【実話】私は人生を諦めた〜教育委員会の対応〜

みゆき

文字の大きさ
上 下
41 / 50

実際にパワハラを相談してみて。教育委員会は頼ってはいけない

しおりを挟む
「この子、俺の子だった」
「へ?!」
「ど、どういう事かニャ?!」

 ルイをお姫様抱っこして世界樹の中から出てきたアズの第一声に、エカとナムロ王様が困惑する。
 それから、アズとルイが知った事を聞いて、アズの発言の意味を理解した。


 実の子……正しくはその生まれ変わりと知ってから、アズのルイに対する溺愛っぷりは凄かった。
 お城で暮らすルイに差し入れを持ってきたり、ルイがねだらなくてもお姫様抱っこしたり頬や額にキスしたり。

「学校の授業で必要な素材があれば獲ってきてあげるからね」
「は、はい……」

 我が子の授業に使う素材の提供も惜しまないアズは、竜でも余裕でソロ狩り出来る特S級冒険者。
 一方でアズに惚れかけていたルイは、前世のお父さんだと知ってしまい困惑気味だ。


「お母さんと話をしに行こう」

 学園が長期休暇に入ると、アズはルイを誘ってアサギリ島に向かった。
 世界樹の中で保管されている亡骸ではなく、この世に残されたルルの霊に会わせてあげるらしい。
 アズが見せたいものがあるらしくて、エカとボクも同行したよ。
 エカとボクにとっては、魔王討伐隊として行って以来のアサギリ島訪問だ。


 アサケ大陸北東の海上に浮かぶ、アサギリ島。
 草も生えない不毛の地で、かつては魔族と魔物がいる危険な場所だったけど、アズとルルが住むようになってから雰囲気が変わったと聞いていた。

「どう? ちょっと風景良くなっただろ?」
「ちょっとっていうレベルじゃない気がするよ」

 エカがツッコミを入れる通り。
 岩と土しか無かった大地が、一面の花畑に変わっていた。

「……綺麗~……コスモス畑みたいだ……」

 元の世界にある花畑を連想したのか、ルイが呟いた。
 咲き乱れる花々は種類も色も様々で、単色の花畑よりも華やかに見える。

「世界のあちこちから集めて植えたんだよ」

 ベノワの背中の上から花畑を見下ろして、穏やかな声でアズが言う。

「最初はルルが花を育てようって言って、2人で行った場所から花を少しずつ持ち帰って植え続けたんだ。今はそれが自然に広がって咲いてるよ」

 花々に慈しむような眼差しを向けた後、アズは花畑の中心にある小屋の隣に立つ、1本の木の近くにベノワを着陸させた。

「ルル、ただいま」

 アズが声をかけると、瑞々しい緑の葉を茂らせる木の枝の間から、幻のように実体のない女性が現れた。
 世界樹の中で眠る女性と同じ青いワンピース、長い黒髪と同じ色の犬耳とシッポ、開かれた黒い瞳は艷やかな宝石のように澄んでいる。

『おかえり、アズ。久しぶり、エカ』

 念話が優しい波長で心に流れてくる。
 精霊のように神秘的な雰囲気を漂わせて微笑むルルは、アズの隣にいるルイを見てハッとした。

『アズ、その黒髪の子は……?』
「ルルが異世界へ送った子だよ」

 アズがルイの両肩に手を置き、微笑んで伝える。

『……よかった。生まれてきてくれて凄く嬉しい……』

 その時浮かんだルルの微笑みは、切ないくらいに綺麗だった。

「……」

 言葉の代わりに、ルイの瞳から涙が流れ始める。
 何故泣いているのか、本人も分からない様子だった。
 次々に頬を伝う涙が、地面に落ちて吸い込まれてゆく。

『日本のお父さんとお母さんは、どんな名前を付けてくれたの?』
「……る……【琉生ルイ】……です……」

 問いかけられて、ルイは嗚咽しながらやっとの思いで答えた。

『素敵な名前、これからはルイって呼ぶね』

 ルルがまた微笑む。

『……おかえり、ルイ……』

 その【声】に呼応するように、周囲の花々から無数の花びらが舞った。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

生きる 〜アルコール依存症と戦って〜

いしかわ もずく(ペンネーム)
エッセイ・ノンフィクション
皆より酒が強いと思っていた。最初はごく普通の酒豪だとしか思わなかった。 それがいつに間にか自分で自分をコントロールできないほどの酒浸りに陥ってしまい家族、仕事そして最後は自己破産。 残されたものはたったのひとつ。 命だけ。 アルコール依存専門病院に7回の入退院を繰り返しながら、底なし沼から社会復帰していった著者の12年にわたるセミ・ドキュメンタリー 現在、医療従事者として現役。2024年3月で還暦を迎える男の物語。

うつ病WEBライターの徒然なる日記

ラモン
エッセイ・ノンフィクション
うつ病になったWEBライターの私の、日々感じたことやその日の様子を徒然なるままに書いた日記のようなものです。 今まで短編で書いていましたが、どうせだし日記風に続けて書いてみようと思ってはじめました。 うつ病になった奴がどんなことを考えて生きているのか、興味がある方はちょっと覗いてみてください。 少しでも投稿インセンティブでお金を稼げればいいな、なんてことも考えていたり。

【ショートショート】おやすみ

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

カクヨムでアカウント抹消されました。

たかつき
エッセイ・ノンフィクション
カクヨムでアカウント抹消された話。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...