55 / 114
第3章 神に愛された女教皇
第55話 教会本部に潜入
しおりを挟む
ザウラク教皇の邸宅を出た後に、アリエスの提案でレオ達は人気のない路地裏に来ていた。
色々と情報を得たこともあり、三人で共有して今後の流れを話し合おうとのことだった。
「驚いたよ。アリエスはサマカ枢機卿の背後に誰か居ると思っていたんだね」
先ほどのザウラクとの会話で、彼女はサマカ枢機卿の単独犯ではないことに気づいているようだった。
感嘆の意味を込めて彼女を見ると、民家の壁に背を預けたアリエスは首を横に振った。
「というよりも、不思議だったんです。
仮にサマカ枢機卿がルシャ教皇を殺害するとして、彼に何の得があるのかと。
彼はルシャ教皇に従う枢機卿です。そんな彼がルシャ教皇を殺害したところでメリットはありません」
「ルシャ教皇に代われるわけでもないしね」
リベラも同じような事を思っていたのか、アリエスの後に続けて発言した。
どうやら、レオ以外の二人はなんとなく気づいていたらしい。
二人が頼りになるなと改めて再認識しながら、レオは言葉を発する。
「そうすると、やっぱりガーランド教皇? っていうのが背後に居るのか……」
「ザウラク教皇の言うことをそのまま受け入れるならそうだと思います。
ただレオ様、いくつか勇者について質問があるのですが、勇者は街の権力者と結びつくものなのでしょうか?」
急なアリエスからの質問に内心で不思議に思うものの、レオは答える。
「俺は街に配属されたわけじゃなかったから聞いた話になるけど、そうらしいよ。
ただ所属はデネブラ王国だから、そこまで強い結びつきじゃないと思うけど」
「……なるほど」
レオの答えに、アリエスは右手で拳を作り、それを唇に当てて考え始める。
「アリエスは、勇者が気になるの?」
リベラの質問にアリエスは顔を上げる。
「……勇者はレオ様に教会に気を付けろと言いました。
それが自分達とつながりがあるザウラク教皇を除いた教会なのか、それとも彼すら入れた教会なのかどっちなんだろうと思いまして」
「まあ、確かに教皇の裏の顔を見ちゃうとね……」
リベラはザウラク教皇の言動に失望したのか、溜息を吐いている。
彼女は教会を少し持ち上げていた節があるので、余計に失望も大きいのだろう。
「ザウラク教皇は教会の腐敗を正すためといったことを言っていましたが、どう考えてもあれはガーランド教皇を蹴落として自分の派閥の権威を高めるのが目的でしょうからね」
「枢機卿の数を見ても、ガーランド教皇の派閥が大きくなりすぎちゃうってことなのかな」
リベラの言ったことがよく分からず、レオは内心で首を傾げる。
表情には出さなかったものの、アリエスは彼の心の機微を読み取ったようだった。
「レオ様、教皇は全部で3人です。そして枢機卿は13人居ます。
ルシャ教皇の所に3人、そしてザウラク教皇の所にも3人。
ならガーランド教皇の所には……」
「……7人ってことか」
アリエスの言いたいことが分かり、レオは残りの枢機卿の人数を口にした。
それだけの数なら、ルシャやザウラクの二倍以上だ。
もしこの状態でサマカがガーランド教皇派閥に移動すると、教皇間の格差はさらに広がるだろう。
「大きな組織は大変ですね」
心底うんざりした様子でアリエスは呟く。
偉い人たちは偉い人たちで不毛な争いをしているな、とでも思っているのだろう。
「ですが、これらもまたルシャ教皇が亡くなってしまう原因になる可能性もあります」
「……で? どうするの?
