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第18話 どうも、虎太郎です
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大声で叫ぶ俺と竜乃。
そんな俺達は、望月ちゃんからすれば威嚇しあっているように見えたのだろう。
「た、竜乃ちゃん! この子は私達を助けてくれたの! 敵じゃないんだよ!
き、君もごめんね、竜乃ちゃん目覚めたばかりだから混乱しているみたいで……すっごく良い子だから攻撃しないで!」
俺と竜乃に対して交互に視線を向けながらあたふたとする望月ちゃん。
俺、竜乃、俺、竜乃と大忙しに体を動かしている。
そんな彼女の反応で驚きから復帰した俺はその場に伏せる。
竜乃もまた飛び上がりはしたものの、同じ高度に収まってくれた。
『俺の言葉が……分かるのか?』
『そりゃあ分かるわよ……同じテイムモンスター……あ、あら? テイムモンスターが2体?』
望月ちゃんのテイムモンスターが二体という事に驚いている竜乃。
だが彼女が言うにはテイムモンスター同士が話すことは驚くべきことではないようだ。
モンスターとの会話は無理だったが、テイムモンスターとは話せるという事か。
そんな考えが伝わったのか、竜乃は考えることを一旦やめて口を開いた。
『まあ一旦置いといて……テイムされたばかりだと分からないか。
他のテイムモンスターとも会話は出来るわよ……というかあなた、種族なんなの? 見たことないけれど……』
上から下まで嘗め回すような視線に居心地の悪さを感じる。
『分からないんだ。気づいたらこの姿になっていて……』
俺の体が元はあの化け物のものではないかという予感はある。
けれどわざわざそのことを言う必要はないと思い、濁した。
しかし竜乃は別の所に反応した。
『? 進化したってこと? もしそうだとしても、種族は変わらないわよ』
『いや、そうじゃないよ。俺は元々人間なんだ。こんな姿になっちゃったんだよ』
テイムモンスターである竜乃なら俺のような人を知っているかもしれない。
あるいは竜乃自体がそうかもしれない。
そう思ってかつての話をしてみたのだが。
『……頭、大丈夫? 相当辛い目にあったのね。可哀そうに。
大丈夫よ、理奈は凄く良い子だし、お姉さんが優しくしてあげるからね』
『……えぇー』
酷く不憫な子に対する目と声音で返されてしまった。
どうやら信じてもらえていないらしい。
元々人間だったことも、モンスターになったことも事実なので、どう説明して納得してもらおうか、そう思ったとき。
「す、すごい……竜乃ちゃんがお話してる。感激……」
すぐ横から強い視線を受けてそちらを見てみれば、輝いた目で見ている望月ちゃんが居た。
いや、輝いたを通り越して、恍惚としているようにも見える。
『……こ、この子、大丈夫か?』
思わず呟いてしまえば、竜乃は呆れたように息を吐いた。
『理奈はテイムモンスターのことが大好きなのよ。雑に扱われるよりマシだけどね。
あんたも慣れた方が良いわよ』
『そ、そうなのか? 戦闘中はそんな風には見えなかったけど……』
『その日の探索が終わった後はずっと私に抱き着いているわよ。
頑張ったねー! すごいねー! って。もう慣れたけど』
『え、なにそれ、超羨ましいじゃん』
望月ちゃんのような天使に褒められるならやる気もみなぎるというものだ。
それに毎回ダンジョンに挑むたびに彼女に抱きしめられるなら、そりゃあ張りきっちゃいますよ。
『……あんた、ちょっと気持ち悪いわよ』
『うるせえ』
口ではそう言うものの、もしも望月ちゃんに気持ち悪がられたら生きていけない。
これからはクールマン……クール獣になろう。そうしよう。
そう心に決めて望月ちゃんを見上げてみると、彼女は何かを考え込んでいた。
「うーん、どうしようかなぁ……」
一体何を考え込んでいるのだろうか、そう思ったときに望月ちゃんと目が合った。
「あ、これから一緒に戦うから竜乃ちゃんみたいに、君に名前を付けようと思うんだ。
いつまでも君じゃ、親しみがないからね」
なるほど、名前を付けてくれるのか。
確かに元々は織田隆二という名前があるものの、この姿になってからの名前はなかった。
望月ちゃんに付けてもらえるなら、それもいいだろう。
新しいスタートになるし、やる気も満ちるというものだ。
『……ご愁傷様』
しかしなぜか竜乃は不可解なことを呟いた。
どういう意味かと彼女に聞くよりも早く、望月ちゃんがうんっ、と言葉を発する。
「決めたよ! 君の名前は虎太郎! どう、気に入ってくれた?」
『…………』
決められた名前に、思わず目をぱちくりした。
え? 虎太郎? この見かけで? っていうか、ちょっと古臭くない?
