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11※ 【完結】

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 つぷ、と指先が体内に潜り込んでくる。
「う……」
 さっき諏訪が俺の腹から掬った精液が潤滑剤の代わりとなっているようで、思ったよりすんなりと、指は奥へと侵入してくる。
「痛い?」
「ううん。……でも、すごく変な感じ……」
「だよね、ごめん」
「大丈夫」
 やせ我慢で答えたけれど、察しのいい諏訪には強がりだと悟られてしまったようで。
「慣れるまでこっちに集中してて」
 と先ほど熱を吐き出したばかりのソコに触れられる。
「あっ⁉」
 そっと握られてゆるゆると扱かれると、自分でもあっという間に硬さを増していくのが分かって、恥ずかしくてたまらない。
「ふふ、反応が素直」
「は……ずかしいから、そういうこと……っ、言わないで……あ、ん……っ」
「なんで? すごく嬉しいよ」
(……諏訪の声が、いつもよりずっと甘い)
 そんなことも嬉しくて、余計に感じてしまうから始末に悪い。
 濡れた音が次第に大きく響くようになっているのはわかったけれど、それが前と後ろのどちらからなのか区別がつかない。
 かき回されている、何も受け入れたことのない場所も、もう違和感だけではなくなっていた。
 ぐりっと諏訪の指が中を押した瞬間、明らかに今までとは違う強さで快感が体を駆け抜けた。
「ひぁ⁉」
 思わず声を上げた俺を、諏訪が驚いたように見る。けれど、すぐに声を上げた理由を察したようで、片方の口の端を上げて、不敵に笑った。
「ここ?」
「あぁぁっ」
 同じ場所をもう一度強めに押されて、一際ひときわ大きな声が上がる。
「ふ……や、あ……っ、あぁっ」
 そこばかりを刺激されて引けそうになった腰を、逃がすものかとばかりに掴まれた。
「臣、気持ちいい?」
「なんか……ぁっ、へん……んぅっ」
 イきそう、というよりは内側から無理矢理イかされそうな感覚。
 どうしよう。気持ちいい。
「や、あ……あぅ、ダメ、イ……ッ、ぅあぁっ」
 言い終えることもできずに達した俺は、必死に諏訪を求めて両手を伸ばした。それに気づいた諏訪が手を取って、肩口から背中に回させてくれる。安心して、俺は思い切り抱きついた。
「あぅ……あ、ぁ……」
 全て出し尽くした途端、ガクリと力が抜けそうになる。抱きつくために半分起き上がっていた上半身が崩れそうになったところを、危うく諏訪に抱き留められた。
「臣……臣。臣の中、入ってもいい……?」
 切羽詰まって掠れた声。こんなにも切実に求められていることが嬉しい。
「来てよ。俺、諏訪と繋がりたい」
「ありがとう、臣。……ごめんね。最初は、きっと苦しい」
「いいよ。諏訪だから、平気」
「……っ。そういうこと言われると、少し困る」
 余裕なんてないのに煽らないで、と告げた、欲の滲んだ声に肌が粟立つ。
 ぐい、と後ろに触れていた諏訪のソレが、明確な意思を持って押しつけられる。
「あ……」
 直後に訪れるであろう圧迫感だとか痛みだとか、そんなものを想像して、体に力が入ってしまう。
 それに気付いた諏訪が、あやすように頬や額に口づけてくれる。自分だって辛いだろうにと思うと、愛おしさで胸がいっぱいになった。
 抱きついた腕に力を込めて、逆に体の力は抜く。少しでも諏訪が入れやすいように。
「諏訪……好き。はやく、全部諏訪のものにして」
 直後に感じたのは、息が止まりそうな圧迫感。諏訪が時間をかけてくれたおかげか、痛みは強くなかったが、とにかく苦しくて。
「ッは……」
 なんとか酸素を取り込もうと口を動かすけれど、うまく入ってこない。
 指先が諏訪の背中に食い込んでいるのは気付いていたけれど、それすらどうにもできずにただ喘ぐ。
「あ……っ、うぁ、あぁ……っ……ぐっ」
「……はい……った」
 呻くように吐き出した言葉とともに、動きを止めた諏訪に抱きしめられる。
「……臣。痛い?」
「は……ぁっ、平、気。俺っ、こそ……爪……背中……っ」
「大丈夫。痛いのも苦しいのも、僕に分けてよ。臣だけが味わうだなんて不公平だ」
 言いながら体を起こした諏訪の顔から、ポタッと汗が落ちてきた。見やると、彼の方が余程苦しそうな顔をしている。けれど俺の視線に気づくと、いつものようにふわりと微笑んでみせる。
(あぁもう、好きだ……!)
 気持ちが溢れて、俺は諏訪にねだった。
「動いてよ。もう大丈夫だから」
 さっきしてもらったように、今度は俺から口づける。
 唇を離すより先に突き上げられて、俺の声は、諏訪に飲み込まれた。

