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第3章 神に愛された女教皇
第55話 教会本部に潜入
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ザウラク教皇の邸宅を出た後に、アリエスの提案でレオ達は人気のない路地裏に来ていた。
色々と情報を得たこともあり、三人で共有して今後の流れを話し合おうとのことだった。
「驚いたよ。アリエスはサマカ枢機卿の背後に誰か居ると思っていたんだね」
先ほどのザウラクとの会話で、彼女はサマカ枢機卿の単独犯ではないことに気づいているようだった。
感嘆の意味を込めて彼女を見ると、民家の壁に背を預けたアリエスは首を横に振った。
「というよりも、不思議だったんです。
仮にサマカ枢機卿がルシャ教皇を殺害するとして、彼に何の得があるのかと。
彼はルシャ教皇に従う枢機卿です。そんな彼がルシャ教皇を殺害したところでメリットはありません」
「ルシャ教皇に代われるわけでもないしね」
リベラも同じような事を思っていたのか、アリエスの後に続けて発言した。
どうやら、レオ以外の二人はなんとなく気づいていたらしい。
二人が頼りになるなと改めて再認識しながら、レオは言葉を発する。
「そうすると、やっぱりガーランド教皇? っていうのが背後に居るのか……」
「ザウラク教皇の言うことをそのまま受け入れるならそうだと思います。
ただレオ様、いくつか勇者について質問があるのですが、勇者は街の権力者と結びつくものなのでしょうか?」
急なアリエスからの質問に内心で不思議に思うものの、レオは答える。
「俺は街に配属されたわけじゃなかったから聞いた話になるけど、そうらしいよ。
ただ所属はデネブラ王国だから、そこまで強い結びつきじゃないと思うけど」
「……なるほど」
レオの答えに、アリエスは右手で拳を作り、それを唇に当てて考え始める。
「アリエスは、勇者が気になるの?」
リベラの質問にアリエスは顔を上げる。
「……勇者はレオ様に教会に気を付けろと言いました。
それが自分達とつながりがあるザウラク教皇を除いた教会なのか、それとも彼すら入れた教会なのかどっちなんだろうと思いまして」
「まあ、確かに教皇の裏の顔を見ちゃうとね……」
リベラはザウラク教皇の言動に失望したのか、溜息を吐いている。
彼女は教会を少し持ち上げていた節があるので、余計に失望も大きいのだろう。
「ザウラク教皇は教会の腐敗を正すためといったことを言っていましたが、どう考えてもあれはガーランド教皇を蹴落として自分の派閥の権威を高めるのが目的でしょうからね」
「枢機卿の数を見ても、ガーランド教皇の派閥が大きくなりすぎちゃうってことなのかな」
リベラの言ったことがよく分からず、レオは内心で首を傾げる。
表情には出さなかったものの、アリエスは彼の心の機微を読み取ったようだった。
「レオ様、教皇は全部で3人です。そして枢機卿は13人居ます。
ルシャ教皇の所に3人、そしてザウラク教皇の所にも3人。
ならガーランド教皇の所には……」
「……7人ってことか」
アリエスの言いたいことが分かり、レオは残りの枢機卿の人数を口にした。
それだけの数なら、ルシャやザウラクの二倍以上だ。
もしこの状態でサマカがガーランド教皇派閥に移動すると、教皇間の格差はさらに広がるだろう。
「大きな組織は大変ですね」
心底うんざりした様子でアリエスは呟く。
偉い人たちは偉い人たちで不毛な争いをしているな、とでも思っているのだろう。
「ですが、これらもまたルシャ教皇が亡くなってしまう原因になる可能性もあります」
「……で? どうするの?
