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なんか、以前もこんなことがあったような……
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「やぁやぁやぁ~、ケント君! ちょっと君に報告と相談があるんだが、いいだろうか?」
ハーネ達と一緒に遊びながら庭の雑草取りをしていると、ラグラーさんのお兄さん兼帝国の第二皇子兼ギルドマスターなシェントルさんが、石垣の所からひょこりと顔を出しながら僕に声をかけてきた。
「あ、シェントルさん……どうしたんですか?」
立ち上がってズボンに付いた土を払い、残りの雑草取りをハーネとライ達に任せてシェントルさんがいる場所まで歩いて行く。
せっかく来てくれたので家の中に案内し、椅子に座ってもらう。
少し待っててもらい、手洗いをしてから二階の自室に戻って着替え、それから下に戻って冷蔵庫から冷たい飲み物をコップに注いでシェントルさんが待つテーブルまで持っていく。
ジュースを勢いよく飲む姿を見ながら僕が椅子に座ると、飲み終えたコップをテーブルに置いたシェントルさんが口を開く。
「ふぅ……今日ケント君のところに来たのは、以前君から依頼されていた『使役獣――イーちゃんの詳しい種族名を調べる』という内容の報告に来たんだ」
「あ、イーちゃんの種族名が分かったんですか?」
僕の肩で気持ちよさそうにスピスピと鼻息を立てながら寝ているイーちゃん。
実はかなり前からイーちゃんがどんな魔獣なのか『暁』の皆や魔獣に詳しいギルド職員であるミリスティアさんやリークさんに聞いたりしていたんだけど分からず、それじゃあと図書館に行って調べてみるも、幼獣よりもさらに小さな赤ちゃんの姿が描かれている魔獣図鑑は取り扱っていないと言われたんだよね。
聞けば、魔獣は幼獣の時の姿が成獣になってもさほど変わらないものもあるが、全く別な見た目に変化するものもいる。
そして分かっている種類にはいないようだった。
そこで、ラグラーさんに会いに来ながら夕食を食べていたシェントルさんに相談したら、いつも美味しいご飯を食べさせてもらっているからと、無料で調べてあげようと言ってくれたんだよね。
ありがたい!
そうして調べた結果が出たようである。
イーちゃんはどんな魔獣なんだろうかとワクワクしながら待っていると、シェントルさんは申し訳ないと頭を下げながら「ギルドの他に帝国内でも著名な魔獣研究者に聞いて回ったが、分からなかったんだ」と言われた。
「もしかしたら……イーちゃんはまだ誰にも発見されていない新種の魔獣――なのかもしれない」
「えぇっ、新種の魔獣ですか!?」
「そんな驚くことでもないよ。まだ攻略出来ていないダンジョンだって数多くあるし、そんなダンジョンの深層部に棲息する魔獣であれば、俺達が見たこともないようなものも存在している可能性だってあるからな」
聞けば、毎年五~八体くらいの新種の魔獣、魔草、妖精やアンテッドなどが発見されているとのこと。
知らなかった……
「この子が成獣になれば、もしかすると種族が分かる可能性もある。あとは、そうだな……長命種であるエルフの長老会にいるご老人達なら、もしかしたら知っているかもしれない」
「エルフですか……」
エルフの長老に会えるかは別として、エルフがいる場所と言えばフェリスさんの故郷だ。
イーちゃんのことだけじゃなくても、一度は行ってみたい場所である。
ちょっとフェリスさんに連れてってもらえるか聞いてみるかな?
