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第50話 掴み取ったTOP10
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竜乃の炎が消えた後には、ダーク・エンペラーの姿はなかった。
暗黒の城の主たるモンスターは、竜の息吹の前に倒れたのだ。
それを行った竜乃は上空で力強く羽ばたき、支えた望月ちゃんも嬉しそうに微笑んでいる。
俺達の、勝利だ。
“うおおおおぉぉぉぉぉ! 勝ったぁぁぁぁあああああ!”
“キタキタキター!”
“暗黒城攻略!!”
“竜乃ちゃんのブレスもすげえし、虎太郎の旦那も魔法もやべええええ!”
チラリと配信ドローンへと目線を向けてみれば、歓喜の声一色だった。
これまで見たことがないスピードでコメントは流れ、視聴者数もこれまでで最大の数となっている。
その数もどんどん増え、リアルタイムで望月ちゃん達への注目度が増していることが分かる。
「あっ」
不意に望月ちゃんが声を漏らす。
彼女の視線の先には、ボロボロの玉座。
その上に今まではなかった、何か光るものがある。
あれがこの暗黒城を攻略した報酬のアイテムだ。
望月ちゃんが恐る恐る近づいていき、手を伸ばす。
光は伸ばされた手に絡みつき、細い腕輪へと変わった。
「これが、光輝の腕輪。意外と小さいんですね」
腕輪を様々な角度から見ている望月ちゃん。
腕に収まっているのはシンプルなシルバーのフレームの細い腕輪だ。
“キミー:取り外し可能だから心配しなくていいよ。一応効果としては下層探索の際に明るくしてくれるんだけど、今の望月ちゃん達ならそこまで変わらないと思う”
優さんの言う通り、ダーク・エンペラーすら倒した俺達はさらに一段階上に到達しただろう。
望月ちゃんのレベルが上がっている感触があるし、竜乃も一回り成長しているようだ。
(俺自身はそこまで成長していないようだけど、与えたダメージの違いか?)
思えば下層に入ってからというもの、進化の熱というのを久しく感じていなかった。
強くなっている自覚はあるのだが、以前のスールズを倒したような強い熱は久しい。
今回のダーク・エンペラー戦も、竜乃の支援に回っていたことがほとんどだったので熱を感じることはなかった。
(まあでも、味わうことがない方が良いのかもな)
進化の大きな熱は魅力的ではあるものの、その前にスールズの群れと戦うような死闘を考えると、ごめん被りたい。
いつ死んでもおかしくないような命のやり取りなんて、出来れば避けたいものだ。
“モッチー! 順位!”
“そうだ、どうなった!?”
“目標達成か!?”
“頼む、応援してたんだ! 行ってくれ!”
「あっ! そうです、順位! ……えっと、あっ! や、やりました! 9位です!」
9位。その言葉が頭の中で反芻される。
長い道のりだったが、ついに俺達は目標を達成したのだ。
「9位だよ! 竜乃ちゃん、虎太郎君!」
おぅふ。急に抱き着かれてびっくりした。
えぇ!? こんなご褒美があっていいんですか!!
だらしなくなりそうになる顔を必死に堪えていると、背中にも強い衝撃を受けた。
『虎太郎! やったわ! やったわよ!』
いつものお姉さんの雰囲気はどこへやら。
まるで子供のように嬉しそうにはしゃぐ竜乃に背中をペシペシと叩かれる。
まあ嬉しいのは俺も同じだし、気持ちもよく分かる。
けれど普段のイメージが崩れるからもう少しお淑やかにした方が良いぞ――って痛い痛い! 力強い!
(……けどまぁ、良かった)
俺自身、9位という順位は純粋に嬉しい。
けれどそれ以上に、望月ちゃんと竜乃の嬉しそうな顔を見れたことが心を満たしていた。
(もうあとは順位をキープするだけかな)
2桁になってからも、下層を探索することで順位は上がっていた。
10位以内をキープするためには今まで以上に探索する必要はあるが、大丈夫だろう。
少なくとも、追う側から追われる側になったことで、ほんの少しだけだが余裕は生まれそうだ。
JDCの大会が終わるまで逃げ切って、終わったら少し休みたいところだ。
(どうせ下層のボスには挑まないだろうしなぁ)
そんなことを思っていると、柔らかい感触が消えていく。
むぅ……もう少し望月ちゃんのご褒美ハグを味わいたかったのですが。
「わっ……み、見てくれている人がこんなに沢山……ありがとうございます!」
“いいもん見せてもらった”
“初見です。ものすごく強いですね”
“初見です。どうしてTier2ダンジョン挑戦者なのにランキングに乗ってるんですか?”
