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しおりを挟む男の嫁? やだね! キモキモキモ!
それが、この世界での俺の一番の恐れだった。なのになんだ。安曇野が、俺を好きで? この世界でもそうで? さらに、結婚、すると?
「あ、あの……やっぱさ、無理じゃね……ホラ、友達、だったじゃん? それに俺、庶民の子だし……王様にはそれなりのお相手……」
弱弱しく訴えたけど、さらっとスルーされた。何回も、ちょっとずつ声大きくして言い続けたら、最終こう返された。
「俺は誰?」
王様です。としか言えなかった俺は、本当に翌日、くらくらしながらまたとんでもない人数の人を見下ろしてた。
「我々は前世から約束された仲であった! 皆、祝福せよ!」
ものすごく良い発声で安曇野王は宣言し、たくさんの拍手が広場を包んだ。俺の両親と兄貴は、後ろで涙を拭っている。無論、喜びの涙だ。超玉の輿だもんな。当たり前だ。この中で俺の結婚に反対してるのが、唯一俺が避けがちだったマックスだけってのが皮肉なもんだ。
「……」
「……」
そして、その「時」が来る。俺的にはまだ一縷の希望を抱いてたんだけど、どうやら浮かれた「初夜~♪」が今から行われるらしい。幾層もの宝石の粒で清められた水で洗われた俺は、真っ裸でベッドの上待機中。ちんこは股に挟んだ。だって、周りに何人も人居るんだぜ? ありえんありえん。この中でするのか? 安曇野と? アレを? アレ? アレって何だ? 男同士のアレ?
──尻!
前世の知識が俺を殴りつける。さっき恐ろしい程洗わされた肛門が、ぎゅっと締まるのが分かる。何物も、ここに入ってくれるな、とばかりに。畜生、今更だけど、前世の常識いらん。それさえなければ、俺は何だか分からないけど王様に愛されて、この世界では常識の男同士セッ……に挑めただろうに。
「うう……」
怖い。マジ怖い。安曇野のこと怖いと思ったこと無かったけど……あ、いや、あったわ。俺を痴漢した奴の腕捻って脱臼させたときの眼、怖かったわ。
「王様がお着きになりました。初の夜の儀、これより始めるものとします」
恭しい神官の声。折れるぐらい下向いた俺の顎。その顎が、知った指に持ち上げられる。
「ファビアン・ルー。今宵より、我が妻となる者。余の名を呼べ」
「……あ、安曇野……あの、」
「違う」
「……イルム4世……」
「左様。事は成った」
事は成った? え? まじっすか! 安曇野王が人払いをして、小さく万歳しかけた俺だったけど、違ってた。顎から安曇野の指は離れず、ツ、と唇まで辿り、むにむに、つまんでほぐしたからだ。
「そんな固くなるなよ。大丈夫。俺、「いつか万が一さくらとそういう仲になれた時シミュレーション」しまくって抜いてたからさ」
「……!」
安曇野の完璧な顔が近づいて来る。待って、俺、俺ね。
「キス、したことない……」
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