そんなことを思いながらシェントルさんに「調べてもらってありがとうございました」と頭を下げた。
「あ、そう言えばシェントルさん……相談があるって言ってましたが、どうしたんですか? なにかありました?」
僕がそう聞けば、シェントルさんはパッと表情を明るくして、「あぁ! 実は店に出す料理で新しいものをそろそろ出したいと思っているんだが、なにかいい物はあるかいかな~と思ってね」と言う。
「ふむ、新しい料理ですね」
今までシェントルさんのお店には、作りやすい飲み物や食べ物の作り方やレシピを教えたりして出品していた。
魔獣を使った料理は最初は忌避感が強いかなって思っていたんだけど、『皇室が絶賛した料理!』とか『陛下も認めた美味しさ!』とか皇室の力を使って宣伝したおかげか、今では行列が出来るほどだと言われている。
ただ、僕が書いたレシピ通りの分量でちゃんと作らないと激マズ料理が出来てしまうので、そこだけは徹底して守ってもらっている。
今回はどんな料理を教えようかな~と考えつつ、先日作って皆に大好評だった料理を教えることにした。
エビに似た魔獣を使った『ぷりぷりエビとブロッコリーのオーロラソース炒め』と、食べれば豚肉の味がする魔獣を使った『豆腐を使ったミートソースグラタン』だ。
ご飯系以外にも数種類のデザートや飲み物の材料と作り方を紙に書き、それをシェントルさんに手渡す。
紙を見たシェントルさんは「……うん、この材料であれば直ぐに用意出来るよ。用意が出来終えたらまた連絡するから、その時はまたよろしく頼む」と僕に頭を下げた。
「分かりました。たぶんここに書かれている料理も飲み物も作り方の手順は難しくないので、僕が一度作り方を見せたら皆さん直ぐに作れるようになると思いますよ」
そう、シェントルさんにレシピだけ教えたとしても、味見をしたこともないのに未知なものを作るのはかなり大変なので、シェントルさんが推薦した料理人の人達に僕が直接料理をするところを見てもらい、作ったものを食べて味を覚えてもらう。
そして彼らが作るのを僕が監修して――そうして出来上がったものが帝国内にあるシェントルさんが経営する料理店で食べることが出来るようになるんである。
「いやぁ~、ケント君には本当に頭が上がらないよ。兄上も直接ケント君の手料理を食べてみたいって言ってるから、今度連れて来るよ」
レシピが書かれた紙を懐に入れたシェントルさんが、これから料理人達を選ぶために帝国に一度帰ると言って立ち上がった時に言われた言葉に、一瞬脳がその言葉の意味を理解するのに時間がかかった。
「…………えぇっ!?」
驚きながらシェントルさんが歩いて行った方を見たら、もういなかった。
シェントルさんのお兄さんって……皇帝じゃん。
まさかそんな凄い人に料理を振るわなければならないのかと思うと、今から緊張で胃が痛くなってきたのであった。
シェントルさんが帰り、まだ時間もあるし気分転換をしようと町へ買い物へ出かけたら、途中でグレイシスさんとカオツさんに出会った。
「あら、ケント。そんなゲッソリした表情をしてどうしたの?」
「体調でも悪いのか?」
町中をフラフラと歩いていた僕を見て声をかけてくれた二人は、僕の顔を見て眉を顰める。
僕が先ほどの出来事を説明すると、「まぁ、いつかそういう日が来ると思っていた」と言われた。
「だいたい、皇帝の弟でもあるラグラーとシェントルが自慢するようにうめぇーうめぇーとか言っているのを聞き続けていたら、いつかは皇帝本人も来たいって言い出すに決まってるだろうよ」
「そうね。それにケントが作ったお弁当を何度か食べたのなら、作り立ての美味しい料理を食べてみたいって思うのも不思議じゃないわ」
「……まぁ、そうですよねぇ」
いつ来るのか、または僕が帝国に行って直接作るのかは分からないけど、ラグラーさんやシェントルさんのお兄さんが喜んでくれるよう美味しい料理を作ってあげよう。
そう思いながら頭の中でどんな料理を作ろうかな~と考えていたら、「あ~ん? あそこにいるのカオツじゃね?」と言う声が耳に入って来た。
僕とグレイシスさん、それにカオツさんの三人で声がした方へ顔を向けると、三人組の若い男性が僕達の方――主にカオツさんを指を指しながら見ていた。
グレイシスさんが「ねぇ、カオツの知り合い?」と小声で聞いていたんだけど、カオツさんは全く知らないというような表情で三人を見ている。
どうやら顔見知りではないようではあるが、相手が一方的にカオツさんを知っているような状態のようだった。
ただ、彼らのカオツさんを見る顔はどうみても好意的なものではない。
嫌な感じしかしないからその場から離れようとしたら、「あいつ、いっつも偉そうにしてたくせにメンバーの統率が下手でパーティを解散させたんだろ?」「あぁ、あいつがいたパーティに治癒魔法使いとして入っていた子から聞いたんだが、解散間近って頃には依頼を受けても成功することが出来ないことが多くなってたらしいぞ」「はぁ? まじで? ヤベーなそれ」などなどといった会話を聞こえるように笑いながら話していた。
感じわるっ!
ムッとして僕が反論しようと口を開きかけると、カオツさんが「んなもんに相手すんな」と言って歩き出す。
「でも……」
「言いたい奴には言わせとけ。俺が『龍の息吹』を解散させたのは本当だしな」
「それは、ちゃんとした理由があったじゃないですか」
「ま、あん時の俺には『実力不足』だったのは確かだ」
肩を竦めながらそう言うカオツさんになにか言おうと思ったところで――グレイシスさんが「フフフ、弱い犬ほどよく吠えるわよね」と三人の男性を見ながら笑っていた。
男性三人はグレイシスさんの言葉が聞こえなかったのか、まだカオツさんのことを嘲笑っている。
グレイシスさんは怪しい笑い声を出しながら、人差し指をクルリと回す。
見れば、指先に灯った光が男性三人組の方へと飛んでいき、手や足にくっ付いたと思ったら体の中に溶けて消えていく。
「……グレイシスさん、何をしたんですか?」
なんか、この光景は以前も見たことがあるぞ。
以前はカオツさんが「毎日足の小指を物にぶつけて悶絶する」といった呪いを受けて、酷い目にあっていたんだよね。
そんなことを思い出していたら、にっこりと笑ったグレイシスさんが教えてくれた。
「今から一週間、『犬のウンチを踏んで転び、頭の上に鳥の糞が雨のように落ちてくる』っていう強力な呪いをかけておいたわ♪」
どうやら、カオツさんの時とは違って今回はちゃんと期限付きの呪いにしたようだ。
小指に物をぶつけるのも嫌だけど、今回の呪いは精神的にキツイものがある。
しかもグレイシスさんの呪いは強力で普通の解呪術師では解けないようだし。
ご愁傷様ですと心の中で呟くも、内心はスカッとしたと言える。
「おい、そろそろ行くぞ」
「はぁ~い」
「あ、待ってください、カオツさん」
僕達は先を歩くカオツさんの方へ走って行きながら、後方から聞こえてきた悲鳴を聞き――グレイシスさんと拳を握ってから親指を立てて笑い合ったのだった。
ハーネ達と一緒に遊びながら庭の雑草取りをしていると、ラグラーさんのお兄さん兼帝国の第二皇子兼ギルドマスターなシェントルさんが、石垣の所からひょこりと顔を出しながら僕に声をかけてきた。
「あ、シェントルさん……どうしたんですか?」
立ち上がってズボンに付いた土を払い、残りの雑草取りをハーネとライ達に任せてシェントルさんがいる場所まで歩いて行く。
せっかく来てくれたので家の中に案内し、椅子に座ってもらう。
少し待っててもらい、手洗いをしてから二階の自室に戻って着替え、それから下に戻って冷蔵庫から冷たい飲み物をコップに注いでシェントルさんが待つテーブルまで持っていく。
ジュースを勢いよく飲む姿を見ながら僕が椅子に座ると、飲み終えたコップをテーブルに置いたシェントルさんが口を開く。
「ふぅ……今日ケント君のところに来たのは、以前君から依頼されていた『使役獣――イーちゃんの詳しい種族名を調べる』という内容の報告に来たんだ」
「あ、イーちゃんの種族名が分かったんですか?」
僕の肩で気持ちよさそうにスピスピと鼻息を立てながら寝ているイーちゃん。
実はかなり前からイーちゃんがどんな魔獣なのか『暁』の皆や魔獣に詳しいギルド職員であるミリスティアさんやリークさんに聞いたりしていたんだけど分からず、それじゃあと図書館に行って調べてみるも、幼獣よりもさらに小さな赤ちゃんの姿が描かれている魔獣図鑑は取り扱っていないと言われたんだよね。
聞けば、魔獣は幼獣の時の姿が成獣になってもさほど変わらないものもあるが、全く別な見た目に変化するものもいる。
そして分かっている種類にはいないようだった。
そこで、ラグラーさんに会いに来ながら夕食を食べていたシェントルさんに相談したら、いつも美味しいご飯を食べさせてもらっているからと、無料で調べてあげようと言ってくれたんだよね。
ありがたい!
