俺達はこれから城に向かう。
今回の件でいくつか説明しないといけないことがあるからな。
あぁ、任せておいてくれ。お前達とエリシアの事はなるべく話さないようにするよ。
結果として俺の功績が過大になるのは申し訳ないがな」
「分かった。いや、それは全然かまわない。頼む」
レオとしても目立つのは避けたいし、エリシアも同じだろう。
「エリシアは一旦城の救護室で預かるよ。今回の騒動で負傷したとでも言っておくさ。
回復した後は……エリシア自身に任せる」
そう言ってバランはレオ達の馬車に入り、エリシアを抱えて出てくる。
メイドが手助けをしようとしたが、まだ病み上がりの彼女に無理をさせたくないのか、やんわりと断っていた。
「それじゃあレオ、また後で。明日になるかもしれないがな」
「ああ、頼んだ」
バランは頷いて、別れの挨拶として手を軽く振って城へと向かってしまった。
離れ、小さくなっていく二つの背中を見ながら、後ろのリベラが声を上げる。
「じゃあ、私達も宿に戻ろうか」
当然、その言葉に反対する者は誰も居なかった。
こうして、レオ達5人は行動は宿屋へ向かって歩き始めた。
×××
「さて、そういうわけで宿に戻ってきたわけですが」
そう言ったアリエスは部屋の中心に立ち、びしっと部屋の隅を指さした。
「なぜ当然のように居るんですか? シェイミさん」
指を指した先、テーブルに備え付けられた椅子に座っていたシェイミが無機質な瞳をアリエスに向けた。
我が物顔で椅子に腰かけていて、その様子はかつて王国で見た時と同じだった。
あまりにも溶け込んでいるものだからレオとしても気にしていなかったが、確かによくよく考えるとシェイミがこの部屋に居るはおかしい。
「……宿は?」
ふと思ったことを聞いてみれば、アリエスと見つめ合っていたシェイミはレオへと視線を移し、首を横に振った。
「今日来たばかりで、取ってない」
「なるほど」
ならば、この部屋に居ることも納得できる。
と思って、あれ?と違和感に気づいたとき。
「なるほどじゃないですレオ様! というか、宿取ってないなら別の宿に行ってください!」
「お、おお……」
激しい剣幕ゆえにやや気おされながらも、レオは返事をする。
しかしシェイミはどこ吹く風で、アリエスに視線を向けることすらせずにじっとレオを見つめていた。
まるで彼女の世界にはレオと自分しかいないようで、それがさらにアリエスを刺激しているのだろうという事に気づいたのは、残念ながらリベラだけだった。
「すること、もうない。どこかに行く予定もない。だから、ここに居る」
「い、居るって……きゅ、急に……」
「自分は強い。そんな自分が一緒に居れば、あなたも楽。そうでしょ?」
アリエスの言葉を無視してシェイミはレオに問いかける。
彼女の言葉にリベラが「上手いなぁ」と呟いたが、レオは何のことか分からなかった。
(ふむ……)
少しだけ考えてみる。
シェイミとは折り合いが悪いと思っていたが、それは彼女の耳が原因ということでもあり、今の彼女ならばそこまで苦手意識があるわけでもない。
いつもの威圧感は全く感じないし、不愛想なのはお互い様だ。
一方で、その力は百人、いや千人を超えて万人力だ。
シェイミという最高の勇者を味方に迎え入れられることは最大の利点ともいえる。
というか考えれば考える程、シェイミが一緒にいてくれれば良いことしかないことにレオは気づいた。
「……俺としてはありがたいが、勇者なのに大丈夫なのか?」
王国所属のシェイミが自分達と同行するのは問題ないのかと思い尋ねてみると、彼女は一回だけ首を縦に振った。
「自由にしていいと言われているから、問題ない」
「……そうなのか」
シェイミの言葉を聞いて問題がなさそうだと判断したレオは受け入れることにした。
ならば、彼女を拒絶する理由は一つもない。
「うん、そうだな。一緒に来てくれると助かる」
シェイミはしっかりと頷き、なぜかアリエスの方を向く。
するとアリエスは急に不機嫌になり、何かを耳元で囁いたリベラを軽く叩いた。
シェイミの表情はちょうど見えなかったし、リベラが呟いたことも聞こえなかったので、レオは内心で不思議に思うしかなかった。
「初めまして信徒シェイミ。お姉ちゃんはパインと言います。よろしくお願いします」
「よろしく、パイン」
やや恐れが残っているリベラや、なぜか不機嫌なアリエスとは違い、直接シェイミに重圧を掛けられたことのないパインは彼女に思うところがないのか、真っ先に声をかけた。
その挨拶は普通とはかなり異なっていたが、シェイミは彼女を邪険にするようなことなく受け入れた。
(……初めて名前を呼んでいるのを聞いたな)
思い返してみれば、シェイミはそもそも人の事を呼びかけない。
誰かに用があるときはその人物に近づいて行って、用件だけを話していた筈だ。
自分も「あなた」としか呼ばれたことがなかったことを、レオは思い出した。
「パイン、信徒とは?」
だから今のようにシェイミがパインの名前を呼んだことは少し意外だった。
というよりもむしろ。
(俺だけあなただから、ちょっと敵視されてる?)
