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しおりを挟む「いや~、すげえな、マジで会えると思わんかったわ。同じ世界に転生してるか分かんなかったからさあ」
「……記憶、あり?」
「ありあり! 生まれた時からありまくりだっつーの」
「う、生まれた時から?」
「おう。お前は」
12歳の頃だ、と言えば遅いと笑われた。その後、安曇野は俺ももしかしてこの世界に転生してないかと子供なりに探し回ったらしいけど見つからず、普通に神童やってたらしい。
「本格的に探すにはさ、やっぱ王様なんなきゃって思ってさ。実績上げまくって上の兄貴も父親も抜いてやったんだ、ヘヘ」
「は、はあ……」
「毒盛られたりして死にかけたりもあったけどさ、ま、俺にはコッチの家族の愛情とか? は全然ないからさ、別に傷つくこともなかった。逆にこっちもトコトンやれたって感じ?」
「は、はあ……」
俺は安曇野王の部屋のとんでもなくデカイソファで肩を抱かれてちょんと座ってる。安曇野は、大股開きで背もたれに体重預けてリラックスモードだ。「どうした?」じゃねんだわ。一応俺、12歳まではここの世界の常識嗜んでるから、王様に肩抱かれながら再会ウェーイって出来ないんですよね。
「ハハ! ウケル」
「受けるとこ……?」
「てかこの世界ウケるよな、なんか? チの神がこの地面支えてるって思ってるらしいじゃん? 知と、血と、土。上手いこというて」
「……ハハ、確かに、そう、ですね……」
「ですね、やめろや~さくらチャン!」
「ハハ……や、急に慣れないですし……」
てか。俺。
「あやまってない……」
はっとして俺は飛び上がり、安曇野王に土下座した。あんな狭い所でフザけてごめん、貧血っぽいの忘れててごめん、
「殺して……ごめん……!」
そうだ。今こんなに優しく接してくれてる安曇野王だけど、実は怒り心頭なのかもしれない。だって、あのまま前世で生きてたら、天から10物の安曇野だ。本当に総理大臣になってたかもしれない。
「はあ?」
でも、安曇野は思い切り俺の謝罪を否定した。それどころか、殺してくれてありがとう、と手をぎゅっと握って俺の目を真っ直ぐ見た。それから、こう言った。
「この世界、最高じゃん」
って。何故。さっき笑ったばっかりじゃん。重力も知らないこの世界のこと。なのに何が最高なんだろう。毒殺されかけたとも言ってたじゃん。俺はどっちかって言うと、前の世界の方が良かったよ。スマホで面白いゲームあったし、服もこんな、似たようなデザインで色違いしかない、みたいなのサイズ合わせて縫って貰うしか出来ないことなくて、いっぱいの中から選べたし。
「あ~それな。服な。それはま、コスプレ感覚でいこうや」
「本当に、怒ってないのか……?」
「怒ってる? まさかだ。今この世界で会えた、その奇跡に俺は前世含めて感謝しかねえよ。だってさ、結婚できんじゃん」
──ン?
「さくら~俺、さくらのことマジ好きだったんだぜ。でも前世はさ、男同士ってナシ寄りだっただろ~? 胸がさあ、苦しかったッス、花火見てキレーっつってるお前のがキレーだって言えなくてさ」
「……」
「さ、忙しい忙しい。戴冠式の次は結婚式か。でも嬉しい忙しさだな!」
──エ?
「おい! 結婚するぞ! 相手はこちら、さくら……じゃなくてファビアン・ルー。支度を整えろ! ちな、明日な! 早く~初夜を~迎えたい♪」
──……。
俺は、前世ぶりの貧血を起こし、意識を失った。
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