41 / 43
第42話 星の下で
しおりを挟む
「これも、定期的に王宮医院からの発注のおかげさ」
「そうなのよ。フィリアのお友達の皆さん、本日はうちに泊まっていって」
「ママ、友達なんて……この方はこの国の第三王子なのよ!」
「まぁ! なんてことなの! 貴方が嫌味な上司なのね……」
「くっ……」
「あ、 あと、元第一王子」
「あはは、元ですよ元!」
まさかの人物の登場に、両親は、唖然としている。さらに一行の紹介をすると腰を抜かした。それはそうだろう。この国の皇太子候補、元王子、その従兄弟、上級貴族がこんな田舎の村に来たのだから。
この日は結局、フィリアの家に泊まることになった一行。夜の食事はマシルが腕によりをかけて作ることになった。マシルが仕込みをしている間、フィリアとクルードは犬のジョンの散歩に出かける。ロワンも当たり前のように同行しようとしたが、それはルーディアスによって阻止された。
「ねぇ、クルード殿下」
「二人の時に殿下はつけなくて良い」
「……ねぇ、クルード様」
「なんだ」
「私ね、初めてクルード様に会った時、本当にあなたのことが嫌いだったの」
「そ、そうか。相変わらず手厳しいな」
そこで会話は途切れ、二人の間を歩くジョンが、二人の顔を見上げる。
「ねえ、クルード様」
「なんだ」
「魔女の嫌疑を掛けられた私をなんで助けてくれたんですか?」
「……星の呪いを解決するためにだな……」
「クルード様、本当のことを言ってください」
「何を言う、本当に……あの時は星の呪いが……」
再び沈黙は続く。ジョンは川で遊びたいのか、フィリアの顔を見上げている。
「いいよ。ジョン。遊んでおいで」
嬉しそうに、川に飛び込み走り回っている。その姿を見ながら、土手に腰を掛けるフィリアとクルード。
「犬……お前に似ているな」
「え? どこらへんがですか?」
「無邪気に自分の思いのままに飛び込んでいくところとか」
「あはは。たしかに。似てるかもしれませんね」
「溺れないか、居なくならないか、つい、目で追ってしまう……」
「私のこと、犬だと思ってるんですか?」
「いや、そういう意味ではない」
いつの間にか、日は落ち、一番星が空に輝き始める。
「さて、そろそろ料理もできている頃だろう。もどろうか」
「……はい。そうしましょうか。ジョン!帰ろ」
川の水でずぶ濡れになったジョンが二人のものとへ戻って来る。体を震わせ水しぶきを飛ばす。
「わっ! この犬!」
「あはは、冷たいっ」
空は一段と暗くなり、フィリアの家が見える頃には満天の星空となっていた。
「ねぇ、クルード様。王都と違って、この村、星が綺麗でしょ」
「ああ、そうだな」
「私、王都って星が見えないから嫌いだったんです」
「そうか」
「いつも、この村に早く帰りたいって思ってたんです」
「そうか」
「星が見えない王都なのに、なにが星の呪いって思ってたんです」
「そうか」
「でも、いつの間にか、王宮でクルード様と一緒に仕事してるのが楽しくなってたのかもしれないんです」
「そうか」
もうすぐ、フィリアの家に到着する。ジョンは家に向かって駆けていった。
「私、クルード様のこと、好きです」
「……そうか」
クルードが立ち止まる。
「フィリア、私は……幼くして母を亡くし、マシルと一緒に奴隷のような生活をしていた」
言葉に詰まりながら、クルードは、言葉を選びながら話す。
「私は……愛というものがわからないん……だ」
空を見上げながら話すクルードの目に、星のきらめきが反射する。
「その愛という物を、これから、私に教えてくれないか……」
フィリアはクルードの手を握りしめ、家へと走っていく。
二人が家に入ると、皆はテーブルに着席していた。
「お、やっと帰ってきましたね! もう食事の準備ができておりますよ」
「ん? クルード、花粉症か? 目が真っ赤だぞ」
「フフン」
「そうなのよ。フィリアのお友達の皆さん、本日はうちに泊まっていって」
「ママ、友達なんて……この方はこの国の第三王子なのよ!」
「まぁ! なんてことなの! 貴方が嫌味な上司なのね……」
「くっ……」
「あ、 あと、元第一王子」
「あはは、元ですよ元!」
まさかの人物の登場に、両親は、唖然としている。さらに一行の紹介をすると腰を抜かした。それはそうだろう。この国の皇太子候補、元王子、その従兄弟、上級貴族がこんな田舎の村に来たのだから。
この日は結局、フィリアの家に泊まることになった一行。夜の食事はマシルが腕によりをかけて作ることになった。マシルが仕込みをしている間、フィリアとクルードは犬のジョンの散歩に出かける。ロワンも当たり前のように同行しようとしたが、それはルーディアスによって阻止された。
「ねぇ、クルード殿下」
「二人の時に殿下はつけなくて良い」
「……ねぇ、クルード様」
「なんだ」
「私ね、初めてクルード様に会った時、本当にあなたのことが嫌いだったの」
「そ、そうか。相変わらず手厳しいな」
そこで会話は途切れ、二人の間を歩くジョンが、二人の顔を見上げる。
「ねえ、クルード様」
「なんだ」
「魔女の嫌疑を掛けられた私をなんで助けてくれたんですか?」
「……星の呪いを解決するためにだな……」
「クルード様、本当のことを言ってください」
「何を言う、本当に……あの時は星の呪いが……」
再び沈黙は続く。ジョンは川で遊びたいのか、フィリアの顔を見上げている。
