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第二十五話 小白虎とドワーフのキノコ狩り

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 ◇◇◇

「おい、ドワーフ。こんな朝から酒を飲みに行くのかニャ?」
「いや、ちょいとこの季節いいものがありましてじゃな」

 小白虎とマウラは街を出ると、鉱山の方へと歩いていった。
 向かう途中、マウラがなにやら草や実を採っている。

「ニャんだ? ニャレは草なんて、毛玉を吐くときにしか食べニャいニャ」
「これは、わしの酒のアテ用のヤマゼリとムカゴですじゃ」
 
 マウラは小白虎を頭に乗せ、ドンドンと山へと入っていく。

「よし、ここらへんか。白虎様は昼寝でもしとってください」
「川で休憩かニャ」

 渓流につくと、適当な枝を切り落とし、革の鞄から、細い糸と釣り針を出す。

「ウニャ? それは?」
「魚を捕まえる用の針ですじゃ、昨日作っておったんですわ」
「これに、岩の裏にいる川虫をくっつけて……ほれ!」

 マウラが、川の岩陰に針を落とすと、ビクンっと木の枝がしなり、魚が掛かる。

「おお! 魚ニャ」
「昔、ドワーフの間では毎年釣り大会ってのがありましてのう。わしは毎年優勝候補だったんですわ」
「ドワーフは面白い遊びをしておったのニャな」
「まだまだ、ありますぞ。あと、魚を数匹釣ったら、お見せしましょう」
「あ、魚が掛かってるニャ!」
 
 小白虎とマウラにゆったりとした時間が流れる。
 元は、永い間自然の中にいた二人にとって、心地のよい時間だったのだろう。

 釣り竿をしまい、釣った魚は魚籠びくに入れる。

「さて、今日の本当の目的地に行くとしますかな」
「ウニャ!」

 マウラは、林道から外れ、木々が生い茂る山へと分け入っていく。

「ここらへんじゃったかのう。お! あったあった」
「ん? なにか落ちてるニャか?」
「アカマツタケですじゃ!見てください、白虎様」

 マウラは、嬉しそうな顔でキノコを見せるが、小白虎は期待外れだったような表情をする。
 
「ニャんだ……キノコか。つまらんニャ」
「いやいや、白虎様。このキノコ、見たことありますかい?」
「興味がニャいから、目にもとまった事がニャいニャ」

 マウラがニヤリと微笑む。
 
「ふふふ。三〇〇〇年も生きておりながら、これ知らぬとは。白虎様もまだまだじゃな」
「ニャんだと、ドワーフ風情が言いおるニャ」

 それから、三〇本ほどアカマツタケを取ると、すこし拓けた平らなところへ移動する。

 ◇◇◇
 
「さっきから、丁寧にそのキノコを焼いてる……ニャ! ニャんだ、この匂いは……」
「ふふふ。どうですじゃ? いい香りでしょう」
「ウニャ。ちょっと食べてみるニャ」

 マウラは、アカマツタケに手を伸ばそうとする、小白虎を制止し、革の鞄から酒や調味料を取り出す。
 
「これに、すこしマタタビ酒を垂らし、岩塩とさっき採った柑橘の汁を一滴っと! どうぞ。お召し上がりください」

「ニャニャニャ! これは美味いニャぁぁ」

「がはは、そうでしょうとも、そうでしょうとも。ささ、マタタビ酒もぐいっと!」

 小白虎とマウラは秋のアカマツタケ焼きと焼き魚を楽しみながら、酒盛りを始める。

「ドワーフよ、ニャぜいままでこのキノコの存在を隠しておったのニャ」
「隠してなんていませんわ。この季節しか採れないのですじゃ」
「よく人間に乱獲されないニャ」

「このキノコは赤松の木の下に生えるのですが、人間と違って、わしらドワーフは、この赤松の炭で鍛冶仕事をしますでな。まだ、人間はこの美味さに気づいておらんのです」

「よし! このキノコが取れる場所は、ニャレとドワーフ、二人きりの秘密ニャ」

 ◇◆◇

「あ、いたいた。小白虎とマウラさん、どこに行ってたの?」
「ちょ……ちょっと山を散歩していたニャ」
「で、帰ってきてすぐ飲み始めたのか。好きだなぁ」

 小白虎はマタタビ酒を舐めながら、すでに上機嫌だ。
 
「ライカたちは、どうニャ? 人間どもの訓練は」
「うーん。まだまだだね」

 店の奥から、女将さんが料理を持ってくる。

「マウラ様、白虎ちゃん、ほら、さっきのキノコ焼いてきたわよ」
「ウニャ! やっと来たニャ」
「小白虎! なにこれ!すごくいい匂い」

 今までに嗅いだことのない、なんとも言えないいい香りがする。
 
「ニャハハ。ニャレとドワーフで採ってきたアカマツタケってやつニャ!食ってみるかニャ?」
「美味いっ!美味すぎる! これどこに生えてるの?」
「それは内緒ニャ! この地を守護する四聖獣として、人間風情に横取りされるわけにはいかんニャ」

「アカマツタケの守護をしてるだけじゃないか……」
「ニャンだとぉぉぉ!」
「お! いい匂いがするな」

 僕らの飲んでいた場所に、魔法剣士部隊の剣士が現れる。

「あ、教官! それに魔獣先輩!」
「え? 魔獣先輩?」
「あ、すみません。魔獣みたいに強いから、俺たち陰でニャーメイドさんのことを、魔獣先輩と呼んでいたので……つい」

「ナンででしょうカ、とても嫌な響きデス」
「マウラ様と白虎ちゃんも一緒に飲んでたんですかい!」

「おう。小僧も一緒に飲もうじゃないか」

「マウラさん、剣士の人たちと顔見知りだったんだね」
「飲み仲間のトマスじゃ」
「しかも白虎ちゃんって」

「この喋る猫、自分のことを四聖獣の白虎だと言い張ってる、おもしろ猫で、街で大人気なんですよ」

 ニャーメイドさんから、殺気が溢れ出すのがビシビシと伝わってくる……。

「貴様ラ……人間風情が白虎様に不敬な。明日の訓練で命を落とすかもしれないデスね」

「ヒエッ! 勘弁してくだせぇ、魔獣先輩!」
「魔獣先輩と呼ぶナーー」

 ニャーメイドさんの咆哮は街中に響き渡った
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