魔王討伐の勇者は国を追い出され、行く当てもない旅に出る ~最強最悪の呪いで全てを奪われた勇者が、大切なものを見つけて呪いを解くまで~

紗沙

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第4章 魔王の影を払う少女

第105話 漆黒の花弁

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 上空で静止し、ゆっくりと回転している黒い花。
 今まで見たこともない光景にその場にいる多くが目を見開いていた。
 アリエスですら、信じられないという目で空を見上げている。

 その中で、動いた者は二人。
 レオとシェイミはどちらも黒い花が何であるかは分からなかったけれど、それが敵であると認識した。
 敵と認識したならば壊さなければならない。
 それが二人がすぐにたどり着いた結論だった。

 シェイミは左手の鎌を勢いよく振り上げ、レオは右手の剣を下段から目にも止まらぬ速度で振り抜いた。
 地面から槍のように突き出す水柱と、斜め上方向に放出された全てを滅する力の奔流。
 それらは黒い花のところで完璧に交差した。

 下からシェイミの、斜め下からレオの攻撃がそれぞれ貫いた。
 どちらか片方でも形を保つことすら困難な星域装備を用いた文字通り領域外の攻撃。
 轟音を伴う2つの破壊が黒い花を塵も残さぬように飲み込み、滅ぼさんとする。

 やがてレオの放った奔流は細くなり、ほぼ同時に沸き上がった水柱も太さを失った。
 その後には何も残らないとレオもシェイミも疑っていなかった。

「「…………」」

 絶句。
 完全に消えた破壊の後。まるでそれをあざ笑うかのように、漆黒の花は天に在る。
 先ほどと何も変わらぬ様子で、ただ回っている。

(なんだ……あれは……)

 魔物ではない。人でもない。当然魔王でもない。
 レオの左目はその黒い花をただの黒い花として認識している。
 祝福も呪いも、あれにはありはしない。

 自分の持つ武器と同じ、別次元の存在だとでもいうのか。
 ありえない答えにレオが行きつきそうになった時。

「……呪い」

 ポツリ呟いたリベラの声をレオの耳が拾った。
 咄嗟に振り返れば、彼女は目を見開いたままだ。
 しかし先ほどの彼女の言葉には、確信めいた何かがあった。

「呪い……なのか?」

 そう尋ねれば、ゆっくりと黒い花から視線を外し、彼女は頷いた。

「そうだと……思う……」

「……そうか」

 そう告げ、レオは黒い花へと視線を戻す。
 未だに左目は何の反応も示さない。レオの祝福は、あれが呪いではないと告げている。
 けれどリベラは黒い花を呪いだと言った。それならば。

「アトってことか」

 彼女を信じる。それがレオの出した結論だった。
 それに黒い花が呪いならば色々と説明がつく。
 レオやシェイミの持つ星域装備はあらゆるものを斬り裂くが、呪いや祝福という概念を斬ることはできない。
 あの花が無傷なのではなく、そもそも攻撃として受け付けていないのならば、全く変化がないのも頷ける。

(……あの花は気になる、けれど)

 レオは左手に抱えるエリシアへと視線を落とす。
 その体はもう冷たくなっていて、壊れきっていることは明白だった。
 右手の剣を地面に突き刺し、膝をついてエリシアを横向きに地面にそっと下ろす。

「……レオ様」

 背後からアリエスの心配する声が聞こえた。
 そちらを向いてみれば、思わずと言った様子で彼女は駆け出し、レオの背に触れた。

「わたしは何もできません。ですが……」

 押し黙るアリエスに対して、レオは微笑みかける。
 彼女が傍に居てくれる。それだけでなんとかなる気がした。

「レオなら絶対できるよ」

「私も微力ながらお手伝いします!」

 さらに続けざまに背に触れる二つの手のひら。
 これからやることの道を示してくれた師ともいえるリベラと、少しでも助けになるためにレオに力を分け与えるパイン。

 アリエスを左に、リベラを右に、そしてパインを背後に。
 今まで護ってきた、レオにとって初めての「目に見える」救った人が力を貸してくれる。

 ふと右に立つシェイミから視線を感じ、そちらを見上げた。
 彼女は先ほどまでこちらを見ていた筈なのに、目が合うや否や黒い花へと目を逸らしてしまった。

「こっちは見とくから、早くして」

 ぶっきらぼうだが、その一言からは彼女の思いやりを感じることが出来た。

「……ああ」

 そう呟いて、レオは視線を落とす。
 地面に横たわるエリシアは安らかに眠りについていて、このまま消えてしまいそうだった。

 ――そんなこと、許せるか

 目を瞑り、息を吐き、レオは集中する。
 今までやったことのない、初めての試みだ。

 ――自分を壊す日が来るなんて、昔の自分が聞いたら驚くだろうな。

 内心で少しだけ笑い、レオはザ・ブロンドを解放した。
 さらに力を籠めれば見えはしないものの、刃が星空から宇宙に変化した事が分かった。
 切っ先を自分の胸に向け、もう一度息を吐く。

