親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina

文字の大きさ
上 下
5 / 8

しおりを挟む
 

「いや~、すげえな、マジで会えると思わんかったわ。同じ世界に転生してるか分かんなかったからさあ」
「……記憶、あり?」
「ありあり! 生まれた時からありまくりだっつーの」
「う、生まれた時から?」
「おう。お前は」

 12歳の頃だ、と言えば遅いと笑われた。その後、安曇野は俺ももしかしてこの世界に転生してないかと子供なりに探し回ったらしいけど見つからず、普通に神童やってたらしい。

「本格的に探すにはさ、やっぱ王様なんなきゃって思ってさ。実績上げまくって上の兄貴も父親も抜いてやったんだ、ヘヘ」
「は、はあ……」
「毒盛られたりして死にかけたりもあったけどさ、ま、俺にはコッチの家族の愛情とか? は全然ないからさ、別に傷つくこともなかった。逆にこっちもトコトンやれたって感じ?」
「は、はあ……」

 俺は安曇野王の部屋のとんでもなくデカイソファで肩を抱かれてちょんと座ってる。安曇野は、大股開きで背もたれに体重預けてリラックスモードだ。「どうした?」じゃねんだわ。一応俺、12歳まではここの世界の常識嗜んでるから、王様に肩抱かれながら再会ウェーイって出来ないんですよね。

「ハハ! ウケル」
「受けるとこ……?」
「てかこの世界ウケるよな、なんか? チの神がこの地面支えてるって思ってるらしいじゃん? 知と、血と、土。上手いこというて」
「……ハハ、確かに、そう、ですね……」
「ですね、やめろや~さくらチャン!」
「ハハ……や、急に慣れないですし……」

 てか。俺。

「あやまってない……」

 はっとして俺は飛び上がり、安曇野王に土下座した。あんな狭い所でフザけてごめん、貧血っぽいの忘れててごめん、

「殺して……ごめん……!」

 そうだ。今こんなに優しく接してくれてる安曇野王だけど、実は怒り心頭なのかもしれない。だって、あのまま前世で生きてたら、天から10物の安曇野だ。本当に総理大臣になってたかもしれない。

「はあ?」

 でも、安曇野は思い切り俺の謝罪を否定した。それどころか、殺してくれてありがとう、と手をぎゅっと握って俺の目を真っ直ぐ見た。それから、こう言った。

「この世界、最高じゃん」

 って。何故。さっき笑ったばっかりじゃん。重力も知らないこの世界のこと。なのに何が最高なんだろう。毒殺されかけたとも言ってたじゃん。俺はどっちかって言うと、前の世界の方が良かったよ。スマホで面白いゲームあったし、服もこんな、似たようなデザインで色違いしかない、みたいなのサイズ合わせて縫って貰うしか出来ないことなくて、いっぱいの中から選べたし。

「あ~それな。服な。それはま、コスプレ感覚でいこうや」
「本当に、怒ってないのか……?」
「怒ってる? まさかだ。今この世界で会えた、その奇跡に俺は前世含めて感謝しかねえよ。だってさ、結婚できんじゃん」

──ン?

「さくら~俺、さくらのことマジ好きだったんだぜ。でも前世はさ、男同士ってナシ寄りだっただろ~? 胸がさあ、苦しかったッス、花火見てキレーっつってるお前のがキレーだって言えなくてさ」
「……」
「さ、忙しい忙しい。戴冠式の次は結婚式か。でも嬉しい忙しさだな!」

──エ?

「おい! 結婚するぞ! 相手はこちら、さくら……じゃなくてファビアン・ルー。支度を整えろ! ちな、明日な! 早く~初夜を~迎えたい♪」

──……。

 俺は、前世ぶりの貧血を起こし、意識を失った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。

くまだった
BL
 新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。  金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。 貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け ムーンさんで先行投稿してます。 感想頂けたら嬉しいです!

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。

白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。 僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。 けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。 どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。 「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」 神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。 これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。 本編は三人称です。 R−18に該当するページには※を付けます。 毎日20時更新 登場人物 ラファエル・ローデン 金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。 ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。 首筋で脈を取るのがクセ。 アルフレッド 茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。 剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。 神様 ガラが悪い大男。  

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

頭の上に現れた数字が平凡な俺で抜いた数って冗談ですよね?

いぶぷろふぇ
BL
 ある日突然頭の上に謎の数字が見えるようになったごくごく普通の高校生、佐藤栄司。何やら規則性があるらしい数字だが、その意味は分からないまま。  ところが、数字が頭上にある事にも慣れたある日、クラス替えによって隣の席になった学年一のイケメン白田慶は数字に何やら心当たりがあるようで……?   頭上の数字を発端に、普通のはずの高校生がヤンデレ達の愛に巻き込まれていく!? 「白田君!? っていうか、和真も!? 慎吾まで!? ちょ、やめて! そんな目で見つめてこないで!」 美形ヤンデレ攻め×平凡受け ※この作品は以前ぷらいべったーに載せた作品を改題・改稿したものです ※物語は高校生から始まりますが、主人公が成人する後半まで性描写はありません

処理中です...