チートなタブレットを持って快適異世界生活

ちびすけ

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番外編  その頃の『暁』では 前編 ※フェリス視点

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「いってらっしゃ~い」

 デレルに招待された妖精国へ行くケント君達に、魔法陣の光が消えてその姿が見えなくなるまで手を振った後、妖精国へ行けなかった私とグレイシスはダッシュして家の中に入る。

「グレイシス、あとどれくらいで仕事は終わるの?」
「そうね、ケントが妖精国に招待されたって言った時から早めに調合していたから……明日には全て終わるかしら」
「あららん? それじゃあ……明日の夜、私達二人で女子会しない? 夜になれば、クルゥなら疲れてて早く寝ているでしょうし」
「いいわねっ! じゃあ、直ぐに残りの調合を終わらせるわっ!」

 スキップをしながら自室へと向かうグレイシスを見てから、私も明日が楽しみだと笑う。



 翌日夜――

 本を読んでいたクルゥが「ボク、疲れたからもう寝るよ」と部屋に戻って行ったので、その後ろ姿に「おやすみぃ~」と手を振ってから、そろそろ女子会の準備でもしましょうかと台所へと行き、まずは冷蔵庫を開ける。
 冷蔵庫の中には、数日分の食事が用意されて置かれている。
 この中は魔法で拡張されているから、思ったよりも中に物がよく入る。

 妖精国へ行く前にケント君にお願いをして、食事以外の、お酒を飲む時のおつまみやデザートなどなど、多めに作ってもらっていたのよね!

 冷蔵庫の中には、ケント君の手書きのメモが貼り付けてある。
 これはいつもケント君が一日以上『暁』を離れる時に書いていく、メモだ。
 何が書かれているのかというと――

『フェリスさん、グレイシスさん、クルゥ君、冷蔵庫の一段目のから三段目の棚には朝食から夕食時に食べるものを置いています。四段目は、お二人がお酒を飲む時のおつまみとデザートを作って置いてます。お二人が好きそうなものをたくさん作りましたので食べてくださいね! クルゥ君用のデザートも作ってるから食べてね!』

 こんなことが書かれているのですよ。
 ケントくぅ~ん、いつもありがとう!
 さすが我が『暁』の料理番。私の目に狂いはなかった!

 なにを食べようかな~とルンルン気分で中を眺めながら、四品を選ぶ。

 一皿目は、いろんな食材が一口サイズにカットされ、それを重ねて可愛らしいピッグで刺した『ピンチョス』。
 二皿目は『マッシュポテトの生ハム巻き』、三皿目は『野菜と海鮮たっぷりアヒージョ』、そして四皿目はデザートの『丸ごとリゴのシナモンバター焼き』である。

 男性陣と一緒に飲む場合は、ケント君が用意するおつまみはけっこうガッツリ食べれるやつが多い。

 それを考えると、今回私達のために用意してくれておつまみは、食べ応えはあるけど見た目も華やかで、とってもオシャレで美味しそう!
 鼻歌を歌いながら、おつまみをテーブルの上に置いていき、使うグラスも棚から出してセットする。

「ふんっ、ふ、ふ~ん♪ ではでは、お酒はなにを飲みましょうかね~」

 地下にあるお酒が置かれている部屋へ行き、どんなお酒を飲むか悩む。
 今回のおつまみであれば、どんなお酒にも合うからね。
 お酒を選びながら、ふとケント君が行った妖精国のことを思い出す。

『な、な、な……わしが、大っ切にしていた酒が……なくなっとる!? フェリス、チェイサーっ、お前らと言う奴はー!』 

 妖精国の長老団のまとめ役である、オレフェカじー様が大事にしていたお酒を飲み干しちゃって、特大の雷が私とチェイサーの頭上に落とされた。
 でも、あれはオレフェカじー様だって良くなかったと思うのよね~、と思いつつ、当時のことを思い出す。

 それは妖精国にチェイサーと二人で遊びに行った時に、オレフェカじー様に「お前達、美味い酒があるから飲みにこんか?」って誘われたことから始まる。
 オレフェカじー様と私とチェイサーの三人で(その頃のデレルはまだ小さくて呼ばれなかった)、お酒を飲んでいたのよね。
 私とチェイサーは結構飲める口だから、速いペースで飲んでいた。
 普段チビチビ飲んでいたオレフェカじー様は、私達のペースにつられていつもより早く大量のお酒を飲んで――あれはかなり酔っていたわね。

 そしたら、酔っ払ったオレフェカじー様はが「はっはっはっ! わしの部屋にある酒は好きなだけ飲んでいけぇ~い!」て言った後に、潰れて寝ちゃって……

 そんなことを言われたものだから、私とチェイサーはオレフェカじー様の部屋にあるお酒をいっぱい飲んだわけよ。
 中でもちょっと厳重な保護魔法がかけられた葡萄酒が入った瓶を、チェイサーが見付けてきてそれを一口飲んだら――すっご~く美味しかったの!
 あまりの美味しさに、気付いたらかなりの本数を飲み干しちゃっていたのよね。

 でも、オレフェカじー様は好きなだけ飲んでもいいって言っていたから大丈夫でしょ、ってチェイサーと二人で話し合っていたんだけと……違った。

 まさかそれが五千年ものの葡萄酒で、オレフェカじー様が命の次に大事にしていたものだと思わなかったのよ。
 それを三本も飲み干しちゃったものだから、そりゃあもう素晴らしいほどの大激怒だったわ。
 何度も謝ったんだけど、「謝るくらいなら、同じ葡萄酒をわしの元に持って来い! それまでこの国には一歩も入らせんっ」と怒鳴られて国から放り出されたのよね。

 チェイサーと二人で今も五千年ものの葡萄酒を探し回っているんだけど、超絶レア過ぎてどこにも出回ってないのと、お酒の所有者に会っても全員「どんなにお金を積まれてもやらん!」と口を揃えて言うものだから、私とチェイサーは一生妖精国に入ることは出来ないんじゃないかしら?
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