“初見の人は概要欄にある質問一覧ページあるから、そこで確認してからコメントしてね”
“概要欄を見るんだ”
ランキングが上がったことも相まって、これまでにない程の人数が配信を見てくれていた。
こんな人数、2週間ほど前の自分に告げたら信じられなかっただろう。
流れているコメントも、知っている名前がほとんどない。
時折知っている名前が流れるが、高速でスクロールされて画面外に消えていってしまう。
「あっ……もしもし? あっ、いえ、ありがとうございます! 情報をくれた優さんのお陰です!」
コメントしても無駄だと考えたのか、優さんからの直接的な手段でのお祝いのようだ。
まぁ、この流れの中でコメントしても、刹那の間に消えてしまうので賢明な判断だ。
“キミーパイセン、職権乱用や”
“ずるいぞ! 俺もモッチーにお祝いの電話させろ!”
“そうだそうだ!”
“などと容疑者は供述しており……”
「はい、はい……そうですね。また明日からよろしくお願いします。はい、ありがとうございました!」
明るい口調で電話を終えた望月ちゃん。
彼女は戯れる俺と竜乃を見て、満面の笑みを浮かべた。
「竜乃ちゃん、虎太郎君、お疲れさま! さぁ、帰ろっか!」
『あぁ!(えぇ!)』
二人、いや二匹揃って元気よく返事をして、配信を閉じる望月ちゃんについていく。
とても誇らしい気分だ。
(姿が変わったとしてもパーティで何かを成し遂げるってのは、悪くないな)
昔は感じていた筈の気持ちを再び抱きながら、俺は小さく笑う。
まさか翌日にあんなことが起こるなんて、この時の俺は想像もしていなかったのである。
暗黒の城の主たるモンスターは、竜の息吹の前に倒れたのだ。
それを行った竜乃は上空で力強く羽ばたき、支えた望月ちゃんも嬉しそうに微笑んでいる。
俺達の、勝利だ。
“うおおおおぉぉぉぉぉ! 勝ったぁぁぁぁあああああ!”
“キタキタキター!”
“暗黒城攻略!!”
“竜乃ちゃんのブレスもすげえし、虎太郎の旦那も魔法もやべええええ!”
チラリと配信ドローンへと目線を向けてみれば、歓喜の声一色だった。
これまで見たことがないスピードでコメントは流れ、視聴者数もこれまでで最大の数となっている。
その数もどんどん増え、リアルタイムで望月ちゃん達への注目度が増していることが分かる。
「あっ」
不意に望月ちゃんが声を漏らす。
彼女の視線の先には、ボロボロの玉座。
その上に今まではなかった、何か光るものがある。
あれがこの暗黒城を攻略した報酬のアイテムだ。
望月ちゃんが恐る恐る近づいていき、手を伸ばす。
光は伸ばされた手に絡みつき、細い腕輪へと変わった。
「これが、光輝の腕輪。意外と小さいんですね」
腕輪を様々な角度から見ている望月ちゃん。
腕に収まっているのはシンプルなシルバーのフレームの細い腕輪だ。
“キミー:取り外し可能だから心配しなくていいよ。一応効果としては下層探索の際に明るくしてくれるんだけど、今の望月ちゃん達ならそこまで変わらないと思う”
優さんの言う通り、ダーク・エンペラーすら倒した俺達はさらに一段階上に到達しただろう。
望月ちゃんのレベルが上がっている感触があるし、竜乃も一回り成長しているようだ。
(俺自身はそこまで成長していないようだけど、与えたダメージの違いか?)
