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第4話
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翌日。
時刻は昼の12時30分。
俺の足は図書室に向かっていた。
いつもは本を返しに行ったついでに本を借りていくのだが、昨日はそれができなかった。
なので今日は本を借りに……というのは建前で、本音を言うともう一度花岡先輩に会いたかった。
もしかしたら今日も図書室で昼ご飯を食べているかもしれない。
迷惑だと思われるかもしれないが、花岡先輩の助けに少しでもなりたかった。
俺は図書室の扉を開けた。
電気はついていなかった。
「来てない、か……」
花岡先輩が昨日座っていた席に行ってみるが、やはり花岡先輩の姿はない。
花岡先輩が来ていないのなら仕方がないと思い、以前から気になっていた本を借りて、図書室を出た。
「仕方ないよな」
今日も花岡先輩が図書室に来ている保証は何一つなかった。
昨日はたまたま来ていただけ。
図書室を出た後、階段に差し掛かったところで、下から誰かが上がってくる足音が聞こえた。
「あれ、中川くん?」
その足音は、花岡先輩のものだった。
「え、花岡先輩」
「ちょうどよかった。中川くんに用事があって、図書室に行けば会えるかなと思ってたの」
「僕も、花岡先輩に話したいことがあります」
「そう。ここじゃなんだし、図書室で話そっか」
「はい」
俺と花岡先輩は図書室に向かった。
===
「それで? 中川くんから話していいよ」
二人だけの静かな図書室。
その一角で対面になって座った俺と花岡先輩。
花岡先輩との距離は1メートルもない。
ふわりと甘い匂いが香る。
「迷惑と思われるかもしれないんですけど……」
前置きをすると花岡先輩は「うん」と相槌を打ちながらじっと俺の目を見つめる。
大きな目に吸い込まれそうになり、うまく目を合わせられない。
女性と話すのが特別苦手なわけではないが、花岡先輩を前にすると調子が狂う。
花岡先輩が綺麗すぎるのだ。
「花岡先輩の力になりたいんです」
俺は力を込めて言った。
「このまま何もしないでいると、今流れている噂が学校外に出てしまう可能性があります。そうなれば先輩の仕事にも大きく影響すると思いますし、何より先輩が不憫すぎます。だからこの噂を流した生徒を見つけ出して、先輩の噂が真実ではないと証明したいんです」
花岡先輩は驚いた表情をしたあと、
「実は私も、中川くんと同じことを思ってたの。誰が私の写真を撮ったのか見つけ出さないと、今後も変な誤解を産む可能性もある。だから、私からお願いさせて欲しい」
花岡先輩は一呼吸置いたあとまっすぐ俺を見て言った。
「中川くん。私と一緒に犯人を探し出して欲しいの」
こうして、俺と花岡先輩の犯人探しが始まった。
しかし、この一週間後。
裏掲示板に新たな写真が投稿された。
それは、図書室で俺と花岡先輩が話しているところを捉えた写真。
『花岡美咲、後輩とも男女の関係をもつwwww』
このコメントとともに公開されたこの写真は、瞬く間に学校中に広まった。
時刻は昼の12時30分。
俺の足は図書室に向かっていた。
いつもは本を返しに行ったついでに本を借りていくのだが、昨日はそれができなかった。
なので今日は本を借りに……というのは建前で、本音を言うともう一度花岡先輩に会いたかった。
もしかしたら今日も図書室で昼ご飯を食べているかもしれない。
迷惑だと思われるかもしれないが、花岡先輩の助けに少しでもなりたかった。
俺は図書室の扉を開けた。
電気はついていなかった。
「来てない、か……」
花岡先輩が昨日座っていた席に行ってみるが、やはり花岡先輩の姿はない。
花岡先輩が来ていないのなら仕方がないと思い、以前から気になっていた本を借りて、図書室を出た。
「仕方ないよな」
今日も花岡先輩が図書室に来ている保証は何一つなかった。
昨日はたまたま来ていただけ。
図書室を出た後、階段に差し掛かったところで、下から誰かが上がってくる足音が聞こえた。
「あれ、中川くん?」
その足音は、花岡先輩のものだった。
「え、花岡先輩」
「ちょうどよかった。中川くんに用事があって、図書室に行けば会えるかなと思ってたの」
「僕も、花岡先輩に話したいことがあります」
「そう。ここじゃなんだし、図書室で話そっか」
「はい」
俺と花岡先輩は図書室に向かった。
===
「それで? 中川くんから話していいよ」
二人だけの静かな図書室。
その一角で対面になって座った俺と花岡先輩。
花岡先輩との距離は1メートルもない。
ふわりと甘い匂いが香る。
「迷惑と思われるかもしれないんですけど……」
前置きをすると花岡先輩は「うん」と相槌を打ちながらじっと俺の目を見つめる。
大きな目に吸い込まれそうになり、うまく目を合わせられない。
女性と話すのが特別苦手なわけではないが、花岡先輩を前にすると調子が狂う。
花岡先輩が綺麗すぎるのだ。
「花岡先輩の力になりたいんです」
俺は力を込めて言った。
「このまま何もしないでいると、今流れている噂が学校外に出てしまう可能性があります。そうなれば先輩の仕事にも大きく影響すると思いますし、何より先輩が不憫すぎます。だからこの噂を流した生徒を見つけ出して、先輩の噂が真実ではないと証明したいんです」
花岡先輩は驚いた表情をしたあと、
「実は私も、中川くんと同じことを思ってたの。誰が私の写真を撮ったのか見つけ出さないと、今後も変な誤解を産む可能性もある。だから、私からお願いさせて欲しい」
花岡先輩は一呼吸置いたあとまっすぐ俺を見て言った。
「中川くん。私と一緒に犯人を探し出して欲しいの」
こうして、俺と花岡先輩の犯人探しが始まった。
しかし、この一週間後。
裏掲示板に新たな写真が投稿された。
それは、図書室で俺と花岡先輩が話しているところを捉えた写真。
『花岡美咲、後輩とも男女の関係をもつwwww』
このコメントとともに公開されたこの写真は、瞬く間に学校中に広まった。
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