そうして調べた結果が出たようである。
イーちゃんはどんな魔獣なんだろうかとワクワクしながら待っていると、シェントルさんは申し訳ないと頭を下げながら「ギルドの他に帝国内でも著名な魔獣研究者に聞いて回ったが、分からなかったんだ」と言われた。
「もしかしたら……イーちゃんはまだ誰にも発見されていない新種の魔獣――なのかもしれない」
「えぇっ、新種の魔獣ですか!?」
「そんな驚くことでもないよ。まだ攻略出来ていないダンジョンだって数多くあるし、そんなダンジョンの深層部に棲息する魔獣であれば、俺達が見たこともないようなものも存在している可能性だってあるからな」
聞けば、毎年五~八体くらいの新種の魔獣、魔草、妖精やアンテッドなどが発見されているとのこと。
知らなかった……
「この子が成獣になれば、もしかすると種族が分かる可能性もある。あとは、そうだな……長命種であるエルフの長老会にいるご老人達なら、もしかしたら知っているかもしれない」
「エルフですか……」
エルフの長老に会えるかは別として、エルフがいる場所と言えばフェリスさんの故郷だ。
イーちゃんのことだけじゃなくても、一度は行ってみたい場所である。
ちょっとフェリスさんに連れてってもらえるか聞いてみるかな?
そんなことを思いながらシェントルさんに「調べてもらってありがとうございました」と頭を下げた。
「あ、そう言えばシェントルさん……相談があるって言ってましたが、どうしたんですか? なにかありました?」
僕がそう聞けば、シェントルさんはパッと表情を明るくして、「あぁ! 実は店に出す料理で新しいものをそろそろ出したいと思っているんだが、なにかいい物はあるかいかな~と思ってね」と言う。
「ふむ、新しい料理ですね」
今までシェントルさんのお店には、作りやすい飲み物や食べ物の作り方やレシピを教えたりして出品していた。
魔獣を使った料理は最初は忌避感が強いかなって思っていたんだけど、『皇室が絶賛した料理!』とか『陛下も認めた美味しさ!』とか皇室の力を使って宣伝したおかげか、今では行列が出来るほどだと言われている。
ただ、僕が書いたレシピ通りの分量でちゃんと作らないと激マズ料理が出来てしまうので、そこだけは徹底して守ってもらっている。
今回はどんな料理を教えようかな~と考えつつ、先日作って皆に大好評だった料理を教えることにした。
エビに似た魔獣を使った『ぷりぷりエビとブロッコリーのオーロラソース炒め』と、食べれば豚肉の味がする魔獣を使った『豆腐を使ったミートソースグラタン』だ。
ご飯系以外にも数種類のデザートや飲み物の材料と作り方を紙に書き、それをシェントルさんに手渡す。
紙を見たシェントルさんは「……うん、この材料であれば直ぐに用意出来るよ。用意が出来終えたらまた連絡するから、その時はまたよろしく頼む」と僕に頭を下げた。
「分かりました。たぶんここに書かれている料理も飲み物も作り方の手順は難しくないので、僕が一度作り方を見せたら皆さん直ぐに作れるようになると思いますよ」
そう、シェントルさんにレシピだけ教えたとしても、味見をしたこともないのに未知なものを作るのはかなり大変なので、シェントルさんが推薦した料理人の人達に僕が直接料理をするところを見てもらい、作ったものを食べて味を覚えてもらう。
そして彼らが作るのを僕が監修して――そうして出来上がったものが帝国内にあるシェントルさんが経営する料理店で食べることが出来るようになるんである。
「いやぁ~、ケント君には本当に頭が上がらないよ。兄上も直接ケント君の手料理を食べてみたいって言ってるから、今度連れて来るよ」
レシピが書かれた紙を懐に入れたシェントルさんが、これから料理人達を選ぶために帝国に一度帰ると言って立ち上がった時に言われた言葉に、一瞬脳がその言葉の意味を理解するのに時間がかかった。
「…………えぇっ!?」
驚きながらシェントルさんが歩いて行った方を見たら、もういなかった。
シェントルさんのお兄さんって……皇帝じゃん。
まさかそんな凄い人に料理を振るわなければならないのかと思うと、今から緊張で胃が痛くなってきたのであった。