もうサマカ枢機卿が黒なのは確定みたいな感じだけど、一応見張ってみる?」
教会内の派閥問題を置いておくにしても、サマカ枢機卿が怪しいことには変わりない。
彼は間違いなく昨夜の襲撃には関わっているだろう。
「……もしサマカ枢機卿が誰かに会っていれば、そこから何か分かるかもしれない」
レオの言葉に、アリエスは同意するようにしっかりと頷いた。
「はい、彼の背後に本当にガーランド教皇が居るのかが分かるだけでも動きやすくなるでしょう。
ルシャ教皇が亡くなるまではまだ時間があります。
それまでに十分な情報を集め、対処しましょう」
「よし、じゃあ教会に潜入してサマカ枢機卿を探し、監視する。それでいいか?」
頷くアリエスとリベラを見て、レオは姿を隠す祝福を使用した。
×××
レーヴァティの街の教会は総本山と言われるだけあってかなり大きく、広い。
それゆえに侵入もしやすいが、逆にサマカ枢機卿を探すのは時間がかかるかもしれない。
時刻は既に夕方になっていたが、それでも今日のうちに場所のめどは立てて置きたかった。
三人は教会の裏手に回り、裏口を見つける。
その間、アリエスはしきりに何かを探しているようだったが、レオが聞いても答えることはなかった。
残念ながら、乗り越えなければならない高い塀は教会の裏口付近には存在しなかった。
「入るぞ」
中の様子から誰も居ない事を確認したレオはゆっくりと扉を開き、入る。
どうやら書庫の一室らしく、教会や宗教に関する本や書類が溢れていた。
室内に人の気配はないし、部屋の外の廊下にもない。
「サマカ枢機卿の部屋があるとしたら、東側の塔だと思われます。
最上階はルシャ教皇の私室だと思いますが、そのいくつか下の階にはあるかと」
アリエスの言葉に、レオは考える。
レオ達三人は裏口から入った。教会の低層階は共通階層なのだが、上昇階は三つに分かれている。
そのうち東側がルシャ教皇の塔だとアリエスは事前に誰かから聞いてくれていたようだ。
書庫の部屋を出て、レオ達は東の塔へと向かう。
祝福は完全に姿を消しているし、会話の声や足音などが外部に漏れることもない。
ただし、扉の開閉などは外からでも見えるので、細心の注意を払いつつ進んだ。
人の多い低階層をあっさりと突破し、階段を上り、東側の塔に足を踏み入れる。
ふとその時、上階から降りてくる足音を聞いてレオ達は咄嗟に階段脇に避けた。
「神聖玉作成の儀式ですが、私の方でも十分な人数を用意できそうです」
「そうですか。ララさんと私の用意した人員で問題はなさそうですね」
階段を下りてきたのはファイとララの2人だった。
そんな二人は会話をしながらレオの横を通り過ぎる。
神聖玉というものについて話していたものの、レオには聞き覚えがない。
下へ通りていく二人を眺め、十分距離を取ったところで、もう端に避ける必要もなくなり、壁から背を離す。
「神聖玉?」
「確か、各国に提供される魔物避けの結界装置だったような……」
「そうだね、ただ効力はそこまで強くないみたいで、冒険者や勇者の貢献の方が大きいらしいよ」
アリエスを補足したリベラの言葉で、レオは思い出す。
そういえば、そんなことを王国で耳にした気がする。
ただ王国は勇者が多数在籍しているので、あまり頼ってはいないようだった。
「とりあえず、今はサマカ枢機卿に集中しよう」
アリエスとリベラも頷き、レオ達は再び階段を上り始める。
ある程度登ったところで、レオは上に向けて気配を探る祝福を放った。
気配は2つ。最上階に1つとレオ達のすぐ上の階に1つ。
先ほどファイとララとすれ違ったので、おそらく最上階の気配はルシャのもので、一つもう一つがサマカのものだろう。
「多分、この一つ上の階にサマカ枢機卿が居るはずだ」
「了解しました」
アリエスと会話を交わし、レオ達は目的の階まで上がる。
その階は、扉が三つしかない階層だった。
おそらくは執務室と私室と、倉庫のような感じだろうか。
「ザウラク教皇は邸宅を持っていたが、サマカ枢機卿は違うのか?」
