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1.現在進行形で悩み中。

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「えっ!?午後から臨時休業!?なんで!?」
「そーっ!だぁって、デート入ったんだもぉん。だからフィンは明日の仕込みの買い出しにでも行きなさいよ!」

【ひねくれ苺亭】の店長のネォドニ・ルクセザは綺麗な顔をした茶髪の赤目の男性だ。
だが口調も仕草も女の人の様に振る舞ってはいるものの、下半身はちゃんとついたままの男性と本人は言っている。

ネォは上機嫌でくるくると踊りながら仕事をこなす姿は余程デートが楽しみということかだろう。

「…今度はどんな人なの?というかいつ知り合ったの!?この間彼氏と別れたって言ってなかったっけ!?」
「嫌ねぇ煩いわぁ。
自分がモテないからってがっついちゃって!
今度の人はねぇ…最近ここに来るようになったムッキムキの筋肉達磨ちゃんよぉ!もぉー即アプローチしてよかったあー!」

「…ん?その人さっきのお客さんじゃないの…?いつからの話なの!?」
「いつも来た時にカウンター席に座るからぁ。暇な時声掛けていたのよぉ。あの筋肉最高ぉ…。あー早く抱かれたいっ!」

「……飛躍しすぎだよ。体目当てなの?」
「あらやだ、体相性も大切ってことよ!
という訳で後片付けよろしくぅー、ワタシは化粧してめかしこむからさっさと看板取り下げなさい!客が来たら大変よ!」

忙しくなる昼前の会話にしては些か飛び交ってはならないものもあっただろう。

だがそんなのこの街ではきっと日常茶飯事だ。
この街は普通の街なんかじゃないのだから。



ここは魔界の入り口の役割を果たす街、人間界と魔界の境の街なのだ。
種族は様々な者がいて、中には魔人や半魔人もいる。普通の人間の街で暮らすことの出来ない訳ありの人間も、この街じゃあ普通に暮らせるのだ。

こんな風に暮らせるのはここ3年くらい前からだ。
5年前に新魔王が誕生してから魔王戦争の復興を経て、この街は比較的穏やかな暮らしが出来る様になっている。

新しい魔王は前の魔王を玉座から引き摺り下ろした後、その玉座を護りながら魔族が住みやすい様に環境を整えているらしい。

街の陰りは完全には消せないものの、魔族も人族も亜人族も暮らせるここはある意味幸せな街だ。



ネォだってただの人間なのに、色欲魔人かという位の性欲が本人を突き動かし、年がら年中色恋沙汰を起こしている。
見た目が綺麗で普通にモテそうなのに、性格が多少残念なところがあるのが玉にキズだ。
性欲が溜まり過ぎると見境がなくなり、手当たり次第襲いに掛かるらしい。
それは駄目だろう。

まぁそうなる前に大体彼氏やら彼女やらを作ってはどうにかしている辺り、自己管理がうまく出来てはいると言えるのかもしれない。

全てとは言わないが私も少しは見習いたいものだ。

「というかぁ、フィンはいつになったら恋人作るのよぉ。恋したいとかぼやく割にはいつになっても行動に起こさないじゃない!」
「だって…前にも言ったじゃん。
私は特殊な種族なんだって。
種族が壊滅状態だから復活させたい思いはあるものの、そうなると私より強い種族の人を選ばないといけないし…。

かと言って私よりも強い人って中々居ない上に居たとしても既に奥さんがいたりとか、強面のゴツい顔の人しかいないんだもん!

私の好みの人は可愛い系なのに、そういう人って私より弱い種族しかいないんだよ!?
深刻なんだよ!種族をとるか、自分の恋を取るか!
私の種族の血が絶えちゃうからそこんとこ一応気にしてるんだよ…!」

「恋までならそんなに重苦しく考えなきゃいいのにぃー。大変ねぇ。人間のワタシにはわからないけどぉ。

ま、アンタ次第じゃないのぉ?どちらをとるにせよ?」
「迷ってるから進まないんだよぉ…。
優柔不断ってやだぁ…。」

「すぱっと決めなさい!すぱっと!
アーンタ、そんな条件厳しくしといて、いざクリアした奴が体の相性合わなかったら最悪よぉー!ワタシなら耐えられないわ!」
「…体の相性は、まだ…わかんないから…いいよ…。」

「そーよね。アンタ処女だしね。
流石のワタシでもアンタを襲おうとは思わないしぃ。そんな事したら骨が全部折られちゃうわ。やだやだ!」
「う、う、煩いな!力加減間違えなきゃ大丈夫だもん!」

「はぁ…。とりあえずワタシ用意するから。フィンもちゃんとやんなさいよねぇ~。あー忙しい!」
「…。」


見た目はそこまで悪くは無いはず、だ。
私の中身を知らない人から食事の誘いを受けたこともあるし、デートだってした事はある。
だがやはり好みに合わず、長続きには発展しないのだ。



私の本性を知ればきっとその人達は目の色を変えてしまうだろう。
捕らえられ奴隷に身を落とすのは真っ平ごめんだしそうなったら最後、大暴れをしてでも脱出するけれど。



私は普段はフィンと呼ばれているが、それは本名じゃない。今の黄緑色の髪や琥珀色の瞳の色だって本来は違う色をしている。

本当を全てを隠して生きていかなきゃならないほど。私の種族は貴重なのだ。
心許せる人が現れるまでは絶対バレない様にしないといけない。
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