 同時、左に居るアリエスが痛いくらいに強く左手を掴むのを感じた。
 彼女だけではない。リベラからは息を呑む音を聞いたし、背中に感じるパインの力はどんどん強くなっている。

 ――頼むぞ

 長らく共にあった相棒に、ザ・ブロンドにそう告げ、暗くなった視界の中に光る球体を見つける。
 自分の事は自分が一番よくわかる。これは、命だ。
 そしてこれから、エリシアに分け与えるものだ。

 ――慎重に行け。ここで失敗したら、全てが水の泡だ

 自分に言い聞かせ、さらに集中し、レオは最適な好機を待つ。
 待って、待って、待ち続けて。

 そしてゆっくりと、相棒を自分の体に受け入れた。

 視界に映る光の球体が、不格好に斬れるのを見た。
 全体の4割ほどを綺麗に切り取られた球体を見て安心すると同時に、胸に痛みが広がる。
 剣を抜くと同時に、体を温かい光が包んだ。

 目を開ければ、視界を染める程の純白の輝き。
 これまで何度もかけてもらったアリエスの祝福が、十分すぎる程レオを包んでいた。
 超人的なレオの肉体はアリエスとパインの力を借りて急速に修復を開始し、傷を埋めていく。
 胸に赤い血痕だけを残して、先ほど自ら刺した傷が嘘のように消え去った。

「ありがとう、皆」

 そう礼を述べて、レオは次にエリシアの手を取る。
 人の手とは思えない程冷たい感触が、左の手のひらに伝わった。
 今自分の中には二つに分けた命がある。このうち一つを、彼女に分け与える。

「さっきやったことを思い出して。ここまで来たんだから、出来るよ」

 右耳に響くリベラの言葉にレオは頷き、新しく作成した祝福を行使する。
 命を他者に分け与える祝福。
 リベラから鍵を得て、そして道筋を示してもらい作り上げたレオのみが持つ祝福。

 これからやることは、先ほどと同じく今までしたことのないこと。
 けれど命を切り分ける時と違い、レオの中には不安も緊張もなかった。
 リベラと共に作り上げたこの祝福が失敗するとは、到底思えなかったのだ。

 理由はないし確信もない。
 けれどこれだけは上手くいくと、なぜかレオはそう思えた。

 ――俺の命を、エリシアに

 世界でも、目に見える誰かでもなく、エリシアを救うと強く願う。
 そんな願いに祝福が応えてくれたような、そんな気がした。
 腕を伝って、命がエリシアの中に流れていくことを感じる。
 壊れきっていたエリシアが再び蘇ることを、生きてくれることを確信した。

「……震えてる」

 不意に聞こえた言葉に空を見上げてみれば、黒い花が揺れていた。
 まるでこれから良くないことを起こすかのように、不気味な静けさはもう終わりと言わんばかりに。

 ――大丈夫だ。もうエリシアは命を――

「……ぐっ」

 エリシアは命を再び灯してくれる。そう思った直後。
 今まで感じたことのない程強烈な感覚がレオを襲った。
 自分の中にあった力が、祝福が、ごっそりとそぎ落とされていく。

 まだ与えきれていないのに、レオに強烈な違和と痛みと喪失感を与えてくる。
 与えるのを辞めたいと思ってしまうくらいには、それは凄烈だった。
 それこそ、右目の呪いと肩を並べる程に。

 左手を、離しそうになる。
 とても冷たいエリシアの手なのに、まるで痛みを感じるように一つの指が離れる。

 --ダメだ

 離れそうになった手に力を入れて、強く強く握る。
 ここで離したら全てが無駄になる。ここまで来たら絶対に離すな。
 そう言い聞かせたとき。

 大地が震え、黒い花が動きを見せたのを感じた。
 地に横たわるエリシアを見ていても分かるくらい、紫色の光を発しているらしい。
 けれど、そちらを見る余裕などありはしない。

 視界に映る黒い靄が邪魔で邪魔で仕方がない。
 まるでレオを誘惑するかのように、辞めろ辞めろと幻聴さえ聞こえてくるありさまだ。
 触れてくれているアリエス達が居なければ、そちらに意識を割けずに離していたかもしれない。

 ――やり切れ、早く

 力を込めて命をエリシアに押し付けるように流し込む。
 そうすればするほど、幻聴は大きくなっていく。
 数えきれないほどの負の言葉が頭を巡り、痛みすら覚え始める。

 視界が黒く染まり、何も見えなくなる。
 さらに言葉が大きくなり、レオ自身の心を塗りつぶしていく。

 ――あれ?