「彼はこの教会で暮らしているそうなので、間違いないと思います。
レオ様、サマカ枢機卿の方は?」
「……部屋の中に居る。おそらく仕事中なんだろう」
気配を見抜くレオの祝福が、座った人型の光を映し出している。
おそらく正面の扉から繋がる部屋が、彼の仕事部屋なのだろう。
「さすがに部屋の中までは入れませんから、今日はここで見張りましょう。
彼の事です、おそらく背後の人物と部屋で落ち合うか、あるいはどこかに出かけるはずです」
「手紙でやり取りしている可能性は?」
「ありえますが、いずれにせよ誰かに渡すはずです。
ルシャ教皇と一緒に居る昼間ではなく、比較的一人になりやすい夜や深夜に行動を起こすはずです。
レオ様の右目の事を考えると、深夜には宿屋に戻りたいところですが……」
「そうだな。適当なタイミングで扉に対して仕掛けをしよう。」
レオは誰かの死ぬ光景を見た後に、夜中から朝方にかけて必ずその光景を見る。
その時間に眠りについていないと、寝ろと言わんばかりに呪いによる激痛が働いてしまう。
そのことをアリエスも知っているからこそ、控えめに主張したのだろう。
だから夜中まで見張り、その後は仕掛けに任せることにした。
サマカ枢機卿に動きがあればそれで良し、なければ動きを感知するのみ。
レオの提案に対してアリエスとリベラは全面的に賛成であるので、文句は出なかった。
そして三人は何も言わずに、じっと時を待つ。
しばらくして仕事を終えたサマカ枢機卿が執務室から出てきて、そのまま隣の私室へと入ってしまった。
気配を探るに、どうやら本を読んでいるようだ。何かを書いているような様子もない。
結局この後、サマカ枢機卿は私室から出ることなく、就寝した。
途中、ファイも階段を上り上の階へと上がっていったが、ララの姿は見なかった。
おそらく上階にはルシャとファイの私室があり、ララの部屋は下の階層にあるのだろう。
「よし、仕掛けをして宿屋に戻――」
三つの扉に対して、開けばレオが感じ取れる仕掛けをしようと提案したとき。
レオの左目が、私室でベッドから起き上がるサマカの姿を捉えた。
色々と情報を得たこともあり、三人で共有して今後の流れを話し合おうとのことだった。
「驚いたよ。アリエスはサマカ枢機卿の背後に誰か居ると思っていたんだね」
先ほどのザウラクとの会話で、彼女はサマカ枢機卿の単独犯ではないことに気づいているようだった。
感嘆の意味を込めて彼女を見ると、民家の壁に背を預けたアリエスは首を横に振った。
「というよりも、不思議だったんです。
仮にサマカ枢機卿がルシャ教皇を殺害するとして、彼に何の得があるのかと。
彼はルシャ教皇に従う枢機卿です。そんな彼がルシャ教皇を殺害したところでメリットはありません」
「ルシャ教皇に代われるわけでもないしね」
リベラも同じような事を思っていたのか、アリエスの後に続けて発言した。
どうやら、レオ以外の二人はなんとなく気づいていたらしい。
二人が頼りになるなと改めて再認識しながら、レオは言葉を発する。
「そうすると、やっぱりガーランド教皇? っていうのが背後に居るのか……」
「ザウラク教皇の言うことをそのまま受け入れるならそうだと思います。
ただレオ様、いくつか勇者について質問があるのですが、勇者は街の権力者と結びつくものなのでしょうか?」
急なアリエスからの質問に内心で不思議に思うものの、レオは答える。
「俺は街に配属されたわけじゃなかったから聞いた話になるけど、そうらしいよ。
ただ所属はデネブラ王国だから、そこまで強い結びつきじゃないと思うけど」
「……なるほど」
レオの答えに、アリエスは右手で拳を作り、それを唇に当てて考え始める。
「アリエスは、勇者が気になるの?」
リベラの質問にアリエスは顔を上げる。
「……勇者はレオ様に教会に気を付けろと言いました。
それが自分達とつながりがあるザウラク教皇を除いた教会なのか、それとも彼すら入れた教会なのかどっちなんだろうと思いまして」