もうサマカ枢機卿が黒なのは確定みたいな感じだけど、一応見張ってみる?」
教会内の派閥問題を置いておくにしても、サマカ枢機卿が怪しいことには変わりない。
彼は間違いなく昨夜の襲撃には関わっているだろう。
「……もしサマカ枢機卿が誰かに会っていれば、そこから何か分かるかもしれない」
レオの言葉に、アリエスは同意するようにしっかりと頷いた。
「はい、彼の背後に本当にガーランド教皇が居るのかが分かるだけでも動きやすくなるでしょう。
ルシャ教皇が亡くなるまではまだ時間があります。
それまでに十分な情報を集め、対処しましょう」
「よし、じゃあ教会に潜入してサマカ枢機卿を探し、監視する。それでいいか?」
頷くアリエスとリベラを見て、レオは姿を隠す祝福を使用した。
×××
レーヴァティの街の教会は総本山と言われるだけあってかなり大きく、広い。
それゆえに侵入もしやすいが、逆にサマカ枢機卿を探すのは時間がかかるかもしれない。
時刻は既に夕方になっていたが、それでも今日のうちに場所のめどは立てて置きたかった。
三人は教会の裏手に回り、裏口を見つける。
その間、アリエスはしきりに何かを探しているようだったが、レオが聞いても答えることはなかった。
残念ながら、乗り越えなければならない高い塀は教会の裏口付近には存在しなかった。
「入るぞ」
中の様子から誰も居ない事を確認したレオはゆっくりと扉を開き、入る。
どうやら書庫の一室らしく、教会や宗教に関する本や書類が溢れていた。
室内に人の気配はないし、部屋の外の廊下にもない。
「サマカ枢機卿の部屋があるとしたら、東側の塔だと思われます。
最上階はルシャ教皇の私室だと思いますが、そのいくつか下の階にはあるかと」
アリエスの言葉に、レオは考える。
レオ達三人は裏口から入った。教会の低層階は共通階層なのだが、上昇階は三つに分かれている。
そのうち東側がルシャ教皇の塔だとアリエスは事前に誰かから聞いてくれていたようだ。
書庫の部屋を出て、レオ達は東の塔へと向かう。
祝福は完全に姿を消しているし、会話の声や足音などが外部に漏れることもない。
ただし、扉の開閉などは外からでも見えるので、細心の注意を払いつつ進んだ。
人の多い低階層をあっさりと突破し、階段を上り、東側の塔に足を踏み入れる。
ふとその時、上階から降りてくる足音を聞いてレオ達は咄嗟に階段脇に避けた。
「神聖玉作成の儀式ですが、私の方でも十分な人数を用意できそうです」
「そうですか。ララさんと私の用意した人員で問題はなさそうですね」
階段を下りてきたのはファイとララの2人だった。
そんな二人は会話をしながらレオの横を通り過ぎる。
神聖玉というものについて話していたものの、レオには聞き覚えがない。
下へ通りていく二人を眺め、十分距離を取ったところで、もう端に避ける必要もなくなり、壁から背を離す。
「神聖玉?」
「確か、各国に提供される魔物避けの結界装置だったような……」
「そうだね、ただ効力はそこまで強くないみたいで、冒険者や勇者の貢献の方が大きいらしいよ」
アリエスを補足したリベラの言葉で、レオは思い出す。
そういえば、そんなことを王国で耳にした気がする。
ただ王国は勇者が多数在籍しているので、あまり頼ってはいないようだった。
「とりあえず、今はサマカ枢機卿に集中しよう」
アリエスとリベラも頷き、レオ達は再び階段を上り始める。
ある程度登ったところで、レオは上に向けて気配を探る祝福を放った。
気配は2つ。最上階に1つとレオ達のすぐ上の階に1つ。
先ほどファイとララとすれ違ったので、おそらく最上階の気配はルシャのもので、一つもう一つがサマカのものだろう。
「多分、この一つ上の階にサマカ枢機卿が居るはずだ」
「了解しました」
アリエスと会話を交わし、レオ達は目的の階まで上がる。
その階は、扉が三つしかない階層だった。