シェントルさんが帰り、まだ時間もあるし気分転換をしようと町へ買い物へ出かけたら、途中でグレイシスさんとカオツさんに出会った。
「あら、ケント。そんなゲッソリした表情をしてどうしたの?」
「体調でも悪いのか?」
町中をフラフラと歩いていた僕を見て声をかけてくれた二人は、僕の顔を見て眉を顰める。
僕が先ほどの出来事を説明すると、「まぁ、いつかそういう日が来ると思っていた」と言われた。
「だいたい、皇帝の弟でもあるラグラーとシェントルが自慢するようにうめぇーうめぇーとか言っているのを聞き続けていたら、いつかは皇帝本人も来たいって言い出すに決まってるだろうよ」
「そうね。それにケントが作ったお弁当を何度か食べたのなら、作り立ての美味しい料理を食べてみたいって思うのも不思議じゃないわ」
「……まぁ、そうですよねぇ」
いつ来るのか、または僕が帝国に行って直接作るのかは分からないけど、ラグラーさんやシェントルさんのお兄さんが喜んでくれるよう美味しい料理を作ってあげよう。
そう思いながら頭の中でどんな料理を作ろうかな~と考えていたら、「あ~ん? あそこにいるのカオツじゃね?」と言う声が耳に入って来た。
僕とグレイシスさん、それにカオツさんの三人で声がした方へ顔を向けると、三人組の若い男性が僕達の方――主にカオツさんを指を指しながら見ていた。
グレイシスさんが「ねぇ、カオツの知り合い?」と小声で聞いていたんだけど、カオツさんは全く知らないというような表情で三人を見ている。
どうやら顔見知りではないようではあるが、相手が一方的にカオツさんを知っているような状態のようだった。
ただ、彼らのカオツさんを見る顔はどうみても好意的なものではない。
嫌な感じしかしないからその場から離れようとしたら、「あいつ、いっつも偉そうにしてたくせにメンバーの統率が下手でパーティを解散させたんだろ?」「あぁ、あいつがいたパーティに治癒魔法使いとして入っていた子から聞いたんだが、解散間近って頃には依頼を受けても成功することが出来ないことが多くなってたらしいぞ」「はぁ? まじで? ヤベーなそれ」などなどといった会話を聞こえるように笑いながら話していた。
感じわるっ!
ムッとして僕が反論しようと口を開きかけると、カオツさんが「んなもんに相手すんな」と言って歩き出す。
「でも……」
「言いたい奴には言わせとけ。俺が『龍の息吹』を解散させたのは本当だしな」
「それは、ちゃんとした理由があったじゃないですか」
「ま、あん時の俺には『実力不足』だったのは確かだ」
肩を竦めながらそう言うカオツさんになにか言おうと思ったところで――グレイシスさんが「フフフ、弱い犬ほどよく吠えるわよね」と三人の男性を見ながら笑っていた。
男性三人はグレイシスさんの言葉が聞こえなかったのか、まだカオツさんのことを嘲笑っている。
グレイシスさんは怪しい笑い声を出しながら、人差し指をクルリと回す。
見れば、指先に灯った光が男性三人組の方へと飛んでいき、手や足にくっ付いたと思ったら体の中に溶けて消えていく。
「……グレイシスさん、何をしたんですか?」
なんか、この光景は以前も見たことがあるぞ。
以前はカオツさんが「毎日足の小指を物にぶつけて悶絶する」といった呪いを受けて、酷い目にあっていたんだよね。
そんなことを思い出していたら、にっこりと笑ったグレイシスさんが教えてくれた。
「今から一週間、『犬のウンチを踏んで転び、頭の上に鳥の糞が雨のように落ちてくる』っていう強力な呪いをかけておいたわ♪」
どうやら、カオツさんの時とは違って今回はちゃんと期限付きの呪いにしたようだ。
小指に物をぶつけるのも嫌だけど、今回の呪いは精神的にキツイものがある。
しかもグレイシスさんの呪いは強力で普通の解呪術師では解けないようだし。
ご愁傷様ですと心の中で呟くも、内心はスカッとしたと言える。
「おい、そろそろ行くぞ」
「はぁ~い」
「あ、待ってください、カオツさん」
僕達は先を歩くカオツさんの方へ走って行きながら、後方から聞こえてきた悲鳴を聞き――グレイシスさんと拳を握ってから親指を立てて笑い合ったのだった。
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