「まあ、確かに教皇の裏の顔を見ちゃうとね……」
リベラはザウラク教皇の言動に失望したのか、溜息を吐いている。
彼女は教会を少し持ち上げていた節があるので、余計に失望も大きいのだろう。
「ザウラク教皇は教会の腐敗を正すためといったことを言っていましたが、どう考えてもあれはガーランド教皇を蹴落として自分の派閥の権威を高めるのが目的でしょうからね」
「枢機卿の数を見ても、ガーランド教皇の派閥が大きくなりすぎちゃうってことなのかな」
リベラの言ったことがよく分からず、レオは内心で首を傾げる。
表情には出さなかったものの、アリエスは彼の心の機微を読み取ったようだった。
「レオ様、教皇は全部で3人です。そして枢機卿は13人居ます。
ルシャ教皇の所に3人、そしてザウラク教皇の所にも3人。
ならガーランド教皇の所には……」
「……7人ってことか」
アリエスの言いたいことが分かり、レオは残りの枢機卿の人数を口にした。
それだけの数なら、ルシャやザウラクの二倍以上だ。
もしこの状態でサマカがガーランド教皇派閥に移動すると、教皇間の格差はさらに広がるだろう。
「大きな組織は大変ですね」
心底うんざりした様子でアリエスは呟く。
偉い人たちは偉い人たちで不毛な争いをしているな、とでも思っているのだろう。
「ですが、これらもまたルシャ教皇が亡くなってしまう原因になる可能性もあります」
「……で? どうするの?
もうサマカ枢機卿が黒なのは確定みたいな感じだけど、一応見張ってみる?」
教会内の派閥問題を置いておくにしても、サマカ枢機卿が怪しいことには変わりない。
彼は間違いなく昨夜の襲撃には関わっているだろう。
「……もしサマカ枢機卿が誰かに会っていれば、そこから何か分かるかもしれない」
レオの言葉に、アリエスは同意するようにしっかりと頷いた。
「はい、彼の背後に本当にガーランド教皇が居るのかが分かるだけでも動きやすくなるでしょう。
ルシャ教皇が亡くなるまではまだ時間があります。
それまでに十分な情報を集め、対処しましょう」
「よし、じゃあ教会に潜入してサマカ枢機卿を探し、監視する。それでいいか?」
頷くアリエスとリベラを見て、レオは姿を隠す祝福を使用した。
×××
レーヴァティの街の教会は総本山と言われるだけあってかなり大きく、広い。
それゆえに侵入もしやすいが、逆にサマカ枢機卿を探すのは時間がかかるかもしれない。
時刻は既に夕方になっていたが、それでも今日のうちに場所のめどは立てて置きたかった。
三人は教会の裏手に回り、裏口を見つける。
その間、アリエスはしきりに何かを探しているようだったが、レオが聞いても答えることはなかった。
残念ながら、乗り越えなければならない高い塀は教会の裏口付近には存在しなかった。
「入るぞ」
中の様子から誰も居ない事を確認したレオはゆっくりと扉を開き、入る。
どうやら書庫の一室らしく、教会や宗教に関する本や書類が溢れていた。
室内に人の気配はないし、部屋の外の廊下にもない。
「サマカ枢機卿の部屋があるとしたら、東側の塔だと思われます。
最上階はルシャ教皇の私室だと思いますが、そのいくつか下の階にはあるかと」
アリエスの言葉に、レオは考える。
レオ達三人は裏口から入った。教会の低層階は共通階層なのだが、上昇階は三つに分かれている。
そのうち東側がルシャ教皇の塔だとアリエスは事前に誰かから聞いてくれていたようだ。
書庫の部屋を出て、レオ達は東の塔へと向かう。
祝福は完全に姿を消しているし、会話の声や足音などが外部に漏れることもない。
ただし、扉の開閉などは外からでも見えるので、細心の注意を払いつつ進んだ。
人の多い低階層をあっさりと突破し、階段を上り、東側の塔に足を踏み入れる。
ふとその時、上階から降りてくる足音を聞いてレオ達は咄嗟に階段脇に避けた。
「神聖玉作成の儀式ですが、私の方でも十分な人数を用意できそうです」
「そうですか。ララさんと私の用意した人員で問題はなさそうですね」