おそらくは執務室と私室と、倉庫のような感じだろうか。
「ザウラク教皇は邸宅を持っていたが、サマカ枢機卿は違うのか?」
「彼はこの教会で暮らしているそうなので、間違いないと思います。
レオ様、サマカ枢機卿の方は?」
「……部屋の中に居る。おそらく仕事中なんだろう」
気配を見抜くレオの祝福が、座った人型の光を映し出している。
おそらく正面の扉から繋がる部屋が、彼の仕事部屋なのだろう。
「さすがに部屋の中までは入れませんから、今日はここで見張りましょう。
彼の事です、おそらく背後の人物と部屋で落ち合うか、あるいはどこかに出かけるはずです」
「手紙でやり取りしている可能性は?」
「ありえますが、いずれにせよ誰かに渡すはずです。
ルシャ教皇と一緒に居る昼間ではなく、比較的一人になりやすい夜や深夜に行動を起こすはずです。
レオ様の右目の事を考えると、深夜には宿屋に戻りたいところですが……」
「そうだな。適当なタイミングで扉に対して仕掛けをしよう。」
レオは誰かの死ぬ光景を見た後に、夜中から朝方にかけて必ずその光景を見る。
その時間に眠りについていないと、寝ろと言わんばかりに呪いによる激痛が働いてしまう。
そのことをアリエスも知っているからこそ、控えめに主張したのだろう。
だから夜中まで見張り、その後は仕掛けに任せることにした。
サマカ枢機卿に動きがあればそれで良し、なければ動きを感知するのみ。
レオの提案に対してアリエスとリベラは全面的に賛成であるので、文句は出なかった。
そして三人は何も言わずに、じっと時を待つ。
しばらくして仕事を終えたサマカ枢機卿が執務室から出てきて、そのまま隣の私室へと入ってしまった。
気配を探るに、どうやら本を読んでいるようだ。何かを書いているような様子もない。
結局この後、サマカ枢機卿は私室から出ることなく、就寝した。
途中、ファイも階段を上り上の階へと上がっていったが、ララの姿は見なかった。
おそらく上階にはルシャとファイの私室があり、ララの部屋は下の階層にあるのだろう。
「よし、仕掛けをして宿屋に戻――」
三つの扉に対して、開けばレオが感じ取れる仕掛けをしようと提案したとき。
レオの左目が、私室でベッドから起き上がるサマカの姿を捉えた。
色々と情報を得たこともあり、三人で共有して今後の流れを話し合おうとのことだった。
「驚いたよ。アリエスはサマカ枢機卿の背後に誰か居ると思っていたんだね」
先ほどのザウラクとの会話で、彼女はサマカ枢機卿の単独犯ではないことに気づいているようだった。
感嘆の意味を込めて彼女を見ると、民家の壁に背を預けたアリエスは首を横に振った。
「というよりも、不思議だったんです。
仮にサマカ枢機卿がルシャ教皇を殺害するとして、彼に何の得があるのかと。
彼はルシャ教皇に従う枢機卿です。そんな彼がルシャ教皇を殺害したところでメリットはありません」
「ルシャ教皇に代われるわけでもないしね」
リベラも同じような事を思っていたのか、アリエスの後に続けて発言した。
どうやら、レオ以外の二人はなんとなく気づいていたらしい。
二人が頼りになるなと改めて再認識しながら、レオは言葉を発する。
「そうすると、やっぱりガーランド教皇? っていうのが背後に居るのか……」
「ザウラク教皇の言うことをそのまま受け入れるならそうだと思います。
ただレオ様、いくつか勇者について質問があるのですが、勇者は街の権力者と結びつくものなのでしょうか?」
急なアリエスからの質問に内心で不思議に思うものの、レオは答える。
「俺は街に配属されたわけじゃなかったから聞いた話になるけど、そうらしいよ。
ただ所属はデネブラ王国だから、そこまで強い結びつきじゃないと思うけど」
「……なるほど」
レオの答えに、アリエスは右手で拳を作り、それを唇に当てて考え始める。
「アリエスは、勇者が気になるの?」
リベラの質問にアリエスは顔を上げる。
