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「それで? リアム様はこの少年をどうしたいのです?」

 僕達のやり取りを見ていたウェルドは、会話が途切れるとそう切り出した。
 どうって……と思いながらアルフィー君を見ると、体をビクッと震わせ、緊張したような表情で僕を見る。

「ん~、アルフィー君はどこか……孤児院が空いていたりしたら入りたい?」
「絶対に嫌だっ! あんな所にまた連れて行かれるくらいなら、今まで通り路上生活に戻ってスリをしていた方がマシだ!」

 嫌悪感を持ってそう叫ぶアルフィー君に、僕とウェルドは口を閉ざす。
 どの国にも孤児院は存在する。
 僕だって孤児院出身だ。
 だけど、その全てが子供達のことを考えてくれるような、心優しい人達が運営しているわけじゃない。
 時には子供を金儲けする為だけの道具だと思っている人だっているし、ごはんも与えずに奴隷のように扱ったり、国から出されている補助金を懐に入れて私服を肥やす者もいる。

 残念なことに、一部ではあるが人々の為に存在する教会であってもそういう行為が存在する。

『腐った大人』がいる孤児院は、親がいない孤児達にとっては逃げ場のない地獄のような場所だと言える。
 そんなところから逃げ出した子供達はどうなるかと言うと花をアルフィー君のように町のどこかで路上生活者になってスリを生業にして生きていくか、

「ウェルド、アルフィー君を助けたいと思っているんだけど、孤児院以外で……どうにか出来ない?」

 一国の宰相であったウェルドであれば、僕が考えるよりもアルフィー君にとっていい選択肢が多く出るのではないかと思ってそう聞いてみる。
 ウェルドは顎に手を当ててしばらく考え込んでから、アルフィー君に視線を向ける。

「君、年齢は?」
「……十歳」
「今までは路上生活をしながらスリをしていたみたいだが……それ以外にもなにかしていたのかい?」
「…………」
「あぁ、別にその事を咎めているわけでも、聞いたからと言って自警団に突き出すこともしないと誓うよ」

 ウェルドが手を上げてそう言えば、アルフィー君には本当に言ってもいいのか疑わしいという表情をしながらも、口を開く。
 アルフィー君の話によると、街にある飲食店や青果店、服屋や宝石店などいろんなお店のお得な情報を、街へ遊びに来ている旅人や旅行客に売っているそうだ。
 たまに貴族の屋敷に務めているメイドや馭者、料理人達に教えたりしているらしい。

 そして、そういう人達と普段から仲良くしておいて、子供だからと油断しているのをいいことに屋敷内の出来事や人間関係を巧みに聞き出し、その情報を闇ギルドに売ったりしてるのだとか。

 小さな子供だからと油断して、ポロッと口が滑るらしい。
 ちょっとしたものから、それなりに重大な内容を手に入れることも出来るのだとアルフィー君は得意げに笑う。
 聞き出した内容を売れば、じかなりの大金が手に入るんだって。

 なので、嫌な大人たちがいる孤児院にいるよりもよほどいい生活が出来るのだと教えてくれた。

 ただ、毎回お金が懐に入る訳じゃないし、アルフィー君と同じように路頭生活をしている同年代の子や、もっと小さな子達の面倒も見ているので、得たお金は病気をした時の診療代や薬代、それに食べ物を購入するのに消えてしまい、ほぼ赤字状態なんだとか。

 ウェルドはアルフィー君の話を聞きながら、スリや貴族の情報を集める以外にどのようなことが出来るのか、他にもアルフィー君のような子供達はどれほどいるのかなど聞き出していた。
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