魔王様、勇者を育てる。

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第一章

7.魔王様、名前を付ける。

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ーー場所は変わり、ここは王都の中央広場。


「ご主人様・・・みてくれた?・・・」


シャドー・ウルフの少女が何かを期待するように聞いてくる。


「あぁ、とてもすごかったぞ」


それは勇者をキラー・タイガーから助けたことにある。


キースは少女の見ている映像を共有することで一部始終見ていた。


まさかキラー・タイガーをたった二つの魔法だけで倒すとは思っておらず、素直に言葉で褒める。


「んっ・・・」


だけど、少女にとっては言葉だけでは不満のようで頭を突き出してくる。


「ん?」


キースはその意味がわからず困惑する。


「キース様、頭を撫でてほしいのではないですか?」


すると、ベルが少女のその行動の意味がわかったようで知らせてくれた。


「えへへ・・・」


その答えが合っていたようで、そっと頭を撫でると喜んでいた。


今は獣人化して少女の姿になっているとはいえ、元々は狼。


懐くと触れ合うスキンシップの方が好きなのかもしれないとわかった。


ーー勇者も無事助けられたことで、後は王都に到着するのを待つだけ。


「あ!・・・ご主人様!・・・」


ゆったりと街の風景を眺めていると、何かを思いついたようにシャドー・ウルフの少女が呼ぶ。


「どうした?」


「ご褒美・・・私に名前・・・つけて?・・・」


少女は勇者を助けたご褒美に名前を付けてほしいと言ってきたのだ。


確かに、元々はシャドー・ウルフだったが、今は獣人化して人の姿になっているのだから名前が無いと不便になる。


「そうだな、名前をつけようか」


これから使い魔として一緒に生活していくのなら名前が必要になるだろう。


少女もすごく嬉しそうに、うんうんと頷いていた。


「どういう名前がいいか・・・」


しかし、名前といっても簡単に決まるようなものではない。


「キース様がお決めになった名前なら何だろうと喜ぶと思いますよ。
仮に安直あんちょくな名前だとしても・・・」


キースが悩んでいるとベルがそう言ってアドバイスをくれる。


「安直な名前か・・・
わかりやすく、シャドー・ウルフだからーーシャルとかか・・・」


ただ名称を縮めただけにも思えるが、それなりに良い名前になったのではないだろうか。


「シャル・・・シャル・・・いい!・・・」


少女ことーー【シャル】もその名前を気にいったようだ。


「よかったですね、シャル様」


名前が決まったことで、ベルが敬意を払ってそう呼んだ。


ベルにとって魔王まおう使い魔つかいまというのは魔王同様に敬う存在のようだ。


ーーそんなこんなで時間を過ごしていると、街が急に騒がしくなる。


聞けば、勇者が逃がした馬車が、今王都に着いたようだ。


これまでの出来事が街中の人に知らせられたようで、ざわめきが起こっている。


突然のキラー・タイガーの出現。


囮となった勇者の安否。


どれをとってもこの街の人々に大きな影響を与える出来事だった。


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