目が覚めたらそこは未来

みゆき

文字の大きさ
上 下
10 / 18

そこで出会ったのは仲間…?

しおりを挟む
ボロボロの部屋。血が染みている壁と床。その中で、どれくらいの時間が経ったのだろうか。時計はあるけれど、見る気にもなれない。

足音が聞こえる。ドアが開かれて、長髪の男が一人、入れられた。

体には傷が多くあり、血が出ていた。

「新人かい…?」

壁にもたれかかって座り込む。その男はまだ若く10代後半だろうか。

「あの、大丈夫ですか…?」

「あー、大丈夫大丈夫。俺はユウト言うねん。君は?」

「アキラです…」

聞きたい事はたくさんあったが、言葉が出てこない。

「まだ綺麗な身体してるって事は、今日からこの部屋に来たんか?」

「はい…」

「そか…生きる事、それだけは忘れたらあかんで」

そう言って、ユウトは目を閉じて横になった。寝息が聞こえるので、ちゃんと生きている。

これから何をさせられるのだろうか。ユウトを見る限りでは、拷問か何かを受けたような感じがする。

しばらくすると、ユウトは目を覚まして起き上がる。

「そろそろ飯の時間や」

壁から出てきたのは、パンが2個。薄い色のスープ。そして、水。

「少ないし、美味しくないけど、しっかり食べときや」

彼はパンを食べ終えたら、スープで一気に流し込んだ。

「食べへんならもらうで?」

そう言われて、僕は急いで食べ始めた。味気ないパン。薄くて水と変わらないようなスープ。

「よしよし、ちゃんと食べたな。俺は19歳なんやけど、アキラ君は?」

「16歳です…」

「そっかー、弟と同じ歳やねんな。懐かしいなあ」

受動的、受け身な僕は自分で会話を広げる事ができなかった。せっかく、ユウトさんが話しかけてくれているのに申し訳ない気持ちになる。

「大人しい子なんやなあ。まあ、よろしく頼むわ」

「こちらこそ…よろしくお願いします」

ユウトさんは食事が終わると再び横になる。痛々しい傷の血はもう止まっていた。

「自分、いつの時代から冷凍保存されたん?」

「僕ですか。僕は2020年です」

「へえー、君の方が年上っちゃ年上なんか。俺は2032年や」

「そうなんですね」

また返事だけ。そんな自分が嫌になる。聞きたい事だってたくさんあるのに。

「今が何年か気になるやろ?でもな、俺もまだ教えられてないねん」

座り込んでいる僕は、ユウトさんも情報が少ない事に落ち込み、顔を伏せる。

時間が気になり、時計に目をやると、時刻は2時過ぎ。さっきの食事は昼食になる訳か。

ドアが開き、男が二人。

「21。出てこい」

視線は僕の方へ向けられている。確か、白衣の男は僕をNo.21と言った。つまり、僕が呼ばれたと言う事だ。

「頑張ってな、アキラ君」

横になったまま、ユウトは一言だけ言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

えっちのあとで

奈落
SF
TSFの短い話です

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

もうダメだ。俺の人生詰んでいる。

静馬⭐︎GTR
SF
 『私小説』と、『機動兵士』的小説がゴッチャになっている小説です。百話完結だけは、約束できます。     (アメブロ「なつかしゲームブック館」にて投稿されております)

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

処理中です...