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第二話 スキルのお披露目会

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 神託をの儀で六つ星のユニークスキルを得た僕は、神殿に集まった人々に囲まれ、なかなか外に出ることができなかった。なんとか開放され、逃げるように馬車に乗り込む。

「ライカ! お前には本当に驚かされてばかりだ! 史上初の六つ星、しかもユニークスキルとはな」
「はい。自分でもいまだに信じられません」
「我がホワイトス家は安泰だな! はっはっは」

 父上はいつになく上機嫌だ。父上が喜んでくれるは嬉しい。昔から、剣の修練の努力をしてきてよかったと、つくづく思う。

「ルシアといったか、タートリア家の令嬢。あの娘が五つ星のレアスキルを授かったときには、驚いたぞ。しかし、流石我が息子だ。それを上回る神託を授けおった」
「自分でも、驚いています。」
「これから、国中の貴族たちが、お前のもとに訪れるぞ。近くスキルのお披露目会をしなくてはな」

 ◇◇◇
 
 ――『ダウジング』ってなんなんだろう。

 屋敷の書庫を片っ端から調べたが、ダウジングに関する内容は見つからない。父上曰く、剣に魔力を込めると、神託を受けた属性の魔法剣が発動できるらしいのだが。

「剣に魔力を……んぐぐぐぐぐ」

 確かに、魔力が流れるのは感じるし、剣も強く光りだす。だが、何かが発動している感じがしない。

 こればっかりは、誰かに教われるものではなく、一人で修練するしかないらしい。

「何も効果が現れないのに……疲れるなぁ、魔法剣って。今日はここまでにするか」

 夜、いつものように、僕の楽しみにしている食事の時間がやってくる。

「ライカ。どうだ魔法剣の方は」
「ダウジングが何なのかがわからなくて……いまだ、これと言った手応えを感じません」
「まぁ、気にするな。お披露目会までは時間がある。天才のお前ならできるさ」

 それからも、魔法剣の修練に励む日々が続いた。最初の頃に比べて、魔力を通した剣の光は、格段に強くなっていた。

 この調子で続ければ、いつかは出来る。僕はそう思っていた。

「兄上、調子はどう?」
「ああ、フィン。まだ、うまくいかないんだ。でも、努力は必ず実るものさ」
「うん。僕も兄上を見習って頑張るよ。父上は、僕のことなんて興味ないみたいだけどね」

 父上は、僕を贔屓ひいきしているのは事実だ。剣技は大人顔負け、その上、史上初の六つ星のユニークスキル持ちだ。社交界でも、随分鼻高々だとおっしゃっていた。

「大丈夫さ! お前も来年、良い神託を授かるはずだよ。僕の自慢の弟なんだから」
「うん! 頑張るよ。そうだ、兄上、久しぶりに剣の修練の相手をしてよ」
「お。いいぞ! やろうか」

 フィンの剣筋は悪くない。着実に剣技は上達している。
 この日、僕たちは日が暮れるまで、修練を続けるのだった。

 ◇◇◇

 二ヶ月後、遂に、僕の授かった六つ星ユニークスキルのお披露目会が行われた。
 領地の貴族たちや豪商たちがホワイトス家の屋敷に招かれ、パーティが始まる。

 料理長自慢の料理が並び、皆、舌鼓を打つ。

「皆様、今夜は我が息子、ライカ・ホワイトスのお披露目会に足を運んでくれて感謝する。」

 来賓たちが、一斉に父上、ロイド・ホワイトス公爵に注目する。

「この度は、この国始まって以来、初の六つ星。さらに建国した大王以来のユニークスキルを皆様にお披露目する」
「おおお! まさか大王様以来の魔法剣を、生きているうちに見れるとは」
「六つ星だぞ! いったいどんなに素晴らしいものなのだろう」

 父上は、横にいる僕の肩に手を乗せ、優しく微笑む。
 
「さあ、ライカ! 準備はよいか? 皆様、修練場へご移動願おう」

 ◇◇◇

 修練場の中央に、双剣を携え立つ僕を、固唾を飲んで見つめる貴族や権力者は、初めて見る六つ星のユニークスキルに期待し胸を膨らましている。
 
 正直、自信はない。神託を授かってから三ヶ月、今まで一度も成功したことがないのだ。なにか、掴めそうな感じはするんだけど。
 
 父上や、母上、フィンも僕に注目している。目を輝かせて、僕を見つめるフィンと目があった。
 
 ――大丈夫。かっこいい兄の姿を見せてあげるさ。

 フィンにウィンクをして見せる。

「キィィィィィィン」

 意識を集中すると、両の手に構えた剣が光り出す。
 その光は、注ぐ魔力と比例して、輝きを増す。

 ――まだ、一度も成功していないけど大丈夫。僕はいつも本番に強い。

 光は、剣に収束していき、刀身そのものが七色に輝き出す。

「おお! なんと神々しい」
「こんなに美しい魔法剣の光は見たことがないぞ」

 群衆が感動しているのが、僕にも伝わってくる。

 ――発動!

 そう、心の中で叫ぶと、二本の剣が宙に浮く。

「おお! 剣が浮いている! なにが起こるんだ」

 浮いた、剣は空中で震え始め、地面に落下した。剣は、まるで転んだ子供が立ち上がるように、起き上がり、まるでヨチヨチ歩きをする赤子のように歩き出す。

「へ?」
「は?」

 唖然とする群衆は、暫くの沈黙しながら、歩き出す二本の剣が歩く姿を見つめる。

「ぷっ」

 群衆の一人が、笑いを堪えられず、吹き出すと、つられるように皆が笑い出す。

「はっははははは」
「宴会芸じゃないか」
「ダメだ、やめてくれ、腹がよじれる」
「『ユニークスキル』って、『ユニーク過ぎる』の間違いないじゃないか?」
「やめろ、誰が上手いことを言えと。あっはっは」
 
 修練場は、大爆笑の渦が巻き起こる。

 その様子を見ていた、父上が顔を真っ赤にして、身を震わせながら怒っているのが目に入る。

 僕は、家名に、父上の顔に泥を塗ってしまったのだった。
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