思えば他の人物に「あなた」と呼んでいたこともないような。
並び立てるライバルとしての呼称なのだろうか。
それはそれで嬉しいような、一方で少し寂しい気もするが、まさか今更名前で呼んで欲しいなどと言えるはずもなく、レオはもやもやした気持ちを内部に閉じ込めた。
「はい、お姉ちゃんたちは神様と女神様を崇める信徒です。
他にも信徒リベラがいます」
目線でレオとアリエスを指し示したパインに従って、シェイミは二人を順に見た。
話が明後日の方向に飛ぼうとしていると思ったであろうリベラが立ち上がり、シェイミに声をかける。
「シェイミさん、ごめんね。パインはずっとこうでさ。付き合ってくれると嬉し――」
「神様は分かった。でも女神は受け入れられない」
「ええ……」
間に入ろうとしたのにシェイミがノリノリでパインに返したために、リベラは肩透かしを食らったみたいになっていた。
レオはやや楽しそうな雰囲気を醸し出しているシェイミを見て気づいた。
(……これ、多分本心だ)
パインに合わせているというのではなく、心からそう思っている気がした。
シェイミからすれば歴代最強の勇者と言われていた自分が祀られるのは構わないが、アリエスは違うという事なのだろうか。
「むむむっ、シェイミさんは神様は一人しか認めない派閥ですか?
これは困りました。宗教最初の分裂の危機です……」
「自分は神様だけなら認めてもいい」
「そ、それは……し、しかし女神様を蔑ろにすることは……」
まっすぐにレオのみを神様としたいと伝えるシェイミと、頭を抱えて初の宗教分裂に悩むパイン。
いよいよもって場が混乱の極みに達してきて収拾がつかなくなる未来が近いことを、レオは悟ってしまった。
もうリベラは仲介することを諦めて遠くを見ている。彼女が匙を投げたのならどうしようもないだろう。
これから先、敬虔な信徒であるパインと神様しか認めないシェイミが訳の分からない論争を永遠に繰り広げそうである。
そう考えると頭が痛い。
「……女神でもいいですし信仰しなくても全然構わないですから、シェイミさんは宿の店主に一人追加の料金を払ってきてくださいね」
論争の火種になっている白銀の少女はまるで興味が無いようにそう告げて、荷物の整理に戻ってしまった。
その後も宿の店主に料金を支払ったシェイミがベッドの数ゆえにレオと一緒に寝ると言い出すという事件はあったものの、特に何事もなく夜は過ぎていった。
エリシアを救ったためか右目が悪夢を映すこともなく、レオは久しぶりの快眠で体を休めることが出来た。
また、シェイミのレオと一緒に寝たい要望に関してはアリエスが即却下したために、彼女はパインと共に同じベッドに入ったことをここに記しておく。
ちなみにアリエスは夜中にシェイミが何か悪さをしないか見張るために起きていて、翌日は眠そうにしていたが、当然レオは「寝付けなかったのかな」と思ったに過ぎなかった。
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