「あ……すわ……すわぁっ」
 熱に浮かされでもしたようにひたすら名前を呼んだ。
 全部が諏訪で塗りつぶされる。意識も、感覚も。
「ん……臣……っ」
 それに応える諏訪も、興奮しているのだと伝わってくる。それを聞いた俺は、更に興奮して……あぁ、もう、本当に際限がない。
「や、そこ、ダメっ……っあ……んっ」
「気持ちいい?」
「だから、ダメ……だって……うぁっ」
「いいって言ってよ、臣」
 耳元でちゅ、とキスの音が響く。
 快感にすっかり溺れた俺は、恥ずかしいとか、みっともないとか、そんなことを考える余裕もなく、感じるままに言葉を口にする。
「い……いい……っ、気持ちよすぎて、おかしくなりそ……っ」
「……っ」
「す……わ、すわも……きもちい?」
「うん……熱くて、気持ちよくて……僕もどうにかなりそう」
「なってよ。い……つも、冷静だから……俺とシて……あっ……そうじゃなくなる……とこ、見たい」
「臣には、僕が冷静に見えるの……? こんな時に冷静でいられるわけ、ない、でしょう」
 煽ったからには覚悟して、と告げる声にその意味を問いかけるより先に、片脚を持ち上げられた。諏訪の肩に乗せるように大きく脚を開かせられて、驚いて身をよじる。
「逃げないで」
 一旦入り口近くまで引き抜かれて、次の瞬間、思い切り奥まで突かれた。
「かはっ⁉」
 あまりの衝撃に、空気だけが漏れる。
「あ……っ、は、……く……あぁっ……そ、そんな奥……無理っ」
「無理じゃないよ、ちゃんと入ってる」
「ひぁっ……うぁ……あぅ……」
「もっと聞かせて、臣。ほ……ら!」
 腰を強く打ち付けられ、その度にこれ以上入らないと思うほど、奥まで突かれる。
「あ、あぁ……っ、も、ダメ……すわ……イっちゃ……イっちゃう……あぁっ」
 うまく呂律が回らない中で必死に限界を訴える。
「あ、臣、そんなに締めたら、僕……も……持たな……っ」
「……あ、すわ、も、イ……っく! あ、あぁぁぁっ!」
「く……ぅ……ぐ……っ」

「……ごめん。無理、させた……」
 息が整った頃、俺の目の前には“反省中”と書いてあるのが見えるかのように、項垂れる諏訪の姿があった。
 慣れない行為で、確かに体はあちこちが痛む。でも、そんなのは取るに足らないことだ。
「俺は嬉しかったよ。諏訪が求めてくれて。我を忘れるくらい気持ちよかった? 俺とするの」
 わざと軽口を叩くと、諏訪は困ったように眉を下げて苦笑いをした。
「ねぇ、諏訪」
「うん?」
「俺に“あの村の人たちを守っていくのは酷じゃないか”って言ったの覚えてる?」
「もちろん」
「俺さ、いいよ。大丈夫だよ。人が信じたり、頼ったりすることが諏訪の力になるんでしょう? だったら、噂になるくらいしっかり守って、いっぱい頼ってもらえばいいんじゃないかな」
「!」
「そしたら、神様に守ってもらえる土地だって噂になって、村にも人が増えるかもしれない。村の消滅を食い止められるんだとすれば、人にとっても諏訪にとってもいいことだよね? 幸せな人が増えるのは悪いことじゃないんだし」
「でも……」
「諏訪が幸せなら俺も幸せってことで。あ、でも、努力しなくなるほどたくさん叶えてあげちゃダメだからね」
「本当に、臣はお人好しだね」
「諏訪には負ける。これで俺が村を守るのなんか冗談じゃないって言ったら、困るのは自分のくせに。それでも選択権を俺にくれたんでしょう?」
「そうなったら、代わりに臣をいっぱい抱くからいいよ」
「……俺がもたないから、それ」
 言って、顔を見合わせて笑い合う。
 そんなことが、嬉しくて、大切で、愛しい。
「好きだよ、諏訪」
「僕も、臣のことが好き」
 抱き合って、そっと唇を重ねた。
 大丈夫、ずっと二人で守っていこう。
 村も、大事な人たちも、お互いの幸せも。
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