 果てしない闇と暗黒の中で、レオは不意に思った。

 ――俺、なんでこんなことしてるんだっけ?

 思ってしまった。
 気づけばあれだけぬくもりをくれた温かさは消え、レオは世界にただ一人だった。

 なぜ自分はこんなつらい思いをしているのか。
 なぜ自分は一人でこんな業を負わねばならないのか。
 なぜ自分がやらなければいけないのか。

 寒い、冷たい、苦しい、痛い。
 でも、しないといけない。
 しないといけない? 痛いのに? 苦しいのに? なんで?

 そう、決めたから。
 なら、辞めればいい。決めたのが自分なら、辞めるのも自分だ。
 辞めることを、決めればいい。

 ――そうだよ。何のために決めたのかも覚えてないんだ

 だから、もう辞めてもいいじゃないか。
 手を離すだけでいいんだ。それが誰の手かなんて考える必要はない。
 離せば、それでいい。

 目に見える誰かを救うなんて、辞めてしまえ。
 指を離してしまえ。手を離してしまえ。
 全部全部、辞めてしまえ。

 ――あぁ、そうだ。離そう。それで、終われる

 レオは、手を離した。辞めることを、選んでしまった。

 ――

 離れなかった。

 ――

 レオは手を離している。けれど、手は離れない。
 手を握っていた誰かが、強く掴んでいるから。

 ――あ

 闇に包まれた視界が一部のみ開け、それが目に映る。
 エリシアの手にしっかりと握られた、自分の左手が。

 ――ああ、そうだ

 思い出す。
 自分がなぜこんなことをしていたのか。
 いや、なぜこれをしなければならなかったのか。

 ――こんなに生きたいって、願ってるじゃないか

 辛いし、苦しいし、痛いし寒い。
 けれど、かつてとは違い目に見える人が救いを求めている。
 エリシアが、生きたいと願っている。

 ――なら!

 左手を強く握り、レオは決意を新たにする。
 あれまで暗かった視界は開け、今は背中のぬくもりもしっかりと感じられる。
 分け与えるべき命を、全てエリシアに注ぎ込む。
 今なら、注ぎ込める。

 腕を伝った命が完全にエリシアの中へと入り切る。
 彼女の体が金色に光り輝き、生命の火を灯したことを知らせるかのように温かくなる。
 生きて、くれている。

 ――もう、大丈夫だ。

 息を吐き、レオは横たわるエリシアを見つめる。
 先ほどまで氷のように冷たかった彼女はもういない。
 アトとの戦いで斬り飛ばしてしまった手首から先も、命を分け与えた影響なのか嘘のように元に戻っていた。

 ――やりきった

 左手を離し、エリシアをアリエス達に任せる。
 心配そうに見ていた彼女達だが、レオを見て頷いてくれた。
 少なくともエリシアの目が覚めるまでは、彼女達に任せよう。

 当初のやるべき予定を全て無事に終わらせたレオは立ち上がり、地面に突き刺した剣を手に取る。
 それを抜き、勢いよく振り払った。

「…………」

 さっきは自分の弱さが招いた点もあるが、間違いなく第三者が介入していた。
 そしてこの場でそんなことができるのは一人、いや一つしかない。

 はるか上空で回転し、黒い花びらをまき散らす漆黒の華。
 それを、レオはこれまで以上に鋭く睨みつけた。

 あれをどうすれば壊せるのかは分からない。
 けれど、確実に壊す。壊してやる。そう心に決めたとき。

「……は?」

 思わずレオは声に出してしまった。
 大量の花びらをまき散らす漆黒の華は当初見た時よりも小さくなっていた。
 それがやがてどうなるのか、レオは気づいてしまった。

 唖然とするレオが見上げる先で漆黒の華はその全てを黒い花びらへと変え、跡形もなく消え去った。
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