61 / 74
勝と謎の能力者
しおりを挟む だから俺は、小さな手で、フェルヴァの手を取り、ずっとかけてやることができなかった、優しい言葉をかけた。
「フェルヴァ、もう一度だけ謝らせてくれ。……今まで、本当にすまなかった。これからはお前のことを第一に考えるよ。だから、日中、お前がどこに行っているのか教えてくれ。俺も、お前のやってることを、手伝いたいんだ」
心からの言葉だった。
フェルヴァは俺の手を握り返し、ニタリと笑った。
「嬉しいわ、姉さん。……それじゃ、姉さんも入ってくれるわね。『至高なる魔女の会』に」
・
・
・
『至高なる魔女の会』に入会してから、しばらくの時が経った。
会の人間たちから女神のように崇められているフェルヴァの姉ということで、俺も皆から『リーゼル様』と慕われ、正直言って、少しだけ良い気分だった。
優越感が満たされたから――というわけではない。
親父の恥部が明るみになって以来、アストラス家の長女にして親父の秘書であった俺は、世間からひたすらに嗤われ、軽蔑されてきたので、『至高なる魔女の会』の皆が、俺に人間としての敬意を持って接してくれるのが、単純に嬉しかったのだ。
もちろん、『至高なる魔女の会』の基本理念である『魔法使い優生思想』に対しては、傲慢で危険な考えだと思っていた。だが、フェルヴァは別段、一般市民たちに危害を加えることもなく、魔法使いたちを率いて反乱を起こしたりする気もないようなので、いつしか俺は、こう思うようになった。
社会に居場所のない孤独な魔法使いたちの心を救うために、わざわざ『魔法使い優生思想』だなんて極端な考えを看板に掲げているだけで、フェルヴァ自身は一般人も魔法使いも、特に差別する気はないんじゃないか……と。
その考えは、半分正解で、半分間違いだった。
正解だったのは、フェルヴァは一般人と魔法使いを、特に差別してはいないということ。……何度か話して分かったが、フェルヴァはやはり、『魔法使いが世界を導く特別な存在』だとは、思っていないようだった。それに関しては、俺は素直にホッとした。
そして、間違いだったのは、『フェルヴァが魔法使いたちの心を救おうとしている』という部分だ。
「フェルヴァ、もう一度だけ謝らせてくれ。……今まで、本当にすまなかった。これからはお前のことを第一に考えるよ。だから、日中、お前がどこに行っているのか教えてくれ。俺も、お前のやってることを、手伝いたいんだ」
心からの言葉だった。
フェルヴァは俺の手を握り返し、ニタリと笑った。
「嬉しいわ、姉さん。……それじゃ、姉さんも入ってくれるわね。『至高なる魔女の会』に」
・
・
・
『至高なる魔女の会』に入会してから、しばらくの時が経った。
会の人間たちから女神のように崇められているフェルヴァの姉ということで、俺も皆から『リーゼル様』と慕われ、正直言って、少しだけ良い気分だった。
優越感が満たされたから――というわけではない。
親父の恥部が明るみになって以来、アストラス家の長女にして親父の秘書であった俺は、世間からひたすらに嗤われ、軽蔑されてきたので、『至高なる魔女の会』の皆が、俺に人間としての敬意を持って接してくれるのが、単純に嬉しかったのだ。
もちろん、『至高なる魔女の会』の基本理念である『魔法使い優生思想』に対しては、傲慢で危険な考えだと思っていた。だが、フェルヴァは別段、一般市民たちに危害を加えることもなく、魔法使いたちを率いて反乱を起こしたりする気もないようなので、いつしか俺は、こう思うようになった。
社会に居場所のない孤独な魔法使いたちの心を救うために、わざわざ『魔法使い優生思想』だなんて極端な考えを看板に掲げているだけで、フェルヴァ自身は一般人も魔法使いも、特に差別する気はないんじゃないか……と。
その考えは、半分正解で、半分間違いだった。
正解だったのは、フェルヴァは一般人と魔法使いを、特に差別してはいないということ。……何度か話して分かったが、フェルヴァはやはり、『魔法使いが世界を導く特別な存在』だとは、思っていないようだった。それに関しては、俺は素直にホッとした。
そして、間違いだったのは、『フェルヴァが魔法使いたちの心を救おうとしている』という部分だ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

恥ずかしい 変身ヒロインになりました、なぜならゼンタイを着ただけのようにしか見えないから!
ジャン・幸田
ファンタジー
ヒーローは、 憧れ かもしれない しかし実際になったのは恥ずかしい格好であった!
もしかすると 悪役にしか見えない?
私、越智美佳はゼットダンのメンバーに適性があるという理由で選ばれてしまった。でも、恰好といえばゼンタイ(全身タイツ)を着ているだけにしかみえないわ! 友人の長谷部恵に言わせると「ボディラインが露わだしいやらしいわ! それにゼンタイってボディスーツだけど下着よね。法律違反ではないの?」
そんなこと言われるから誰にも言えないわ! でも、街にいれば出動要請があれば変身しなくてはならないわ! 恥ずかしい!
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる