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ライカと白虎編

閑話 ホワイトス家の苦悩

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 ◇◆◇

「もう勘弁なりませんぞ! ホワイトス公爵!」

 この月、三度目の貴族会議が行われている、ホワイトス公爵家。
 ロイド・ホワイトス対貴族たちの対立は激化している。
 
「度重なる、魔獣の襲来で、オーレス子爵の治める街が壊滅の危機なのですぞ」
「物資は送っておるではないか」
「必要なのは物資ではなく、兵力なのです。何度も援軍を要請しているらしいではないですか」

 公爵相手でも、この非常事態では、口を慎むことをしない貴族たち。
 苛ついた表情で、大声を上げるロイド。
 
「こちらにも都合というものがあるのだ。全てには応じられぬ」
「ホワイトス公爵、貴方の役割は、我ら貴族を束ねることです。それなのに、貴方は自分の領地のことばかり」

 歯ぎしりの音が聞こえるほどの怒りが、湧き上がっているのであろう。
 
「このまま対応しないのならば、国王に上奏じょうそうをしますぞ」
「貴様、それは私に対する脅迫か?」

 数時間にわたり続いたこの応酬おうしゅうは、ここで終了する。
 ロイド・ホワイトス公爵と貴族たちの押し問答はここで終わった。
 貴族たちはホワイトス家を後にすると、フィンがロイドに提案する。
 
「父上、僕が精鋭たちを連れて、オーレス子爵領に行ってまいりましょうか」
「いや、我が領地を手薄にするわけには行かないのだ……」
「しかし、このままだと、父上の立場が……」

 無言の時間がこの部屋に流れる。
 しばし、考え、苦渋の選択をする。
 
「……仕方ない、フィンよ、行ってくれるか」
「はい。お任せください。すぐに魔獣を討伐して戻ってまいります」
「ああ、必要な兵力、必要な資金はいくらでも持って行くが良い」
「四つ星のレアスキル持ちの僕なら、最悪一人でも大丈夫ですよ」

 自信満々の笑みを浮かべながら、フィンは部屋を出ていくのであった。

 
 ◇◆◇

 魔獣の討伐に必要な準備には大した時間がかからなかった。
 数日分の食料と、武器を馬車の荷台に運び込ませると、豪華な装飾の馬車に乗り込む。
 
「フィン様、さっさと片付けて帰りましょう」
「ああ、僕とお前たち四人がいれば楽勝さ」

 フィンたち一行は、二頭の馬が引く馬車に揺られ、オーレス子爵領へ向かって出発する。
 道中、一行は談笑をしている。
 
「フィン様、四つ星のレアスキル持ちって、どういう気分なのですか?」
「ああ、自分の相手になる者がいないという、強者ならではの孤独さ」

 得意げに、自慢げに話をするが、部下たちはそれを羨ましそうに感嘆の声を出す。
 
「さすがフィン様。格好いいです」
「あれだけ大きな存在に見えた父上ですら、小さな存在に思えるよ。あはは」
「私達は一生、フィン様について行きます」
「ああ、しっかりと僕のために尽くしてくれよ」

 ガタン!
 急に馬車が停まる衝撃で、機嫌を悪くするフィンが大声を出す。

「おい、御者。なんで停まるんだよ!」
「申し訳ございません。馬車の前に、人が……」

 御者台から身を乗り出し、フィンが覗く。

「ふん、難民か。しかも家族連……ここはホワイトス公爵領?」
「いえ、既にオーレス子爵領に入って御座います」
「そうか、もうそんなに来たのか。じゃ、無視して進んで」

 ため息をつきながら、フィンは御者に命令をする。
 
「フィン様、お助けにならないのですか? 随分困っているようですが」
「他の貴族が治める領地の民なんて、どうでもいいよ。面倒くさい」

 部下の一人が馬車を降りる。

「貴様ら、我らの行く道を塞ぐなら、たたっ斬るぞ! どけ!」

 慌てて逃げるように、道の端に避ける難民の足元に唾を吐くと、馬車へと戻っていく。

「あはは。ゴミ掃除、ご苦労さま」

 フィンの笑い声を残し、馬車はオーレス子爵領の街を目指して進み始めた。

 ◇◆◇

「なぜ、この西の地ばかり魔獣が多いのだ……」

 ロイド・ホワイトスは頭を抱えている。

「ロイド様、北の地の偵察から戻った者からの報告があがってきております。」
「読み上げろ」
「はい。現在、北の地を束ねるタートリア公爵家と、その周りの貴族領は、以前と比較し、魔獣が増えているものの、魔法剣士部隊が抑え込んでいる模様です」

 タートリア公爵家が配給している、『奇跡の秘薬』なるもので、負傷兵は瞬く間に回復し、戦線へと復帰しているらしい。

 そのため、一つ星、二つ星といった、魔法剣士部隊も、戦果を挙げているのだ。

「五つ星のあの娘のスキルか……」

 ライカの神託の際にいた、タートリア公爵令嬢ルシアを思い出す。
 五つ星のレアスキル『癒やし』の神託を授かった娘の存在は、北の地の情勢を変えるほどの影響力を持っているのだろう。
 
「その『奇跡の秘薬』なるものを、手に入れて参れ!」
「はい。承知いたしました」

 ◇◆◇

 オーレス子爵領の街では、魔獣が跋扈ばっこする。

 精肉店に集まる魔獣は店中の肉を喰らい、牧場になだれ込む魔獣は、羊の臓物まで喰らう。

 街にある、食べ物という食べ物を食い尽くすまで蹂躙じゅうりんの限りを繰り返す。
 その数は、数百匹を越える、魔獣のスタンピードであった。

 この街に巣食う魔獣たちと、対峙することになるフィンは、果たして討伐できるのであろうか。
 

★☆★☆★☆★☆★☆
【小白虎の部屋】
 トゥルルトゥルル トゥルルトゥルル トゥルールールー ルールー

「今回もフィンはムカついたニャ」
「アイツはいつか細切れにしてやるニャ」

「ここで問題ニャ! 『ダウジング』とは、何を見つけるために用いられたかわかるかニャ」

 1.マタタビ石
 2.水脈
 3.お財布
 4.突然連絡が取れなくなった恋人の行方

 わかるかニャ(ΦωΦ)?
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