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まさかの緊急事態。全てやり直し

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私の初出勤日。学校の案内によると、授業開始日からになる。

まずはメイン教員は三田教諭の授業にサポートとして入った。そこで目にした光景に目を疑った。

生徒が見るパソコンのディスプレイには、私が知らない資料が表示されていた。教科書を開く指示もなく、ディスプレイの内容を全て授業として組み込んでいたのだ。

教科書とは違う内容、展開。聞いていた話と違う。それでも、今は授業のサポートに集中をしなければ。

分からない事がある生徒には、サポートをしながら、内容を必死に追う。頭は混乱していたが、これが現実。

授業が終わり、情報準備室へ向かう。安田教諭と三田教諭が揃ったところで質問をした。

「教科書とは異なった授業を行うのですか?」

「去年と同じ流れでやるから。そこのパソコンに資料は入ってる」

安田教諭は言った。

「安田先生が作った資料で授業を進める事が基本だからね」

三田教諭も言う。

そう、私の確認不足だった。三人の教科教員が存在するならば、足並みを揃えて内容を統一しなければならない。

新年度が始まる前に、一つ連絡をして、最終確認さえしていれば。

教科書通りに授業を展開していく。そう言ったのは確かだ。しかし、実際は存在を教えてもいない資料を基本に教科書を使わない授業展開をするもの。

幸いにも、この日は、私がメイン教員になる授業はありませんでした。そのため、受け持ち授業が終わったらすぐに帰宅をして、徹夜で指導案の再作成をする事に。勿論、三田教諭の授業を参考にできたので、初回は何とかなりそうだった。

そして、私がメイン教員として教壇に立つ授業。初授業で実習ではない。徹夜で仕上げた授業。付け焼刃だが、とにかくやるしかない。

前日の三田教員の授業を思い出しながら、必死に授業を展開させていく。そして、何とか目的の到達範囲まで授業をする事ができた。

授業が終わり、教科準備室にて三田教諭は反省会をすると言って足止めをした。

「声が小さい」

「授業の展開速度が」

「メリハリのある喋り方を」

彼が言う私に対する指導は、間違った事は言っていなかった。大学時代にはよく指導されていたポイントだ。次の授業では意識をしていく。

「ありがとうございます。次回は気を付けます」

そして、初めての授業が終わった。空いている時間に、とにかく次回以降の授業指導案を作成していく。全てはやり直しだった。

安田教諭の授業もサポートした。彼は厳しく生徒を指導するタイプの人間だった。生徒は静かに、つまらない表情を浮かべながら座っていた。授業とはそういうものかもしれない。私の理想とは正反対だった。

三田教員は、授業の進行に問題なく、賑やかで生徒の活気がある授業を展開していた。私が求める理想はこちらだ。

教科準備室に戻って、既に退勤しても良い時間になっている私。急いで帰って授業準備をする。そして、体を休める。
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