「……勇者はレオ様に教会に気を付けろと言いました。
それが自分達とつながりがあるザウラク教皇を除いた教会なのか、それとも彼すら入れた教会なのかどっちなんだろうと思いまして」
「まあ、確かに教皇の裏の顔を見ちゃうとね……」
リベラはザウラク教皇の言動に失望したのか、溜息を吐いている。
彼女は教会を少し持ち上げていた節があるので、余計に失望も大きいのだろう。
「ザウラク教皇は教会の腐敗を正すためといったことを言っていましたが、どう考えてもあれはガーランド教皇を蹴落として自分の派閥の権威を高めるのが目的でしょうからね」
「枢機卿の数を見ても、ガーランド教皇の派閥が大きくなりすぎちゃうってことなのかな」
リベラの言ったことがよく分からず、レオは内心で首を傾げる。
表情には出さなかったものの、アリエスは彼の心の機微を読み取ったようだった。
「レオ様、教皇は全部で3人です。そして枢機卿は13人居ます。
ルシャ教皇の所に3人、そしてザウラク教皇の所にも3人。
ならガーランド教皇の所には……」
「……7人ってことか」
アリエスの言いたいことが分かり、レオは残りの枢機卿の人数を口にした。
それだけの数なら、ルシャやザウラクの二倍以上だ。
もしこの状態でサマカがガーランド教皇派閥に移動すると、教皇間の格差はさらに広がるだろう。
「大きな組織は大変ですね」
心底うんざりした様子でアリエスは呟く。
偉い人たちは偉い人たちで不毛な争いをしているな、とでも思っているのだろう。
「ですが、これらもまたルシャ教皇が亡くなってしまう原因になる可能性もあります」
「……で? どうするの?
もうサマカ枢機卿が黒なのは確定みたいな感じだけど、一応見張ってみる?」
教会内の派閥問題を置いておくにしても、サマカ枢機卿が怪しいことには変わりない。
彼は間違いなく昨夜の襲撃には関わっているだろう。
「……もしサマカ枢機卿が誰かに会っていれば、そこから何か分かるかもしれない」
レオの言葉に、アリエスは同意するようにしっかりと頷いた。
「はい、彼の背後に本当にガーランド教皇が居るのかが分かるだけでも動きやすくなるでしょう。
ルシャ教皇が亡くなるまではまだ時間があります。
それまでに十分な情報を集め、対処しましょう」
「よし、じゃあ教会に潜入してサマカ枢機卿を探し、監視する。それでいいか?」
頷くアリエスとリベラを見て、レオは姿を隠す祝福を使用した。
×××
レーヴァティの街の教会は総本山と言われるだけあってかなり大きく、広い。
それゆえに侵入もしやすいが、逆にサマカ枢機卿を探すのは時間がかかるかもしれない。
時刻は既に夕方になっていたが、それでも今日のうちに場所のめどは立てて置きたかった。
三人は教会の裏手に回り、裏口を見つける。
その間、アリエスはしきりに何かを探しているようだったが、レオが聞いても答えることはなかった。
残念ながら、乗り越えなければならない高い塀は教会の裏口付近には存在しなかった。
「入るぞ」
中の様子から誰も居ない事を確認したレオはゆっくりと扉を開き、入る。
どうやら書庫の一室らしく、教会や宗教に関する本や書類が溢れていた。
室内に人の気配はないし、部屋の外の廊下にもない。
「サマカ枢機卿の部屋があるとしたら、東側の塔だと思われます。
最上階はルシャ教皇の私室だと思いますが、そのいくつか下の階にはあるかと」
アリエスの言葉に、レオは考える。
レオ達三人は裏口から入った。教会の低層階は共通階層なのだが、上昇階は三つに分かれている。
そのうち東側がルシャ教皇の塔だとアリエスは事前に誰かから聞いてくれていたようだ。
書庫の部屋を出て、レオ達は東の塔へと向かう。
祝福は完全に姿を消しているし、会話の声や足音などが外部に漏れることもない。
ただし、扉の開閉などは外からでも見えるので、細心の注意を払いつつ進んだ。
人の多い低階層をあっさりと突破し、階段を上り、東側の塔に足を踏み入れる。
