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5巻
5-1
しおりを挟むデレル君からの招待状
僕、山崎健斗はある日突然、気が付くと異世界にいた。
どうしたものかと途方に暮れたが、なぜか持っていたタブレットに入っていた、様々なアプリのおかげで快適に過ごせそうだということが判明する。
冒険者となった僕は、Bランクの冒険者パーティ『暁』に加入して、使役獣を手に入れたり、魔法薬師の資格をゲットしたりと、楽しく過ごしていた。
つい最近は、暁のメンバーのクルゥ君の頼みで、相棒となる使役獣を一緒に探しに行き、『クリディナンディー』という鷲に似た魔獣を仲間に迎えることが出来た。
魔法薬師の師匠であるグレイシスさんと一緒に受けた依頼では、かつて『龍の息吹』というパーティで一緒だったことのあるカオツさんと再会する。
依頼中、グレイシスさんの魔力が暴走し、彼女の正体が魔族だということも判明したけど、カオツさんの協力で、無事に魔力の暴走を解決出来た。
そしてカオツさんはというと、暁のリーダーであるフェリスさんの策に嵌められ、僕達のパーティに入ることになったんだ。
それから少し経ち、僕のもとには『今年度の最優秀魔法薬師と認められたケント・ヤマザキ氏を、妖精族の国へ招待する』という手紙が、友人で魔法薬師協会会長の妖精族、デレル君から届いたのだった。
朝、目を覚ました僕は、早速グレイシスさんに会いに行くために跳び起きる。
そして昨晩デレル君から送られてきた一通の手紙を握り、部屋を出ると、暁のパーティハウスにあるグレイシスさんの部屋へと向かった。
同じ魔法薬師である彼女ならこの手紙について知っているんじゃないかと思ったからだ。
本当は、昨日手紙を見た時すぐに聞きたかったけど、さすがに夜遅くにグレイシスさんのところに行くのもなぁと思い、翌日に回すことにしたのだった。
グレイシスさんの部屋の前に着き扉をノックするが、返事がない。
「あれ? 部屋にいると思ったんだけどな」
少し待っても物音もしなかったので、諦めてその場を後にする。
もしかするとフェリスさんの執務室にいるのかな、とそっちも確認したんだけど……誰もいなかった。
「下にいるのかな?」
階段を下りて居間に入ったところで、グレイシスさんを見つけた。
テーブルに座ってフェリスさんと一緒にお茶を飲みながら談笑しているところであった。
二階から降りて来た僕に気付いたフェリスさんが、一旦グレイシスさんとの会話を切ってこっちに声をかけてくれる。
「あれ、ケント君。どうしたの?」
「ちょっとグレイシスさんにお話ししたいことがありまして……」
「え、私?」
僕がそう言うと、名前を呼ばれたグレイシスさんが驚いた顔で振り向く。
たぶん自分に用があると思っていなかったのだろう。
座っている二人の側に行き、僕は手に持っていた手紙をテーブルの上に置いた。
「実は、魔法薬師協会から妖精国への招待状が届いたんです」
「あら、懐かしいわね~」
僕の説明にフェリスさんが目を細めた。
懐かしい? なにがだろう? と首を傾げていると、フェリスさんが教えてくれた。
「何年も前にグレイシスが魔法薬師になった時も、同じ内容の手紙がきたのよ」
なるほど、だから懐かしいと言ったのか。
僕が納得していると、グレイシスさんが嬉しそうな顔を浮かべた。
「私が弟子にするほどの子なんだもの。当然の結果ね」
フフン、と自分のことのように喜んでくれるグレイシスさんを見て、心が温まる。
「グレイシスさんも最優秀魔法薬師に選ばれたことがあるんですね! あの……それじゃあ、妖精族の国にも行ったことがあるんですか?」
「え、ないわよ?」
僕が興味津々でそう聞くが、グレイシスさんは首を横に振った。
「私の時は、国への招待じゃなくて魔法薬師がプランを組んだ旅行みたいなものだったかしら。確か名前は『魔法薬師協会会長お勧め! 上級ダンジョン最奥にしかない稀少な魔法薬の素材を一週間取り放題ツアー』だったわね」
「それは……凄い企画ですね」