色々な考えが頭を過ぎり、思わず竜乃を見た。
すると彼女は明後日の方を向いて、苦笑いをした。
『理奈は本当にいい子なのよ……その、ちょっとネーミングセンスが古いだけで』
(……いや、古いのもそうだし、ちょっとモンスターにつける名前にしては固くない?)
犬猫のようにポチやタマよりはましだが、もっとかっこいい名前にはならないのだろうか。
そう思ったが。
「だ、ダメかな……?」
恐る恐る聞いてくる望月ちゃん。
そんな彼女を見て。
『大丈夫です!』
脊髄反射的に返してしまった。
「あ、気に入ってくれた!」
ブンブンっと首を縦に振れば花のような笑顔を向けてくれる。
こんな笑顔を見られるなら、名前の一つくらい安いものだ。
『ようこそこちら側へ。歓迎するわ、虎太郎くん?』
揶揄ってくる竜乃の言葉は意図的に無視した。
何はともあれ、俺は今の俺としての再スタートを切れたようである。
どうも、織田隆二改め、虎太郎です。
……なんか名前がちょっと弱そうに思えちゃうのは俺だけだろうか。
そんな俺達は、望月ちゃんからすれば威嚇しあっているように見えたのだろう。
「た、竜乃ちゃん! この子は私達を助けてくれたの! 敵じゃないんだよ!
き、君もごめんね、竜乃ちゃん目覚めたばかりだから混乱しているみたいで……すっごく良い子だから攻撃しないで!」
俺と竜乃に対して交互に視線を向けながらあたふたとする望月ちゃん。
俺、竜乃、俺、竜乃と大忙しに体を動かしている。
そんな彼女の反応で驚きから復帰した俺はその場に伏せる。
竜乃もまた飛び上がりはしたものの、同じ高度に収まってくれた。
『俺の言葉が……分かるのか?』
『そりゃあ分かるわよ……同じテイムモンスター……あ、あら? テイムモンスターが2体?』
望月ちゃんのテイムモンスターが二体という事に驚いている竜乃。
だが彼女が言うにはテイムモンスター同士が話すことは驚くべきことではないようだ。
モンスターとの会話は無理だったが、テイムモンスターとは話せるという事か。
そんな考えが伝わったのか、竜乃は考えることを一旦やめて口を開いた。
『まあ一旦置いといて……テイムされたばかりだと分からないか。
他のテイムモンスターとも会話は出来るわよ……というかあなた、種族なんなの? 見たことないけれど……』
上から下まで嘗め回すような視線に居心地の悪さを感じる。
『分からないんだ。気づいたらこの姿になっていて……』
俺の体が元はあの化け物のものではないかという予感はある。
けれどわざわざそのことを言う必要はないと思い、濁した。
しかし竜乃は別の所に反応した。
『? 進化したってこと? もしそうだとしても、種族は変わらないわよ』
『いや、そうじゃないよ。俺は元々人間なんだ。こんな姿になっちゃったんだよ』
テイムモンスターである竜乃なら俺のような人を知っているかもしれない。
あるいは竜乃自体がそうかもしれない。
そう思ってかつての話をしてみたのだが。
『……頭、大丈夫? 相当辛い目にあったのね。可哀そうに。
大丈夫よ、理奈は凄く良い子だし、お姉さんが優しくしてあげるからね』
『……えぇー』
酷く不憫な子に対する目と声音で返されてしまった。
どうやら信じてもらえていないらしい。
元々人間だったことも、モンスターになったことも事実なので、どう説明して納得してもらおうか、そう思ったとき。