思えば下層に入ってからというもの、進化の熱というのを久しく感じていなかった。
強くなっている自覚はあるのだが、以前のスールズを倒したような強い熱は久しい。
今回のダーク・エンペラー戦も、竜乃の支援に回っていたことがほとんどだったので熱を感じることはなかった。
(まあでも、味わうことがない方が良いのかもな)
進化の大きな熱は魅力的ではあるものの、その前にスールズの群れと戦うような死闘を考えると、ごめん被りたい。
いつ死んでもおかしくないような命のやり取りなんて、出来れば避けたいものだ。
“モッチー! 順位!”
“そうだ、どうなった!?”
“目標達成か!?”
“頼む、応援してたんだ! 行ってくれ!”
「あっ! そうです、順位! ……えっと、あっ! や、やりました! 9位です!」
9位。その言葉が頭の中で反芻される。
長い道のりだったが、ついに俺達は目標を達成したのだ。
「9位だよ! 竜乃ちゃん、虎太郎君!」
おぅふ。急に抱き着かれてびっくりした。
えぇ!? こんなご褒美があっていいんですか!!
だらしなくなりそうになる顔を必死に堪えていると、背中にも強い衝撃を受けた。
『虎太郎! やったわ! やったわよ!』
いつものお姉さんの雰囲気はどこへやら。
まるで子供のように嬉しそうにはしゃぐ竜乃に背中をペシペシと叩かれる。
まあ嬉しいのは俺も同じだし、気持ちもよく分かる。
けれど普段のイメージが崩れるからもう少しお淑やかにした方が良いぞ――って痛い痛い! 力強い!
(……けどまぁ、良かった)
俺自身、9位という順位は純粋に嬉しい。
けれどそれ以上に、望月ちゃんと竜乃の嬉しそうな顔を見れたことが心を満たしていた。
(もうあとは順位をキープするだけかな)
2桁になってからも、下層を探索することで順位は上がっていた。
10位以内をキープするためには今まで以上に探索する必要はあるが、大丈夫だろう。
少なくとも、追う側から追われる側になったことで、ほんの少しだけだが余裕は生まれそうだ。
JDCの大会が終わるまで逃げ切って、終わったら少し休みたいところだ。
(どうせ下層のボスには挑まないだろうしなぁ)
そんなことを思っていると、柔らかい感触が消えていく。
むぅ……もう少し望月ちゃんのご褒美ハグを味わいたかったのですが。
「わっ……み、見てくれている人がこんなに沢山……ありがとうございます!」
“いいもん見せてもらった”
“初見です。ものすごく強いですね”
“初見です。どうしてTier2ダンジョン挑戦者なのにランキングに乗ってるんですか?”
“初見の人は概要欄にある質問一覧ページあるから、そこで確認してからコメントしてね”
“概要欄を見るんだ”
ランキングが上がったことも相まって、これまでにない程の人数が配信を見てくれていた。
こんな人数、2週間ほど前の自分に告げたら信じられなかっただろう。
流れているコメントも、知っている名前がほとんどない。
時折知っている名前が流れるが、高速でスクロールされて画面外に消えていってしまう。
「あっ……もしもし? あっ、いえ、ありがとうございます! 情報をくれた優さんのお陰です!」
コメントしても無駄だと考えたのか、優さんからの直接的な手段でのお祝いのようだ。
まぁ、この流れの中でコメントしても、刹那の間に消えてしまうので賢明な判断だ。
“キミーパイセン、職権乱用や”
“ずるいぞ! 俺もモッチーにお祝いの電話させろ!”
“そうだそうだ!”
“などと容疑者は供述しており……”
「はい、はい……そうですね。また明日からよろしくお願いします。はい、ありがとうございました!」
明るい口調で電話を終えた望月ちゃん。
彼女は戯れる俺と竜乃を見て、満面の笑みを浮かべた。
「竜乃ちゃん、虎太郎君、お疲れさま! さぁ、帰ろっか!」
『あぁ!(えぇ!)』
二人、いや二匹揃って元気よく返事をして、配信を閉じる望月ちゃんについていく。
とても誇らしい気分だ。
(姿が変わったとしてもパーティで何かを成し遂げるってのは、悪くないな)
昔は感じていた筈の気持ちを再び抱きながら、俺は小さく笑う。
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