なんでも、五人のSランク以上の冒険者に護衛されながら、普通なら絶対入れないようなダンジョンの最奥層を探索するものだったらしい。
協会で買おうとすると小さな種一つでさえウン百万円……いや、ウン百万レンもするような素材が取り放題で、しかもSランク冒険者の護衛代やら費用やらは、全て無料とのこと。
「あれは良かったわ~」
その時を思い返してしみじみと言うグレイシスさんの横で、フェリスさんが口を開いた。
「妖精の国への招待だなんて、ケント君がデレルの友人だからってのもありそうね」
「え、そうなんですか?」
「妖精族って社交性はある方なんだけど、他部族を自国へ招き入れることは滅多にないのよ。長く生きているエルフの私だって、まだ二回しか入ったことがないんだから」
ちょっとフェリスさんの年齢が気になるも、それは聞いちゃいけないと本能が叫んでいたので、違うことを聞いてみることにする。
「どんな感じの種族なんですか?」
「そうね~。見た目は私達エルフとそんな変わりがないかな。ただ、どんなものでもすっごく派手なのが好きかしら」
「そうなんですか?」
「デレルや協会の副会長のリーゼの格好を思い出してくれたらいいと思うんだけど、全身に装飾品がジャラジャラ飾り付けてあるじゃない? あれをさらに増やした感じかしら。それに、あの二人は人間の国にいるのが長いから服装もまだ大人しめだけど、妖精族の国にいる人達は……なんていうか大胆ね」
フェリスさんの言葉を聞いても、いまいちピンとこなかったが、僕はひとまずふむふむ、と頷いた。
そして、僕とフェリスさんの会話が切れたころで、頬杖をつきながら手紙を見ていたグレイシスさんが口を開く。
「詳しく読んだけど、妖精の国に一週間滞在出来るみたいね。行く日は今日から一ヶ月後。あ……それに、下に小さな文字で『三人までなら同伴者可』って書いてあるわ」
「ホントですか? じゃあ、フェリスさんとグレイシスさん、一緒に行きませんか?」
僕は師匠であるグレイシスさんと、それにパーティリーダーのフェリスさんなら安心だという気持ちでそう提案する。
しかし、二人ともちょっと残念そうな表情を浮かべ、首を横に振った。
「ごめんね、ちょっと最近忙しくて」
そう言うグレイシスさんから詳しい話を聞いたら、大量の魔法薬の依頼が何件か入ったとのことだった。
これから素材を取りにダンジョンに行き、調合して全ての依頼人に納品するまで、短く見積もっても一ヶ月以上はかかるので行けないそうだ。
まぁ、そういうことならしょうがないですよね。
では、もう一人のフェリスさんはどうしてかと言うと……
「ごめんねぇ~。私の場合は、妖精族の国には出入り禁止になってて……」
頭をかきながら、アハハと笑うフェリスさん。
僕は出禁という衝撃の理由を聞かされ、唖然としてしまう。
さすがにグレイシスさんもそれは知らなかったらしく、苦笑して尋ねる。
「いったい何をやらかしたらそんなことになるのよ」
「黙秘権を行使するわ」
僕とグレイシスさんはニコニコと笑うフェリスさんを見た後、二人で視線を合わせて頷く。
――もうこの話はしないことにしよう。
僕達が共通認識を持ったところで、フェリスさんは僕に笑顔を向けた。
「妖精国に行くまでまだ時間もあるし、そんなに緊張しなくても大丈夫よ」
最後に、妖精国に行く時に必要な持ち物や国内でのルールはデレル君に聞けばいい、というアドバイスをもらい、心のメモ帳に書き留める。
すると、僕達の話が落ち着いたタイミングでクルゥ君が二階から降りてきた。
そして、俺の顔を見るなり声をかけてくる。
「ケント、これから町に行くんだけど一緒に行かない?」
「うん、行こう!」
僕は返事をしてから、フェリスさんとグレイシスさんに相談にのってくれたことへの感謝を述べて、その場を離れたのだった。
「クルゥ君お待たせ。それで、なにか買いたいものとかあったの?」
早速僕は買い物の予定をクルゥ君に尋ねる。
「幻惑系の毒を持つ魔草が多く生息するダンジョンに今度行こうと思っているんだけど……魔法薬を使う以外にも何か対策をした方がいいかな~と思って、防具屋にそういうのを無効化出来る装備があるか見ようと思ってるんだ」