「す、すごい……竜乃ちゃんがお話してる。感激……」
すぐ横から強い視線を受けてそちらを見てみれば、輝いた目で見ている望月ちゃんが居た。
いや、輝いたを通り越して、恍惚としているようにも見える。
『……こ、この子、大丈夫か?』
思わず呟いてしまえば、竜乃は呆れたように息を吐いた。
『理奈はテイムモンスターのことが大好きなのよ。雑に扱われるよりマシだけどね。
あんたも慣れた方が良いわよ』
『そ、そうなのか? 戦闘中はそんな風には見えなかったけど……』
『その日の探索が終わった後はずっと私に抱き着いているわよ。
頑張ったねー! すごいねー! って。もう慣れたけど』
『え、なにそれ、超羨ましいじゃん』
望月ちゃんのような天使に褒められるならやる気もみなぎるというものだ。
それに毎回ダンジョンに挑むたびに彼女に抱きしめられるなら、そりゃあ張りきっちゃいますよ。
『……あんた、ちょっと気持ち悪いわよ』
『うるせえ』
口ではそう言うものの、もしも望月ちゃんに気持ち悪がられたら生きていけない。
これからはクールマン……クール獣になろう。そうしよう。
そう心に決めて望月ちゃんを見上げてみると、彼女は何かを考え込んでいた。
「うーん、どうしようかなぁ……」
一体何を考え込んでいるのだろうか、そう思ったときに望月ちゃんと目が合った。
「あ、これから一緒に戦うから竜乃ちゃんみたいに、君に名前を付けようと思うんだ。
いつまでも君じゃ、親しみがないからね」
なるほど、名前を付けてくれるのか。
確かに元々は織田隆二という名前があるものの、この姿になってからの名前はなかった。
望月ちゃんに付けてもらえるなら、それもいいだろう。
新しいスタートになるし、やる気も満ちるというものだ。
『……ご愁傷様』
しかしなぜか竜乃は不可解なことを呟いた。
どういう意味かと彼女に聞くよりも早く、望月ちゃんがうんっ、と言葉を発する。
「決めたよ! 君の名前は虎太郎! どう、気に入ってくれた?」
『…………』
決められた名前に、思わず目をぱちくりした。
え? 虎太郎? この見かけで? っていうか、ちょっと古臭くない?
色々な考えが頭を過ぎり、思わず竜乃を見た。
すると彼女は明後日の方を向いて、苦笑いをした。
『理奈は本当にいい子なのよ……その、ちょっとネーミングセンスが古いだけで』
(……いや、古いのもそうだし、ちょっとモンスターにつける名前にしては固くない?)
犬猫のようにポチやタマよりはましだが、もっとかっこいい名前にはならないのだろうか。
そう思ったが。
「だ、ダメかな……?」
恐る恐る聞いてくる望月ちゃん。
そんな彼女を見て。
『大丈夫です!』
脊髄反射的に返してしまった。
「あ、気に入ってくれた!」
ブンブンっと首を縦に振れば花のような笑顔を向けてくれる。
こんな笑顔を見られるなら、名前の一つくらい安いものだ。
『ようこそこちら側へ。歓迎するわ、虎太郎くん?』
揶揄ってくる竜乃の言葉は意図的に無視した。
何はともあれ、俺は今の俺としての再スタートを切れたようである。
どうも、織田隆二改め、虎太郎です。
……なんか名前がちょっと弱そうに思えちゃうのは俺だけだろうか。
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