ふとその時、上階から降りてくる足音を聞いてレオ達は咄嗟に階段脇に避けた。
「神聖玉作成の儀式ですが、私の方でも十分な人数を用意できそうです」
「そうですか。ララさんと私の用意した人員で問題はなさそうですね」
階段を下りてきたのはファイとララの2人だった。
そんな二人は会話をしながらレオの横を通り過ぎる。
神聖玉というものについて話していたものの、レオには聞き覚えがない。
下へ通りていく二人を眺め、十分距離を取ったところで、もう端に避ける必要もなくなり、壁から背を離す。
「神聖玉?」
「確か、各国に提供される魔物避けの結界装置だったような……」
「そうだね、ただ効力はそこまで強くないみたいで、冒険者や勇者の貢献の方が大きいらしいよ」
アリエスを補足したリベラの言葉で、レオは思い出す。
そういえば、そんなことを王国で耳にした気がする。
ただ王国は勇者が多数在籍しているので、あまり頼ってはいないようだった。
「とりあえず、今はサマカ枢機卿に集中しよう」
アリエスとリベラも頷き、レオ達は再び階段を上り始める。
ある程度登ったところで、レオは上に向けて気配を探る祝福を放った。
気配は2つ。最上階に1つとレオ達のすぐ上の階に1つ。
先ほどファイとララとすれ違ったので、おそらく最上階の気配はルシャのもので、一つもう一つがサマカのものだろう。
「多分、この一つ上の階にサマカ枢機卿が居るはずだ」
「了解しました」
アリエスと会話を交わし、レオ達は目的の階まで上がる。
その階は、扉が三つしかない階層だった。
おそらくは執務室と私室と、倉庫のような感じだろうか。
「ザウラク教皇は邸宅を持っていたが、サマカ枢機卿は違うのか?」
「彼はこの教会で暮らしているそうなので、間違いないと思います。
レオ様、サマカ枢機卿の方は?」
「……部屋の中に居る。おそらく仕事中なんだろう」
気配を見抜くレオの祝福が、座った人型の光を映し出している。
おそらく正面の扉から繋がる部屋が、彼の仕事部屋なのだろう。
「さすがに部屋の中までは入れませんから、今日はここで見張りましょう。
彼の事です、おそらく背後の人物と部屋で落ち合うか、あるいはどこかに出かけるはずです」
「手紙でやり取りしている可能性は?」
「ありえますが、いずれにせよ誰かに渡すはずです。
ルシャ教皇と一緒に居る昼間ではなく、比較的一人になりやすい夜や深夜に行動を起こすはずです。
レオ様の右目の事を考えると、深夜には宿屋に戻りたいところですが……」
「そうだな。適当なタイミングで扉に対して仕掛けをしよう。」
レオは誰かの死ぬ光景を見た後に、夜中から朝方にかけて必ずその光景を見る。
その時間に眠りについていないと、寝ろと言わんばかりに呪いによる激痛が働いてしまう。
そのことをアリエスも知っているからこそ、控えめに主張したのだろう。
だから夜中まで見張り、その後は仕掛けに任せることにした。
サマカ枢機卿に動きがあればそれで良し、なければ動きを感知するのみ。
レオの提案に対してアリエスとリベラは全面的に賛成であるので、文句は出なかった。
そして三人は何も言わずに、じっと時を待つ。
しばらくして仕事を終えたサマカ枢機卿が執務室から出てきて、そのまま隣の私室へと入ってしまった。
気配を探るに、どうやら本を読んでいるようだ。何かを書いているような様子もない。
結局この後、サマカ枢機卿は私室から出ることなく、就寝した。
途中、ファイも階段を上り上の階へと上がっていったが、ララの姿は見なかった。
おそらく上階にはルシャとファイの私室があり、ララの部屋は下の階層にあるのだろう。
「よし、仕掛けをして宿屋に戻――」
三つの扉に対して、開けばレオが感じ取れる仕掛けをしようと提案したとき。
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