「確かに、魔法薬がなくなった時のことも考えて、いろいろと備えた方がいいかもね」
「でしょ? それと、最近美味しい果物ジュース屋さんが出来たって聞いたから、そこも行ってみたいんだ!」
「おっ、いいね!」
僕とクルゥ君がそんなことを話しながら玄関を出ると、外で走り込みをしていたらしいカオツさんがちょうど帰って来たところだった。
「あ、カオツさんお帰りなさい」
「お帰り~」
「あぁ……お前達はこれからどこか行くのか?」
「うん、ケントと一緒に町で買い物しよっかなって。装備を見たり、話題の果物ジュースを飲みに行ったりする予定なんだけど……よければカオツも一緒に行かない?」
クルゥ君はそう言って、カオツさんを誘う。
走り込みをした後だというのに汗一つかいていないカオツさんは、心底興味がなさそうな顔をしながら口を開く。
「あ? 俺は別にそういうのは飲まな――」
「まぁまぁ、そう言わずに! カオツも一緒に行こうって」
「や、だから俺は……」
「そうですよカオツさん、三人で一緒に行きましょう」
クルゥ君に続いて僕がそう言うと、カオツさんは溜息を一つ吐く。
「…………はぁ、分かった」
そして、僕達の後ろをのそのそと付いて来てくれた。
僕とクルゥ君が最近になって気付いたことだが、カオツさんは意外と押しに弱い。
特に子供である僕やクルゥ君のお願いは、嫌そうな顔をしながらもちゃんと聞いてくれる。
そのことに気付いたクルゥ君は、町へ行く時やダンジョンで何か必要な物を手に入れたいと思った時に、よくカオツさんに声をかけるようになった。
カオツさんもすでに何度か同じパターンで誘われていることを覚えているため、諦めが以前より早い。
三人で話しながら歩いていると、あっという間に町に着いた。
ちなみに、今は僕とクルゥ君とカオツさんだけで、僕達の使役獣達は一緒に来ていない。
僕の使役獣達とクルゥ君の使役獣とでダンジョンに遊びに行っているのだ。
皆けっこう仲が良いんだよね。
町は今日もたくさんの人達で賑わっていた。
人混みを避けて歩きながら、僕はクルゥ君へと顔を向ける。
「クルゥ君、そういえば果物ジュース屋さんってどこにあるの?」
「えっとね、噴水の近くで露店を開いてるって聞いたんだけど……あぁ、あそこだ!」
クルゥ君が指さす方向へ僕とカオツさんが顔を向ければ、凄い長蛇の列が出来ている露店が目に入った。
その列を見た瞬間、カオツさんは嫌そうな顔をする。
「金は渡すからお前らだけで行ってこい」
そしてカオツさんは懐から三千レンを取り出して僕達に渡し、すたすたと近くにある木陰のベンチへ向かって行ってしまった。
「「ありがとうございます!」」
離れていく後ろ姿に向かってお礼を言い、僕とクルゥ君で列に並ぶ。
「カオツさん、太っ腹だね!」
「だね」
ある程度の時間が経ってから、ようやく店員さんの前に立ち、メニューを見る。
店員さんの前にはたくさんのフルーツが並べられていて、どれにしようか悩んでしまった。
聞けば単品でもいいし、いろんな種類を混ぜたミックスジュースも作ってくれるらしい。
「じゃあボクはリゴのジュースで! ケントはどうする?」
「ん~、店員さんのおススメがあればそれでお願いします」
「あ、カオツのはどうしようか?」
「カオツさんって意外と甘いのが好きだから、チーゴのジュースでもいいんじゃないかな?」
「そうだね、それでいこう! 店員さん、あとチーゴのジュースもお願い」
「あいよっ、ちょっと待ってておくれ」
シロクマの獣人で、ふっくらした見た目のおばちゃんは僕達にニカッと笑って、三つ用意したグラスの中に氷と果物を入れていく。
ちなみにリゴはリンゴのような、チーゴはイチゴのような果物だ。僕のは柑橘系のミックスジュースだった。
そしておばちゃんがグラスの上に手を翳すと、グラスの中で氷と果物がまるでミキサーにかけられているかのようにグルグルと回る。
「「おぉ! 凄い!」」
目を輝かせて見ている僕達の姿に、シロクマのおばちゃんが笑った。
「これを見たくてウチの店に何度も来るお客さんが多いんだよ」
どうやらこの作り方は、ここのウリだそうだ。周辺で出している飲み物系のお店では、このおばちゃんしか今のところ出来ないらしい。
少量の水の魔法と風魔法を使って、グラスを傷付けず、さらに中身を零さずに中で綺麗に混ぜ合わせるのは結構難しく、かなり繊細な作り方なのだそうだ。
おばちゃんはストローを入れた後、大きな体を屈ませながら僕達に手渡してくれた。
「はいよ、お待たせしました」
出来上がったジュースが入ったグラスを手に持てば、凄くキンキンに冷えている。見た目も美味しそうだ。
グラスを受け取った後、お礼を言いながらおばちゃんにお金を渡す。
「ありがとうございまーす」
「ありがとうございます」
「はいよ、また来ておくれ!」
僕達がカオツさんの元に向かうと、カオツさんは先ほどのベンチに座っていた。
「お待たせしました。そしてご馳走さまです」
「ごちそうさまー!」
そう言いながら、カオツさんを挟むように両隣に座る僕とクルゥ君。
一瞬ベンチの端に動こうとしていたカオツさんは、居心地悪そうな顔をするも、そのまま何も言わずに足を組み直す。
余ったお金を返しながらチーゴのジュースを手渡すと、そのままズゴゴゴッと音を立てながら、無言で飲み始めた。
表情には出ていないが、勢いよく飲んでいるところを見るに、お気に召したようだ。
「ねぇ、そういえばさ……」
しばらく皆で無言になって飲んでいると、クルゥ君が突然口を開いた。
視線をクルゥ君に向ければ、ストローから口を離したクルゥ君がカオツさんを見ていた。
「今まで聞きそびれてきたんだけどさ、カオツって……龍の息吹の時、なんでケントのことをすっごく嫌ってたの?」
カオツさんの本心
僕はクルゥ君のドストレートな質問のせいで、飲んでいたジュースを鼻から出しそうになった。
ズキズキと痛む鼻を押さえながらクルゥ君の顔を見ると、クルゥ君は真剣そうな表情で話を続ける。
「けっこう前にグレイシスとケントの三人で、町で買い物した時だったかな……? そこでバッタリ出会ったカオツが、戦えないケントのことを馬鹿にしてたじゃん。どうしてあんな態度をとったのか気になってさ」
カオツさんは、ストローに口を付けてチューッとジュースを飲み直すクルゥ君を一瞥すると、フンッと鼻を鳴らした。
「別に、こいつ自身のことは……そこまで嫌いってほどでもなかった」
そう言ってカオツさんは肩を竦める。
えっ、そうだったんですか!?
僕が心の中でそう叫んでいると、カオツさんはチラリと噴水の方へ顔を向ける。
そして、噴水の近くでパンくずのようなものを鳥に与えている五歳くらいの男の子を見ながら、僕達に問いかけた。
「あそこに子供がいるだろ?」
あの男の子がどうしたのかと思い、僕とクルゥ君が首を傾げていると、カオツさんは僕達に問いかける。
「もしあの子供が俺達と一緒にダンジョンに行きたいって言ったら……どうする?」
もちろん、答えはNOですね。
あんな武器を持ったこともないような小さな子供を連れてダンジョンに行くなんて、想像しただけでぞわっとする。
たとえ弱い魔獣しかいない初級ダンジョンの入り口付近に行くだけだとしても、かなり危険だ。
「連れて行かない」
クルゥ君が先にボソッと答えた。
「僕も連れて行けないと断りますね」
僕達の答えを聞いた後、カオツさんは再び問いかける。
「荷物持ち……雑用としてでもいいから行きたいって言ったら?」
僕達は揃って首を横に振った。
「その理由は?」
カオツさんに促されるまま、クルゥ君と僕は連れていけないと考える理由を並べていく。
「だって、仮に初級ダンジョンだとしても稀に強い魔獣が出てくる時だってあるし……戦い方を知らないってことは、自分の身を護るすべだって知らないわけだからね」
「僕達がどんなにその子の安全に注意していても、酷い怪我を負うことだってありますし――あっ」
クルゥ君の言葉に同意しながら、そこまで言ったところで、僕はハッとなった。
これ、まんま僕のことを言ってない?
「今言ったこと、以前のお前に全部聞かせてやりてぇよ」
バッとカオツさんを見ると、カオツさんは頭をかいていた。
「はっきり言って、龍の息吹にいた頃のお前は、あの子供と同じようなものだったんだよ。まぁ、五歳児ではなかったが……一度も剣を握ったこともない、危機感の足りないガキだった」
「…………」
「俺は最初から雑用係なんて反対だったんだ。確かに、身の回りのことをやってくれる奴がいれば助かりはする。だが、これからAランクを目指すパーティに戦闘力がゼロの奴が来ても、足手まといになることは分かっていた。それに戦闘中なにかあれば、そいつを護りつつ戦わなければならなくなる。簡単な魔獣を相手にしてる時ならいいが、自分達よりも強い魔獣が相手の場合はどうなる? そいつを庇いながら戦ってなんとかなるか?」
「それは……」
「無理かも……」
カオツさんの言葉に、僕とクルゥ君は俯いた。
そんな僕達に視線を向けながら、カオツさんは口を開く。
「確かに、俺はお前にキツイ態度や言葉を投げつけていた……それは認めるよ。だが、何度か兄さんやルルカ達が戦い方を教えようかと言っていたのに、自分は弱いし武器を持つのは怖いから、っていう感じで逃げてただろ」
そういえば龍の息吹にいた頃にリーダーのカルセシュさんをはじめ、何人かのメンバーから特訓を提案されたことがあったな。
あの時はメンバーを裏からサポート出来ることにやりがいを感じてたし、戦えなくてもいいなんて考えてたけど……
今思えば、いざという時の自衛手段を持っておけということだったのに、僕はそれを無視して、強力なパーティメンバーの存在に甘えていたのかもしれない。
「うぐっ」
図星をつかれて思わず呻いてしまった僕の心を見透かすように、カオツさんは続けて言う。
「化物級に強ぇ兄さんや、あのうぜぇ取り巻き連中がいれば、お前は安全だっただろうが……常にあいつらがいる依頼があるわけじゃない。ようやくAランクになれたような奴らだけで受ける依頼に、お前のような奴がちょこちょこ付いて歩いていても危険なだけだ」
「……ごもっともです」
シュンと項垂れながら僕がそう言った。
そんな僕の様子を見て、カオツさんはまたガシガシと頭をかく。
「グレイシスが、雑用も必要な仕事だ、美味いメシや綺麗に家の中を保ってくれるのは大切なことだと言ってはいたが……まぁ、そう言えるのは暁のメンバーが、BランクパーティなのにAランク以上の実力者が集まるやつらで、戦力的に不足していないからだ。普通のパーティならそんな余裕はないし、お前のような何も出来ない雑用係を逐一気にかけて戦える奴は少ない」
だから俺は嫌だったんだ、と言わんばかりに、カオツさんは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「こいつが龍の息吹にあのままいたら、いつかぜってー大怪我してたと思うし、下手したらこの世にいなかっただろうな。だから俺ははじめから、雑用してくれる人間が必要なら、せめて冒険者でも何でもない普通の家政婦を雇えと兄さんに言っていたんだ」
カオツさんは、僕にとっても龍の息吹にとっても不幸にならないように考えて、僕を追い出す結論に至ったのだ。
クルゥ君も、僕と同じ考えに辿り着いたようで、にこやかな顔になった。
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○○○
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