チートなタブレットを持って快適異世界生活

ちびすけ

文字の大きさ
上 下
131 / 137
連載

その頃の『暁』では 後編 ※フェリス視点

しおりを挟む
 まぁ、それでも悪いのは私達なので、これからもそのお酒を手に入れる方法を探し続けるのみね!

 選んだお酒を持って居間に戻れば、超特急で調合を終わらせてきたグレイシスが二階から下りてきたところだった。
 お互い席についてから、お酒の瓶の蓋を開けてグラスに注ぎ――「「カンパーイ!」」とお互いのグラスを軽くくっ付けてから飲み始めた。

 美味しいお酒と食事を食べながら話していると、時間はあっという間に過ぎて行くよね~。

 普段この家の中で女二人でゆっくり夕食を食べながら話すことは少ないから、新鮮な感じ。
 たまには良いものね。
 そんなことを思いながら、空になった私のグラスにお酒を注いでくれているグレイスの姿を見る。
 私と初めて出会った時は、いろんなことに傷付き、ボロボロになった幼い魔族の女の子だったけど、今は誰もが見惚れるような美人さんに成長してくれた。
 テーブルの上に肘を乗せながら、頬杖ついてフフフと笑うと、「え、なによ……その気持ち悪い笑い方は」と変なものを見る目で見られた。
 失敬ねっ!
 口を尖らせながらも、ここ最近ちょ~っといい雰囲気になりつつある“彼”とはどうなのかしらん? とグレイシスを見る。

 彼――カオツとグレイシスはお互い惹かれ合っているように見える。
 だけど、出会いが出会いな訳だから、お互いの印象が良くなかったのはしょうがないんだけど……両片思いっぽい感じなのよね~。

 でも、彼とグレイシスは私の勘が当たっていたら、けっこう良い相性だと思うのよ!

 グレイシスはしっかりしているように見えて、けっこう抜けているところがあるし、子供っぽい部分なんかもある。
 元々才能がある子だから、やれば何でも出来てしまって人に頼ろうとすることが少ない。
 小さなグレイシスを助け、魔力を整えてあげている私には「ねぇねぇ、フェリス~」と甘えた感じでたまにすり寄ってくることはあるけど、私以外の誰か――『暁』の仲間であるラグラーやケルヴィンでさえ、本当の意味で助けを求めることはない。

 それは、グレイシスの出自にも問題があったからなんだけど……

 だからカオツが『暁』に入ってくれた時、私はカオツにいろんな面倒事を押しつ……ゲフン、ゲフン……頼りになりそうな存在になりそうだから、彼にグレイシスが持つ魔族の魔力の扱い方や、子供達の訓練もラグラー達と一緒に見てくれるようお願いした。

 彼は見た目に反して意外と律儀だし、一度やると決めたことには手を抜かない。
 それと、これは本当に意外だったんだけど……

 カオツは口が悪い方だし、グサッとくるようなことを平気でズバズバと言うけど、グレイシスや子供達が目標を立てたことを達成出来た時など、茶化さずにぶっきらぼうでもなんでも、ちゃんと褒めていた。

 だから、最初はグレイシスと口喧嘩みたいなことをしょっちゅうしていたけど、今ではほとんどない。
 
 あの人見知りをするクルゥも今ではけっこう懐いているし、ケント君も『龍の息吹』ではいろいろとあったはずなのに、カオツさん! カオツさん! とその後ろをついて歩いている。
 カオツ自身は子供は好きな方じゃなさそうだけど、面倒見はいいから子供達からは好かれるのよね~。

 そんなカオツと一緒に過ごしているうちに、グレイシスも心を開いていっているっぽいの。

 この前なんか、私でも「あらあらあら~ん♪」と熱くなる頬に手を当て、照れそうになるくらいのイイ雰囲気を二人で作りだしていたんだから!
 だから「ねぇ、グレイシス~。あなた、カオツとここ最近かなぁ~りイイ雰囲気じゃない?」って聞いたら、グレイシスの顔が真っ赤に色付いた。
 ニマニマしながら、ここには二人しかいないんだから、もっといろいろなことを聞き出すぞぉ~♪ と口を開いたら――

 玄関が開く音と共に「ただいま~」という声が聞こえてきた。

「へ?」
「え? 帰って来るには早過ぎない?」

 驚きながら二人して音がした方へ視線を向ければ――まだ妖精国に滞在しているはずの四人が、なぜか帰ってきていた。
 なんでこんないいタイミングで帰って来るわけぇ~!?
 グレイシスを見れば、さっきまで照れていた表情が元通りになっているし……
 こうなれば、聞いてもはぐらかされて終了してしまう。

 話の続きは違う日に持ち越しね……と諦めながら溜息を吐いていると、ケント君が疲れたからと自室へと一足早く戻って行った。

 他の連中は私達と一緒にお酒を飲むようである。
 仕切り直して、皆で乾杯をしてから飲み会を続行し、妖精国ではどんなことがあったのか聞いたんだけど、ケント君達が妖精国に行ってから、思いもよらなかった出来事があったみたいね。
 話を聞いて私とグレイシスは驚いた。
 中でも一番驚いたのが、ケント君がオレフェカじー様の怒りを解いたということ。
 ラグラーの話によれば、私とチェイサーが飲み干したお酒に似た味の、とても稀少なお酒を数本オレフェカじー様にケント君が渡したらしい。

 たぶんお酒以外の――ケント君の人柄などもあって、オレフェカじー様の怒りは鎮火したんでしょうね。

「ったく、お前はいったい何をやってんだよ!」と言うラグラーのお怒りの言葉に、「すみません~」と謝るしかないのが辛い。
 それから、この『暁』になくてはならない存在になっているケント君を思い浮かべながら、クスリと笑う。

 この『私』が借りを作るなんて……ケント君、それって凄いことなのよ?

 そんなことを思いながら皆で楽しくお酒を飲み続け――翌日、二日酔いで倒れた私達を呆れた表情のケント君が、いつものように介抱してくれたのだった。
しおりを挟む
感想 1,345

あなたにおすすめの小説

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます

蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜 誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。 スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。 そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。 「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。 スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。 また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。