階段を下りてきたのはファイとララの2人だった。
そんな二人は会話をしながらレオの横を通り過ぎる。
神聖玉というものについて話していたものの、レオには聞き覚えがない。
下へ通りていく二人を眺め、十分距離を取ったところで、もう端に避ける必要もなくなり、壁から背を離す。
「神聖玉?」
「確か、各国に提供される魔物避けの結界装置だったような……」
「そうだね、ただ効力はそこまで強くないみたいで、冒険者や勇者の貢献の方が大きいらしいよ」
アリエスを補足したリベラの言葉で、レオは思い出す。
そういえば、そんなことを王国で耳にした気がする。
ただ王国は勇者が多数在籍しているので、あまり頼ってはいないようだった。
「とりあえず、今はサマカ枢機卿に集中しよう」
アリエスとリベラも頷き、レオ達は再び階段を上り始める。
ある程度登ったところで、レオは上に向けて気配を探る祝福を放った。
気配は2つ。最上階に1つとレオ達のすぐ上の階に1つ。
先ほどファイとララとすれ違ったので、おそらく最上階の気配はルシャのもので、一つもう一つがサマカのものだろう。
「多分、この一つ上の階にサマカ枢機卿が居るはずだ」
「了解しました」
アリエスと会話を交わし、レオ達は目的の階まで上がる。
その階は、扉が三つしかない階層だった。
おそらくは執務室と私室と、倉庫のような感じだろうか。
「ザウラク教皇は邸宅を持っていたが、サマカ枢機卿は違うのか?」
「彼はこの教会で暮らしているそうなので、間違いないと思います。
レオ様、サマカ枢機卿の方は?」
「……部屋の中に居る。おそらく仕事中なんだろう」
気配を見抜くレオの祝福が、座った人型の光を映し出している。
おそらく正面の扉から繋がる部屋が、彼の仕事部屋なのだろう。
「さすがに部屋の中までは入れませんから、今日はここで見張りましょう。
彼の事です、おそらく背後の人物と部屋で落ち合うか、あるいはどこかに出かけるはずです」
「手紙でやり取りしている可能性は?」
「ありえますが、いずれにせよ誰かに渡すはずです。
ルシャ教皇と一緒に居る昼間ではなく、比較的一人になりやすい夜や深夜に行動を起こすはずです。
レオ様の右目の事を考えると、深夜には宿屋に戻りたいところですが……」
「そうだな。適当なタイミングで扉に対して仕掛けをしよう。」
レオは誰かの死ぬ光景を見た後に、夜中から朝方にかけて必ずその光景を見る。
その時間に眠りについていないと、寝ろと言わんばかりに呪いによる激痛が働いてしまう。
そのことをアリエスも知っているからこそ、控えめに主張したのだろう。
だから夜中まで見張り、その後は仕掛けに任せることにした。
サマカ枢機卿に動きがあればそれで良し、なければ動きを感知するのみ。
レオの提案に対してアリエスとリベラは全面的に賛成であるので、文句は出なかった。
そして三人は何も言わずに、じっと時を待つ。
しばらくして仕事を終えたサマカ枢機卿が執務室から出てきて、そのまま隣の私室へと入ってしまった。
気配を探るに、どうやら本を読んでいるようだ。何かを書いているような様子もない。
結局この後、サマカ枢機卿は私室から出ることなく、就寝した。
途中、ファイも階段を上り上の階へと上がっていったが、ララの姿は見なかった。
おそらく上階にはルシャとファイの私室があり、ララの部屋は下の階層にあるのだろう。
「よし、仕掛けをして宿屋に戻――」
三つの扉に対して、開けばレオが感じ取れる仕掛けをしようと提案したとき。
レオの左目が、私室でベッドから起き上がるサマカの姿を捉えた。
1
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています
もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。
使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる