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第十一章
しおりを挟むそれから暫くして。
数日後に、美咲の身体に黄疸が出始めた。
担当医師からは、覚悟を決めておくようにと言われた。
その担当医師は、今は部屋にいない。
ぺペンギンさんは、専用のリュックから首だけを出している。
急に看護師さんとかが入って来たら、直ぐにリュックへ潜り込めるように。
美咲の身体からは色々なチューブが出ている。
何という変わりようだ。
つい先日まで笑いながら話していたのに。
しかも、この部屋には以前になかった機械が運び込まれている。
狭い、とても狭い、息が詰まりそうなくらい狭いんだ。
そして、この機械達は美咲の命を救ってくれるものではない。
美咲を少しでも楽にしてくれるのならと思うが、この機械達は決して美咲の命を救えるものではない。
そう思うと斧で叩き割りたくなる。
そう思っている所へ、担当医が入ってきた。
後ろには、もう一人の老医師がついてきている。最後に院長のお出ましか。
「実は、院長の紹介で、この病気の専門医が奥様を診てみたいと言われまして。ただこう言うと大変失礼になりますが、申し訳ありませんが今から診察をしても何かの変化がある訳ではありません。それでも診察の許可をいただけるならとお願いに参りました」
「ということは、それは研究の一環として、という事ですか」
「はい、その通りです」
「ふざけるな!」
と言いたかったが、いつの間にか目を覚ましていた美咲が、
「はい、この難病が、いつか、治る日が訪れるのなら、そのために役立てられるのなら、お願いします」
老医師が前に出てきて言った。
「ご許可をいただけまして、感謝を申し上げます」
「いえ、よろしくお願いします」
と私はお願いした。
美咲が、同じ病気で苦しんでいる人の役に立ちたいというのなら、断ることはできない。
「ありがとうございます。では、すみませんが、患者様と二人きりにしてもらえませんでしょうか」
若い医師は躊躇していたが、院長の紹介の医師ということで従わざるを得なかったのであろう。
私は、若い担当医の後ろについて部屋を出た。
しまった!ぺペンギンさんを残してきてしまった。
「美咲さん?ですね」
「はい」
「お噂は、お伺いしてますよ」
「え?」
「お前! 古本屋の親父やないけ!」
「お久しぶりです。マルセリーノ統括教授」
「どういうことやねん!」
「では失礼して」
そういうと彼は自分自身の白衣のボタンと中のシャツのボタンを外し、胸を露わにして、今度は胸の扉を開け?
中から出てきた生き物が小さな翼で扉を閉めると?
水掻きの付いた黄色い足で出てきて挨拶をした」
「教授、私を忘れましたか?」
「お前、タッタリアやないかい」
「はい、地球では古本屋の老主人ですが、私達の星で私は宇宙医学の教授をしておりましたよね?」
彼は、マルセリーノと美咲を交互に見て言った。
「回りくどい言い方はやめましょう。私達の星では、この病気、治ります」
そう言うとタッタリアは、元の老医師の体へと、胸に取り付けられた扉へと、滑り込んだ。
「私は外科医ですが、研究の専門は薬理学です。で、さっきの担当医に此れまでのカルテを見させてもらいましたところ、この病気の原因として、美咲さんの場合はミトコンドリアへの自己抗体が1番の原因だと分かりました。更に、Scheuer 分類のⅢ型、と言うことで、有難い事に肝硬変が思ったほどには進行していない。Scheuer 分類のⅣ型 であれば私達にも手の施しようがありませんでした。長い話はしません。ここに私達の開発したミトコンドリアに対する抗原抗体反応を抑止する薬があります。もう一度言います、この病気を必ず治してみせます。後は肝機能が元に戻るまで、ゆっくりと養生することにだけ専念してくだされば結構です。この薬、飲んでくださいますね」
ある日の医局にて
「で、ALP、GPT、GTPの数値が下がっているんだね?」
「はい。正常に戻っています」
「血沈は?」
「正常に戻っています」
「じゃ、総コレステロールは?」
「正常です」
「じゃ、じゃ、IgMは」
「正常範囲内です」
「じゃ、じゃ、本当に、抗ミトコンドリア抗体が無くなってるの?」
「はい、認められません」
「うーむ」
「医長、どういう事でしょうか?」
「どうしてだろう?」
「どう言う訳でしょうか?」
「どう言う訳だろう?」
「こんな事って、あるのでしょうか?」
「あるんでしょうか?」
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