「いいよ。ジョン。遊んでおいで」
嬉しそうに、川に飛び込み走り回っている。その姿を見ながら、土手に腰を掛けるフィリアとクルード。
「犬……お前に似ているな」
「え? どこらへんがですか?」
「無邪気に自分の思いのままに飛び込んでいくところとか」
「あはは。たしかに。似てるかもしれませんね」
「溺れないか、居なくならないか、つい、目で追ってしまう……」
「私のこと、犬だと思ってるんですか?」
「いや、そういう意味ではない」
いつの間にか、日は落ち、一番星が空に輝き始める。
「さて、そろそろ料理もできている頃だろう。もどろうか」
「……はい。そうしましょうか。ジョン!帰ろ」
川の水でずぶ濡れになったジョンが二人のものとへ戻って来る。体を震わせ水しぶきを飛ばす。
「わっ! この犬!」
「あはは、冷たいっ」
空は一段と暗くなり、フィリアの家が見える頃には満天の星空となっていた。
「ねぇ、クルード様。王都と違って、この村、星が綺麗でしょ」
「ああ、そうだな」
「私、王都って星が見えないから嫌いだったんです」
「そうか」
「いつも、この村に早く帰りたいって思ってたんです」
「そうか」
「星が見えない王都なのに、なにが星の呪いって思ってたんです」
「そうか」
「でも、いつの間にか、王宮でクルード様と一緒に仕事してるのが楽しくなってたのかもしれないんです」
「そうか」
もうすぐ、フィリアの家に到着する。ジョンは家に向かって駆けていった。
「私、クルード様のこと、好きです」
「……そうか」
クルードが立ち止まる。
「フィリア、私は……幼くして母を亡くし、マシルと一緒に奴隷のような生活をしていた」
言葉に詰まりながら、クルードは、言葉を選びながら話す。
「私は……愛というものがわからないん……だ」
空を見上げながら話すクルードの目に、星のきらめきが反射する。
「その愛という物を、これから、私に教えてくれないか……」
フィリアはクルードの手を握りしめ、家へと走っていく。
二人が家に入ると、皆はテーブルに着席していた。
「お、やっと帰ってきましたね! もう食事の準備ができておりますよ」
「ん? クルード、花粉症か? 目が真っ赤だぞ」
「フフン」
11
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?
江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】
ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる!
※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。
カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過!
※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪
※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。
しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い!
声が出せないくらいの激痛。
この痛み、覚えがある…!
「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」
やっぱり!
忘れてたけど、お産の痛みだ!
だけどどうして…?
私はもう子供が産めないからだだったのに…。
そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと!
指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。
どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。
なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。
本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど!
※視点がちょくちょく変わります。
ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。
エールを送って下さりありがとうございました!
妹に婚約者を取られましたが、辺境で楽しく暮らしています
今川幸乃
ファンタジー
おいしい物が大好きのオルロンド公爵家の長女エリサは次期国王と目されているケビン王子と婚約していた。
それを羨んだ妹のシシリーは悪い噂を流してエリサとケビンの婚約を破棄させ、自分がケビンの婚約者に収まる。
そしてエリサは田舎・偏屈・頑固と恐れられる辺境伯レリクスの元に厄介払い同然で嫁に出された。
当初は見向きもされないエリサだったが、次第に料理や作物の知識で周囲を驚かせていく。
一方、ケビンは極度のナルシストで、エリサはそれを知っていたからこそシシリーにケビンを譲らなかった。ケビンと結ばれたシシリーはすぐに彼の本性を知り、後悔することになる。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる